「7年の空白」。想像以上に壁は厚かった。


「誰にも迷惑かけていない」
「自分ひとりで頑張っている」

と言った弟の言葉が非常に気に食わなかった。
 
なんで、こんなに捻くれてしまったんだろう・・・
悲しくなった。


弟は知らなかった。

母の愛人と父が殴りあったこと。
母の愛人が亡くなっていること。
父がもう片目しか見えないこと。
母が自己破産したこと。
父がひき逃げ犯で約3日捕まっていたこと。
実家がなくなったこと。
借金がまだ残っていたこと。
母は新しい彼氏を作って同居していること。
・・・・。

 



 互いの7年分を語り合った。

 どんな気持ちだったのか・・・・
 これからどうしたいのか・・・・



「また、みんなで一緒に暮らしたい。
確かにお兄ちゃんは暴力振るうけん嫌いやけど、でも、お父さんとお母さんと・・・みんなと住みたい。
そのために何が必要か考えたら『お金』やったけん、ボクは、この道を選んだと。
お父さんと、お母さんが喧嘩する原因はいつも『お金』やったけん・・・・
けど、もう無理っちゃね。家族が元通りになるの。
・・・・・・知らんかった。

 ボクも考えたよ。
何のために生まれてきたとかいな・・・って。
でもね、そんなこと考えたら虚しくなるだけやん。
そんな淋しいこと考えるんやったら、必要としてもらえるように努力しよった方がいいと思って。
頑張りようつもりっちゃん・・・ボク。
少年支援センター(仮)に居ったとき、自分より苦しい思いしてる子が多くて・・・・
親の暴力とか、性的虐待とか・・・親の顔を知らんで育った子とか・・・・
その中で、自分が必要とされたことが嬉しかったっちゃん。
ボクも人の役に立てるんだ・・・って。」



初めて聞いた。
弟の声を。

もっと早くに語り合うべきだった。
弟は、現状の厳しさを知ってかなりショックを受けていた。


「幸せな家庭を築くこと」

弟も、私も。
この言葉が大きく存在していたのは確かだった。





 「兄弟、助け合おう!」
と、心に決めた。

その日は、お酒を交わした。
小さかった頃の・・・昔話をおかずに。
 途中、父の話になり、思い出した。
父が弟に会いたがっていることを。
その旨を弟に伝えると・・・

「今更もう会いきらん。ボクはお父さんを裏切っとるっちゃけん。実家にも泥棒に行きよったし・・・合わす顔が無い。」

と、拒否した。
淋しかった。

自分で言いたくは無いが・・・
父があとどのくらい元気で居られるのか・・・
父の目が見えているうちに会ってほしのに・・・

弟には届かなかった。

仕方が無いのかもしれない。
父とは9年程会っていないのだから。
弟の中で何かが引っかかるのだろう・・・
「会いたい」という日が来るまで待とう。
そう思った。





 兄弟2人、少しづつ歩み寄れるようになった。


続く。