久しぶりに父の居る家に帰宅した。


「急に帰ってきてから・・・なんか用か?
お前は今まで何しとったとか?
お前が帰ってくるか来んか分からんけん・・・
買ってきた惣菜が冷蔵庫で腐ってしまっとうぞ・・・
そんなんやったら、ご飯買って来んけんな。
もう、帰ってくるな。」





冷蔵庫を開けると「刺身」があった。





 私が一人暮らしをはじめたとき。
実家に帰ると・・・・・
「お前が刺身好きやろうと思って買ってきとるぞ」
と。

そう、父は、必ず2~3種類の刺身を私のために用意してくれていた。





・・・・思い出した。
 不器用な父の最大の愛情表現。

「ご飯炊いとうけん食べれ」
奥の部屋で父はそう言った。
 刺身とご飯・・・
涙で味がしない。

ごめんなさい、お父さん。おいしいよ・・・・
そう思いながら、一生懸命食べた。



 次の日、父に全てを話した。

夜間学校と偽って夜働いていること。
借金が残っていたこと。
弟に再会したこと。
弟と暮らすこと。
そして、栄養士の仕事を辞めたこと。


 父は、静かだった。

「そうか・・・・。
ごめんな。おとうさん何もできんで。
・・・ごめん。
まさくんは元気とかな?
もう、まさくんとは10年くらい会ってないけんなぁ・・・
あの女のとこに行ってから心配でたまらんかったっちゃん。
死ぬ前に1回でいいけんまさ君と兄ちゃんに会いたいっちゃん・・・」


・・・・父は物静かに過去を振り返っているようだった。

「・・・・そういう事情やけん、うち福岡に戻るよ。
お父さんも一緒に福岡帰ろう。」

「俺はいい。もう疲れた。
それに、福岡は嫌なこと思い出すけんここでいい・・・」


それ以上、話すことは無かった。

 こうして、また父と私は別々になった。
しかし、今回は何か違う。
今まで無かった父への感情が生まれた。

福岡と北九州、少し距離はあるが・・・
お互いを気持ちよく思いやれる距離になった。




続く。