父と私の間に亀裂が走る。
ぴりぴりと大地が干上がってゆくように。
じわじわと・・・それは拡がっていった。
やっと親子らしい2人になれたと思っていた。
何もかもを失った途端、心まで失ってしまった2人。
どうしようもない。
来る日も来る日も、互いの傷を抉っては・・・・
傷つき、憎悪だけが増してゆく。
本当は望んでいない感情。
分かっている。
しかし、乏しさが心までも乏しくさせた。
ある日、「重要」と書いてある分厚い茶封筒が郵便受けに。
それは、速達で送られていた。
宛名は
「憲輔」
・・・父宛である。
虫が騒いだ。
身体中の何かが
「父に見せてはいけない」
と叫んだ。
それらのモノ達を抑えつつ・・・・
恐る恐る開封した。
何処から探し当てたのだろう・・・・・
黒い影に背中が凍った。
母が隠していた借金。
大阪から・・・・刺客のようにさえ感じた。
遅延利息込み600万全額返済しろとの請求書だった。
当てはない。
父には・・・・
もう言えない。
全てを失った父に、これ以上「何」を出せと。
これを明かせば父は、狂人と化すだろう。
返済できるかはさて置き、状況を確認するため、送り主へ問い合わせた。
なんとも口の悪い対応だろう・・・
脅しに近い。怪しい口調、胡散臭い。
自分が連絡した経過を説明し、父には返済する能力が無いことを伝えると
「じゃぁ、お嬢さんが払ってくださいよ」
と。
その男は、かなり強引に返済を求めてきた。
「自分では分かり兼ねますので、一旦考えさせてください」
と残し、電話を切った。
翌日から、その電話は何度も何度も・・・
履歴を残すようになった。
一人の人物がふと、頭を過ぎった。
親が離婚してから兄、弟は母元へ。
それから、兄弟として会うことはなくなっていたが、
実家へ泥棒しに来るようになっていた弟。
たまたま遭遇し、説教をしてから約5年。
・・・・音信不通になっていた弟。
1年前、交通事故に遭い、生死を彷徨っているところへ見舞いに足を運んだが、それ以来、会っていなかった。
その弟が中州でBOYをしていることを母から聞いた。
今の自分に頼る統べは、そこにしかなかった。
弟の連絡先を聞き、助けを求めた。
「もしもし?姉ちゃんやけど??まさ?」
私の知っている弟の声とは全くの別人の声がした。
「はい。そうですが。どうかされましたか?」
5年も会っていないと人間こんなにも変わるのだなと驚きを覚えた。以前よりは、マシな人間になっていた。
仕事中だったためか、彼は他人行儀な対応だった。
一部始終を話すと長くなると思い、だいぶを端折ってだが莫大なお金が必要なことを説明した。
すると
「その条件・・・・解決せんでもないよ。
その代わり、ボクもお願いがある」
と。
続く。