職場に着いた。

涙は止まらない。

ドアを開けると、馴染みの顔ぶれ・・・
課長に、先輩方。そして、同級生。
気を許した仲間を目の前にしてたことで、父とのやり取りがフィードバックし、更に感情が溢れ出した。
事情を説明するにも、感情が詰まってうまく話せず。

 普段、強気で悪ふざけをしている私が「泣いている」ことに周りが動揺していて。








やっと、言葉が出た。
一部始終、涙と共に。

「2日」有休を頂きそのままの足で父の居る病院へ。



高速バスの中。
「目が見えない世界」が頭の中で膨らんでいく。
見える世界から、見えない世界・・・不安と恐怖が入り混じる。
これを体感している父を思うと、更に苦しくなった。





父の病室。
ひとつの病室に6床あり、6床とも糖尿病疾患患者。

「おとうさん」
声をかけると、こちらを探しながら。
私が見えているのか分からないが、父は照れているようだった。
「こんくらいで来んでもよかったい」
「自分で入院の準備して来とるけん。着替えやら下着やら。
やけん心配すんな。」
と言いながら、バックから着替えや下着を取り出した。

ヨレヨレになっているものや、少し薄汚れているもの・・・
父には見えないのだ。
そのきれいとは言えない着替えを、棚にしまっていく。

「お父さん・・・着替え足らんやろうけん、明日、買ってきちゃるけん」
と。「それ、汚れとるよ」と言えなかった。

ベットの脇。
海外短期留学、行かせてくれたとき。
父にお土産であげた「ミッキーマウス」が座っていた。
 嬉しかった。





次の日。

3時間。


寝台に乗って、出てきた。両目に眼帯をして。

朝食抜きで手術に臨み、昼食時を過ぎていたこともあり、父の空腹はそうとうのものだっただろう。
遅食のおにぎりを鷲掴みして食べている姿。
心が痛かった。

尿意をもよおし、看護婦に手を引かれトイレへ。途中、障害物に足を取られ、見えないことに、手を引かれていることに苛立ちをあらわにする父。


見えない世界の不安・・・・

父の背中が小さく見えた。