うちの父。


はい。

昭和32年3月8日生まれ。
典型的B型の根っからの九州人。

名前は、憲輔。
はい。私のお父上でございます(笑)。

ここまで引っ張ってすんません。
この間は、母のことを書いたので。


 現在は、八幡(北九州)の山の上にある市営住宅に一人住まい。仕事は、していない。

・・・・豪華ではないが、障害者保険でのほほんとした日々を送っている。
たまに電話すると、

「どうしたとか?生活できとるか?仕送りせんでいいか?」

と第一声は始まり、

「昨日、お父さんリュックからって街まで下って買い物行ったらくさ、5kgの米、2990円が2490円の500円引きになっとたけん、米は足りとるばってん、買うてしまったったい。
そしたらなんの、帰りがけキチぃ、キチぃ。往生したばい・・・・」と・・・・
日頃、人と話す機会がないため、次から次に身の回りのことを話し出す。


 こんな仲良しになったのも極最近。
父の頑固が砕けたのと、私も少し大人になったからだろう。





 しかし、小さいときは、嫌いだったなぁ。






父は昔、かなりの巨人ファン。
・・・・御飯のとき、座る場所が決まっており、父はTVが良く見える場所に。私と弟はTVを背中に食卓を囲む。
 夜は、必ず野球観戦しながら晩酌する父は、熱くなり観戦しているので、ご飯を食べている私と弟は、その場がとても楽しくなく、空気の重い食卓だった記憶がある。
・・・兄は父と仲が悪く、自分の部屋で毎回、食事をしていた。

 私が小学3年くらいから母は、家で寝なくなった。
家に居るのは、父、兄、私、弟の4人。父が居ないとき、兄は私と弟に暴力を振るう2重人格だった。

 父が朝、仕事に行ってから帰ってきて、私たちに朝ごはんを作りどこかへ・・・・父が帰ってくる前に母は帰ってきて、ご飯を作って、どこかへ・・・
 父の給料(預金通帳・カード)は母が握っていたので、父はたまに仕事をズル休みせざるを得ないときがあった
・・・・・ガソリン代。
それさえなかった。

 両親が、本格的に離婚しそうな雰囲気になったのが小6の頃から。
母から「お母さんと、ちび(13コ下の父親違いの弟)と、正(2コ下の弟)と、おいちゃん(ちびの父で、愛人)と一緒に住まんね?」
と言われたとき。

 違和感があった。父が一人になるのはかわいそうだと思った。兄と弟は、母方へ。私は、父方へ。

 父が、何かの書類申請のため、住民票を取ってきたとき・・・
事件は起こった。


 載ってはいけない「ちび」が・・・・・・
父の扶養に入っていた。

 夕方。
 父は、家に帰ってくるなり

「お前はこのこと知っとるとかっ!
何かおかしいとは思っとったけど、何や!!これはぁ!!!
俺の子どもじゃないやつが、俺の扶養に入っとるやないかぁ」

と、怒鳴りだした。

何て言っていいか分からず・・・「知らん」とだけ答えた。


数日後、母から電話が。
「あんた、お父さんにマンションの場所教えたやろ。
おいちゃんと、お母さんが住んどるとこ。
今日、正が留守番しとるとこにお父さんが無理やり入ってきて、家財道具全部壊したとよ。
もう、おいちゃんがカンカンになっとるったい。」

・・・・・言葉が出ず。
父は、普段と変わらない様子だった。

 実は、2重人格兄に弟と私は都合のいい憂さ晴らしの人形のように扱われ、それに耐えれなくなったときに一時期、おいちゃんのマンション(松島)逃げて、そこから中学校まで歩いて通っていたことがある。
 学校からの帰り、父がそのマンションまで送ってくれたことがある。もちろん、愛人が居ることは言ってないが、それで母の居場所は見当が付いていた。

 
 何か、また大きな事件が起こりそうな予感がした。

母から電話があった夜。
私は、自分の部屋で、音楽を聴いていた。
・・・・・父が何やらいろんなところに電話をしていた。
しかし、父が電話をする先は決まっている。
 ・行きつけのスナックに行くときにママに連絡の電話。
 ・スナックに行くためにタクシーを呼ぶ電話・・・・
この2つくらい。

が、この日は何かが違った。

「このあばずれが!この・・・首を洗って待っとけよきさま!!お前がどんだけ俺の金を巻上げとうかわかっとるとや!!
他の男のこどもまで俺の金で育てやがって・・・貴様出て来い!!!殺しに行くけんな!!男と一緒に待っとけよ!!覚悟しとけっ!」


・・・・・



確か、こんな感じのことを電話に怒鳴っていた。






・・・・父を家から出したら、大変なことになる。
そう思った。




急に静まり返った家と父が、嵐の前触れを予感しているようだった。

父が玄関で、靴を履いている。

「どこに行くと?もう22時過ぎとるけん外行かんどきい。」

と、子どもながらに精一杯の勇気を出して父を止めようとした。

「・・・俺を信用しろ。お前にはお父さんしか居らんちゃけん。お父さんも同じたい。心配するな。すぐ帰ってくるけん。」

そう言って、父は静かに家を出た。


 しかし、手に汗が。
血が冷たくなっていく。父の帰りを待っている間、自分が自分でないくらい不安に襲われた。


どのくらい経ったのか・・・・


1本の電話が。

 なんとなく誰か・・・・・予想できた。




「・・・・お母さんたい。
あんた、無事ね?
お父さんが店に来て、暴れたとよ。
 お父さんが店に来る前、電話してきたとよ。おいちゃんが危ないと思って、店に避難させとったら、おいちゃんと殴り合いになってから・・・警察ば呼んで、やっと納まったけど、お父さん酷いことになっとるけん、あんた看てやって。
この間、マンションの家財道具壊されておいちゃん怒っとって、その仕返しにお父さんやられとうけん・・・・
警察が、お父さん送っていくって。」


母は淡々と話した。


父に裏切られた悲しみと、怒りと・・・・・・・
いろんな感情が入り混じって体中が振るえ、冷たくなった。

感覚がなくなるくらい拳を握り締めていた・・・・
何のための涙か分からない涙が溢れてきた。
 私は家中の鍵という鍵を閉めて、電気をけしていた。







 ・・・・・・・・バタン。 


車のドアが開閉する音が聞こえた。






「・・・・ごめんな・・・・・開けてくれ・・・・」

父の痛々しい声が聞こえた。

更に、涙が溢れた。
でも、許せなかった。

「ごめん。もうお前を泣かすようなことはせんけん・・・開けてくれ。」



何度も何度も・・・・・・

呪文のように聞こえた。

痛々しすぎて、聞きたくなくなった。


玄関の覗き穴から父を・・・・・


 見なければよかった。
頑固で、大きな存在の父の姿がなかった。

見れなかった。・・・・苦しかった。

実の父が、母の愛人にボロボロにされ、原形のない膨れ上がった顔面。

そして、私に泣きつく姿。



 玄関の鍵をそっと開けたが、私は自分の部屋に閉じこもった。




「ごめん。お父さんが間違っとった。今までのことはもう忘れる。本当にごめん。もう、何も無くなった。また、0から始めよう。お父さんとお前とで。
お父さんは、お前が、幸せに育ってくれればいいけん。お前を悲しませることはもうせんけん許してくれ」

と、何度も、私の部屋の前で泣きながら謝っていた。


続く。