放心状態の咲耶と挨拶に来てくれた兄妹がグレンマと玄関で話している間、私はリビングで荷物をまとめます。
車のジュニアシートや着替えなど置いていっても差し支えないものを一所にまとめ、持ち帰らなくてはならないものを持てる範囲で詰めていると、腕をツンツンと刺激されました。
振り返るとビッキーが小さな声で「ニャ…」と鳴いて、困り顔で何度もツンツンしてきました。
ビッキーと咲耶は仲良しです。
猫にだって分かる、ただならぬ何か。
ビッキーは「さっちゃんどうしたの?ビキニと遊ばないの?もう帰っちゃうの?さっちゃんどこ行っちゃったの?」と一生懸命聞いていたのでしょう…
悲しい顔のビッキーを抱きしめ撫でながら謝ります。
そして立ち上がり…廊下に出て自分の洋服をよく払い、洗面所で手洗いをします。
そんな私を洗濯機の上からにぃちゃんが見ています。
「にぃちゃんゴメンね、さっちゃんアレルギーかもしれないから今はもう撫でられないや…今日は帰らなくちゃいけないんだ…
私は…次いつ来られるだろうね…?」
帰り支度を整えて玄関まで行くと、放心状態の咲耶の足に蚊が群がっていました。
蚊に刺されやすい体質なのでしっかり虫除けスプレーしてきたのに![]()
とにかく実家敷地内にいると咲耶の未練が湧くので移動させたい。
なので途中の道にある徒歩5分の公園までみんなで歩いてバイバイする事に。
兄妹のママは私が雨の中、歩いて駅まで行こうとしている事にビックリして車で駅まで送ってくれると有り難いお申し出を下さいました。
それに甘え車を待っている間、咲耶と兄妹の虫刺されにベビームヒを塗って…
車を待っている間も、駅までの車中でも兄妹は放心状態の咲耶に気を遣って色んな話をしてくれます。
が、咲耶は心が遠くに行ったまままだ帰ってきてないので返事すら出来ていない状態。
駅まで送ってもらい、別れを惜しみ再会を約束しながら再び咲耶と2人きりになりました。
咲耶、さっきまで涙も枯れ呆然としていたのに急にスイッチが入り駅ビルの中で
「うっうっうっ、、グレンマん家で夜は、桃とチーズのなんか食べるだったのにーあとおにぎりするんだったのにぃーんわぁーーーー」
と、絶望第二波がやって来ました…
そうだよね…もう17時だもん。
いつもならお風呂準備して18時には晩ご飯だから、時間も作る気力もないし何か買って帰らなきゃ。
てか泣きやませなきゃ私が泣くわ![]()
と、思い出した!
このビル、台湾スイーツショップあったはず!
「さっちゃん、桃とチーズのなんかはそのうち作れるかな?ってお母さん考えるから
今日は特別に晩ご飯、黒糖タピオカクリームミルクにしない?!」
↑
今考えてみたら両方、晩ご飯とは言えない…
「
?!」
タピオカ関係は台湾価格の倍なのでつい財布の紐が固くなるのですが買いましたよ。
(大きいサイズ一杯で近所のスーパーで激安のり弁3つ買ってお釣りが来る価格設定って…)
あと台湾カステラも。
それに家にあるキュウリとかプチトマトとか焼きおにぎりとか出せばいいや。
「さっちゃん、今日は予定が変わっちゃってゴメンナサイだし、本当に我慢して偉かったからパパには内緒の晩ご飯だからね」
「うん、分かった!
台湾いいねー!
タピオカだーいすき♡
あ、あとカツサンドも食べる…
」
↑
目線の先がカツサンドの美味しいお店へ。
咲耶が喋ったー!
泣くでも絶望でもないこと喋ったぁー!!
黒糖タピオカクリームミルクと台湾カステラとカツサンドを手に入れた咲耶は帰りの電車に乗る頃にはやっと笑ってくれました。
喋ってくれました。
実家を出て1時間弱くらい?
哀しいかな…鼻水とくしゃみが治まり始め、まぶたの腫れも少し引いてきました。
あぁアレルギー![]()
