兆し​


雪茜の山は

朧の術によって再生し

驟雨という脅威も去った


「朧さま、いろはの所に私達が行くまでは

あちらに鳳凰といたのだけど…」


「…いたってことは、生きてるのね!」


よかった…

生きていたのなら…


でも、どこに行ったのかしら?


朧は不思議な人間で

先を見通す力があった


神隠しの森に夕凪がいるってことも

何が起こるかもわかっているのかも


あいつのことだから

雪茜の山みたいに

森を…


…人間は脆いから…

次はないかもしれない


遠くで何かが割れる音がする 


もしかして

宝玉が割れてしまったのかな


「いろは、朧さまのこと気になってるよね」


「え?!うん、気になってる

何だろう…

私は、妖だし…

人間とは分かり合えないよ

住む世界が違うから…」


「そうなの?

本当に分かり合えないのかな?

妖同士であっても

住む世界が違う奴らたくさんいるよ…」


「私は、夕凪と婚約してる身だから…

他の誰かをとか想っては駄目なの」


「夕凪のこと好きなの?」


「苦手…」


俯くいろは


「いろは、貴方、真面目ね

勝手に決められたことなのに

貴方が嫌だと思うことに

無理に従わなくてもいいわ」


いろはの頬に触れる風花


「好きなら、堂々とすればいいのよ」


「で…でも…」


「いろは、このまま朧さまと

お別れになったら

諦められるの?」


「お別れなんて…やだ」


お別れなんて考えたら

胸が締め付けられるように苦しい

どうしたんだろ…私


「泣かないの

ほら

お迎え来たわよ」


空を指差す風花


「…お迎え?」


光と共に2人の前に人影が現れる


「鬼の娘、雪の娘、大事ないか?」


黒髪の青年が話しかけてくる


「うん、大丈夫。

どこ行ってたの?」


「わ…いろは、宵闇の宝玉の主さま」


「心配をかけてすまなかった

空より視察をしていた」


「何か見えた?」


「神隠しの森あたりで

巨大な入道と闘う者がいた」


「あ、げんちゃん!大丈夫だったんだ」


「雪茜の衆もう到着したのね」


「…」


少し目を閉じて

考える朧


「鬼の娘、雪の娘

我は、争いを終わらせなければならない

我と共に来るか、ここに留まるか

決めると良い」


「私は、一緒に行く」


いろはが朧にうなづく


「…雪茜の妖衆として

私も加勢するわ」


風花がうなづく


「わかった。

雪茜の山は、悪しき者が来ないよう

結界をはっておく。

2人とも鳳凰の背へ…」


鳳凰の背へ促す朧


「わぁ、もふもふね〜」


「鳳凰、ありがとう」


雪茜の山に結界を張り朧が

鳳凰の背に乗る


「鳳凰…よろしく頼む」


鳳凰の背に優しく触れる朧

同時に空高く飛ぶ鳳凰