リボンを口にくわえようとしたところを狙われ

あずきちゃん目がけて大きな薙刀が振り下ろされる


宝玉にヒビが入る


ぁ…間に合わなかったのにゃ

朧の大切な宝玉を

傷つけてしまったのにゃ

ごめんなさい


もう…お喋りもできない

ただの猫になってしまったのにゃ…


宝玉から煙のようなものが揺らめいて現れる


「なんだ?!お前?!」

「着物とかいつの時代だよ」

「コスプレ??」

「不審者がいまーす」

「ムカつくから、お前から痛ぶることにする」


大きな薙刀をもったおぞましい鬼が

現れた煙に向かって攻撃をする


触れる前に薙刀と鬼が燃える

「うわぁぁっあっー」

「…なに?!このおっさん警察呼ぼうよ」

「やべぇやつだって…」


不良たちが力無く

その場に崩れ落ちるように倒れる


あずきちゃんが目を開けてみると…

そこには、蒼黒い炎を纏った朧が立っている


「…痛くないのにゃ?あ…貴方は…」

顔を上げると朧がどこからともなく現れ立っていた


「鬼はあるべき世に返した」


朝陽君の背中の傷に触れる朧


「あずきちゃん、この人間を救いたいかい?」


「もちろんにゃ…

朝陽くんは私を助けてくれたのにゃ

痛いことは嫌だけど…頑張るにゃ」


「痛いことはしない。

ただ、この人間の魂をここにとどめるため、

君に渡した宝玉の力を使う必要がある。」


「ぁ…朧、ごめんなさい。

大切な宝玉を壊してしまったのにゃ」


「大事ない。わざとではないこともわかっている

宝玉は時間がかかるが直すことができる

しかし、いまの宝玉は不完全だ

この世にこの人間の魂を

繋ぎ止めるために使う場合

あずきちゃんには、彼の記憶を

この人間には、あずきちゃんとの記憶を

もらうことになる。」


「朝陽くんを忘れちゃうのにゃ??」


「この勾玉は、宝玉、現世帰りの勾玉、

あの世とこの世を行き来するための

通行証のようなもの。

本来なら、運命を変えるようなことをしてはならない。

禁術ゆえに対価が必要となる。」


「禁術…危ないのにゃ!

朧は、朧はどうなっちゃうのにゃ?!」


微笑み優しくあずきちゃんの頭を撫でる朧


「だめなのにゃ」


「残念ながら、迷う暇はないみたいだ。

このまま彼が絶え、我らと来るか、

彼はこの世で人間として過ごすか」


「朝陽くんと一緒にいたいけど、

絶えるのは嫌にゃ!」


「さよなら…大好きにゃ!朝陽くん

朝陽くんは一人ぼっちではないのにゃ…

私や他の猫も動物だけど、貴方の味方なのにゃ。

またね」


ポロポロと涙がとめどなく流れ落ちる

うなづくあずきちゃん


「では…」


宝玉を背中の傷に置き、朧が呪文を唱えると
朝陽くんの背中の傷が花びらとなり消える