波打ち際のHERO


初めてみる海

波が怖くて

身体が動かないあずきちゃん


「おい、あれ見ろよ」

「わぁ、黒猫だ…不吉…」

「動けないみたいだぜ?」


数人の少年少女が

あずきちゃんに近づいてくる


「前の猫みたいに

祟るといけないから

海に浄化してもらおうぜ」


「あれ?リボンしてる

なーんだ、飼い猫??」


「飼い猫?飼い主の知らない所で

いなくなる猫の話聞いたことあんだろ??」


「落としちゃおうよ」


せーのっ!!


掛け声と一緒に

青年の1人が私を

海へと放り投げた


波しぶきと共に

私は海の水に包まれた


あ…息ができないのにゃ…

う…苦しいにゃ…

怖いのにゃー!!


必死に水の中でもがく


外では笑い声がする


どうして笑ってるのにゃ?

苦しむ姿を見るのが…


ばしゃーん


大きな波しぶきがおこり

私の身体は船着き場に優しく置かれた


…けほ、けほ…あれ?少し息ができるのにゃ


「怖かったね…

もう大丈夫

怖いものはお兄さんが

追い払ったからね」


びしょびしょに濡れた緑の髪の青年が

船着き場にあがると

優しくあずきちゃんを抱きしめてくれた


「寒かったろ?一緒においで」


…聞き覚えのある声…

温かい手に涙が

自然と溢れた