黒猫あずきちゃん編



 今宵のお話は 怪しげな黒猫について

  少しだけ妖どもの世界を 垣間見るのも
 一興でございましょう…




​ 身体が丈夫でないこと

  他の猫よりもお金がかかること 

  飼い主は、私を置いて行ってしまった 



 

 時期は、粉雪舞う12月のことでありました 


身体の弱い仔猫は、凍えるような寒さの中 

ただ、ただ…飼い主さまのお迎えをまっておりました… 

 みぞれ雪に濡れた身体は冷え切って 
体力を奪われた仔猫は、静かに哀しみ瞳を閉じました 


その時、微かにぬくもりを感じたのです 

 「一緒においで、寒かったろ?」 

優しい子供の声がしました

 声の主は、私をダンボールの中から抱き上げ
タオルで濡れた身体を拭き温めてくれたのでした

あたたかい…

 温かい感覚に包まれて、幸せで嬉しくて涙が出てきました

少しの間、子供の温かさに抱かれて
うとうととしていました 


「先生、おはようございます」 

元気の良い子供の声がする

 「おはよう、朝陽!こーら、また傘もささずに風邪ひくぞ」 

 先生が首にかけていたタオルで、
みぞれで濡れた朝陽の髪をわしわしっと拭いてやる 

 「えへへ、僕もにゃんこと一緒だね」

私の背中を優しく撫でる

貴方は、朝陽という少年…

目はまだ開けれそうにない

 「まったく、可哀想にな…
その猫は先生が預かる」 

 朝陽の腕の中にいる黒猫を抱き上げ
拭いてやる先生

う…ちょっと痛いにゃ…

朝陽が背中に背負っているランドセルの中には、白い猫が少し顔を覗かせていました 

「教室入れよ」

「はい」

朝陽少年は教室というところへ行ってしまった