OLD SPICE 「THE MAN YOUR MAN COULD SMELL LIKE」 アメリカ(W+K)

P&Gの「OLD SPICE」という男性用ボディ洗剤がグランプリです。
上半身裸のマッチョな男性(元NBLの俳優Isaiah Mustafa)が女性に
「あなたの旦那は男らしい香りを身につけるべきだ。
あなたと同じのを使っていちゃダメだよ」と口説いています。
「旦那を見てごらん。僕を見てごらん。また旦那を。そしてまた僕を。
でも旦那は僕じゃない。でもこのボディウォッシュを使うと
僕みたいに香りますよ。」とたたみかけるように話しかけています。
英語のテンポも良く、映像も不思議で、ついつい見てしまいます。
スーパーボウルで放送されYouTubeで1100万回以上視聴されました。

「Old Spice | The Man Your Man Could Smell Like」



ちなみにOLD SPICEは、アメリカではスーパーで箱売りされているくらい
メジャーだけど古いデオドラント製品です。
そこに新しい息吹をふかそうと今回のキャンペーンがなされました。

ポジショニングは「男を感じる」ということ。
まさに「もてたい」という下心男のAXEに対抗しています。

「ナイキ」に対して「アディダス」、「プレステ」に対して「Xbox」など、
同じカテゴリーでありながら、ライバルブランドと戦うために
あえて違うポジショニングを植えつける事で成功した事例も多々あります。

ちなみに監督のTom KuntzはAXEの「チョコレート男」の人でもあります(笑)。
とにかく面白いCMを作る天才です。日本で言うと八木監督といった所でしょう。


そしてこちらがメイキング。ただ流すのではなく、コメンテーターが、
「これは本当に一発撮影なのかい?」と言う疑問を持って
W+Kのクリエーターに質問を投げかけるバイラル映像になっています。
この作り方、広げ方がテレビ文法を計算してて、なんとも素晴らしい!
メイキング映像すらエンターテイメント化させる手法。
長いですが、今年のカンヌを語る上では見ておいた方がいい19分です。

「The making of Old Spice's commercial: The Man Your Man Could Smell Like」



そしてこれがつい最近オンエアされた第二段です。
男らしさ、かっこよさシズルのあるものを、ふんだんにエンタメしてます。
要素要素を強引ながらスムースにつなげるところが楽しく、
純粋にTVで流れていたら巻き戻してでも何度も見てしまうかもしれません。

「Old Spice | Questions 」




正直なぜこれがグランプリなのかは良く分かりませんでした。
詳しい解説、カンヌでの評価は実際に行った方の報告を待ちましょう。

しかしここ最近、カンヌのFilmは議論を呼ぶものが多かったです。
それは「今年一番のCMを指す」と言うよりも、
「広告の未来を指し示さねばならない」というカンヌの命題を
フィルムに背負わせていたのが原因ではないかと思います。

チタニウムや他のカテゴリーの進化が激しい中、
フィルムやポスターなどのオールドトラディショナル系が取り残される
現状において、「いやフィルムはこれでいいんだよ。面白くていいじゃん。」と
あえて原点回帰なCMに戻ったのだと解釈しています。
これにより肩の力が抜けて本来の楽しいCMになることを願います。

今まではWEB絶対主義でしたが、それはもはや当たり前となり、
一巡して「なんだかんだCMって楽しいよね」と言える時代が来ると思います。