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「よし、I am 寝るっ!」




ほぼ一番乗り状態の船内。

たった二時間程度の船旅だが、それでも仮眠を取るには最適なひとときがここにはある。

座席エリアには目もくれず雑魚寝スペースへ向かうと、まずやるべきはコンセント付近の縄張り確保だ。



(充電しながら走れへんかったからなぁ……暑さでスマホがダウンするとか初めてやわ)



そう、普段は走りながらチャージしてるので常に100%なのだが、今回は猛烈な陽射しでエラい事になってしまい、スマホのナビさえダウンしてしまうというトラブルが頻繁に発生していたのだ。




(よし、これでOK♪向こうに着くまでは姐やんとも離れて独りの時間をゆっくり………ん?)



いくらバイカーが多かろうと、総客数では大した事無いだろうと思っていた国道九四フェリー。

待合エリアもそんなに混んでなかったし、これはいつも通りのんびり出来ると高を括っていたオレがバカだった。




(あっ、ここ丁度良くない?◯◯ちゃ〜ん!みんな連れてこっち来て〜!)



三組くらいのファミリーグループだろうか?

最初に入って来たママさんの号令により、すっからかんだった雑魚寝スペースは一気に寿司詰め状態になり、オレが満を持して確保した非武装地帯は少しずつだが侵されて行く。

ま、これが健全な盆というものだ。一般的には盆の三日前くらいから連休に入っているのだろう。




(ぬあっ!)



寝ているオレの足に躓いてすっ転ぶ、四歳くらいの幼児達。




「あっ、すみません💦 こらっ、走り回ったらダメ!」



いや全然大丈夫ですと即座に返したし、逆に子供達がはしゃいでいるのを見るだけで癒やされた。

別にオレ専用のコパカパーナクルーザーじゃあるまいし、ここはデッキにでも出てのんびり過ごすか。









デッキに出るとすっかり夕暮れており、さっきの子供達を見た事もあって辛くなる。これはイカン。

何とかアホらしい事で頭を埋め尽くそうと、辺りを見回して獲物を探す。




(ん?…ぷぷぷっ……



沖を見ながら黄昏れているオッサンのバーコードヘアが、強い潮風によって切腹前の落武者状態になっている。

オレもそのうちハゲるんだろうが、その時は潔い頭にしたいもんだ。


その反対側に目をやると、今度は彼女の肩を抱きながら夕陽を見ているモヤシ男を発見。

その彼女というのがどう見ても男の体重の倍はあろうかというぽっちゃりさんなのだが、彼氏の身長が約165に対し、彼女の身長は多分オレと同じ173〜174くらいの【THE・かぼちゃワイン】状態になっており、『肩を抱いた』というよりは、片脚を負傷して支えられてる様にしか見えないのだ。


更に彼氏の足元を良く見ると、この季節に何故か踵が4cmくらいはありそうなウエスタンブーツを穿いており、つまり実際の身長は160cmくらいのリアル春助クンという事か。


いやいや、別に他人カップルの組み合わせにイチャモンつけたい訳じゃないし、趣味嗜好や性癖には個人差があって当然だ。


だがな、そのクロコダイルダンディーみたいなウエスタンブーツと、目が痛くなる様なゴールドの刺繍が入ったVERSACEのシャツを組み合わせるのだけは考え直した方がいいぞ、馬鹿みたいだから。









「ぐは〜っ💦 やっと着いたなぁ、もう9時過ぎてるやないか。やっぱ夜はアカンわ、道がよく見えへん!


「長かったね〜💦」





三崎港に着き、そこから予約した宿までが約90分。

危うく途中で車専用道路に入りかけたりと、とにかく夜の運転は土地勘が無いと辛い。






「もうサッサと風呂入ってゆっくりしたいんやけど………問題はここからなんよなぁ~」


「え、何で?ご飯ならアテくらいでかまへんよ?」


「ちゃうねん、この宿のチェックインが問題なんや……」


「どういう事?」


「う〜ん………ま、すぐ分かるわ。とにかくダッシュで荷物降ろそ」










あなたは覚えていますか?








【最高&最凶の宿】の事を…










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