《ジュンちゃんもおいでよ〜!私おごるから♪》




帰り道、『何か要る物があったら買ってくで〜』とアル中に電話。
流石に一日放ったらかしなのは気が引けると、少しでも思ったオレがアホだった。
電話の向こうに聞こえるカラオケサウンドから察すると、どうやら近所のスナックで呑んでいるらしい。




「いや、オレは止めとくわ。明日早いから、あんまり遅くなんなよ」



男であるオレならまだしも、いくらオバハンとはいえ女一人でよく田舎のスナックなんか入れるもんだ。
しかもここは大都会・大阪ではなく、江迎鹿町という西の果てにある原始村である。







Googleマップから頂戴したスナックの外観。
オレなら見なかった事にする。





《そんな事言わんでおいでよ〜!めっちゃ可愛い女の子二人くらいおるで〜》



おそらく酔っ払いMAXの三歩手前という状況だろうか。
冗談ではない、明日は何の日か分かってんのかコイツは?




「…先に戻っとくわ、じゃあな」



可愛い女の子というワードに0.3秒だけ反応したオレだが、あのド天然が言う『可愛い』にはウチの店でも散々騙されて来た。
ま、常々女が口にする『可愛い』という言葉に明確な根拠は無く、言ってみればオランウータンにリボンを着ければ可愛く見えるのと同じなのだ。
悪いが、墓参りを前に天然モンスターの仲介で類人リーグを開催するつもりはない。帰る。






その20分後…







「な〜んで来んかったんジュンちゃ〜ん!三千円で飲み放題やし、結構可愛い娘が二人もおったのにぃ〜」



『めっちゃ可愛い』から『結構可愛い』に変わっている事実はさておき、このド天然の恐れ知らずな性格はマジで本物だ。




「何や、もう帰って来たんか?せっかく二人でしみじみ松浦会議してたのに」



宿主が厚意で出してくれた日本酒。
それを宿のカウンターでチビチビやっているところへ、酔っ払いMAX二歩手前の状態で乱入して来るド天然。
宿主は宿主でドタキャン続きのストレスが溜まっていたのか、冷静は保ちつつも焼酎のグラスが空くペースは早い。こうなるともう完全に二次会の呑み屋である。
どうでもいいけどアンタ、オレの帽子の上に座るの止めてくれるか?







更に一時間後…






「ちょっとぉ、もう一時や〜ん。早う寝なアカンのとちゃうん?」





そう、アンタが乱入せーへんかったらもう寝てたんや。
悪い事は言わん、やっぱ医者いけ。









終電の過ぎた線路上でご機嫌のド天然。
頭の上に赤い何かが写り込んでいるが、これはきっと松本伊代と早見優による妬みだろう。






そして深夜二時…









「ぐおおお〜っ………ぐおおお〜っ……ぐああおお〜〜っ……」







また始まったよ







四国八十八ヶ所巡りよりキツイぞ、これ…