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去年も泊まったこのゲストハウスを予約したのは三ヶ月前。

ちょっと気が早い気もするが、お盆時期にこの辺りで低予算の宿泊施設を確保するのは中々困難だ。

平戸島なら宿自体はいくらでもあるが、目的地までの距離を考えるといささか不便である。





「うい〜っス、久しぶり」


「どーも、お久しぶりです〜」




宿のオーナーはまだ40代。

人当たりも語り口も非常に優しく、見た目も中々イケてるからモテると思うんだが何故か独身。

結婚願望が無い訳ではないが、ここまで来たら面倒臭いとの事だった。

うん、分かるよその気持ち。





「あっ、どうもご無沙汰してます〜♪」




去年に一度泊まっただけのオレ達。

それを宿主が覚えているのは、やはり姐やんのド天然キャラが強烈過ぎるからだろう。

到着早々、早速土禁のテラスに靴のまま上がり込んでいるが、この人は本当に周りの見えないイキモノなのだ。◯◯をしながら、という事が一切出来ない。ズボンのチャック開いてるし。









一両編成の車両に乗れて大喜びのド天然。
動き出した瞬間、「あ!逆に走った」と呟いていたが、何が「逆」になるのかは一切不明。






「今年もお墓参りで来られたんですか?」

「オレはね。この人は前回、台風で平戸島に渡られへんかったからな、今回は大丈夫そうやね」




姐やんの亡き父親は平戸島出身。
去年は強風で二輪が通行禁止になり、ただこのド田舎で呑んだくれていただけになってしまった。





「今回は、オレの店のお客さんも平戸に泊まってるんやわ。そやし、今日はココと平戸の中間辺りで晩飯にしようかと思ってさ。たびら平戸口駅の近くに店とかあったっけ?」

「あ〜、少ないけどありますね。ただ営業してるかどうかはちょっと…」



田舎の店に、定休日などあって無い様なもの。
「それならそれで他の店を探せばいい」というのは通用しない。それは都会人の考えだ。




「Googleマップでは、一応営業中ってなってるけど……ま、閉まってたらコッチに戻って来るわ」







「ところで、盆はもうギッチギチ?」

「いえ、全然です。というか、盆とかGWとか直前キャンセルが多いんですよ。昨日も団体の予約がキャンセルになって…」

「あ〜分かるわ。つーかそれ、相手は仮予約のつもりやしな」

「そうなんですかねぇ……まぁ、確かに予約の◯日前までキャンセル無料とは出てるんですけど、ホントそのギリギリの日にキャンセルの電話がかかってくるんですよ💦」

「そういう設定にしてたらオレでもそうするわ。じゃないと、『やっぱりコッチの方がいい』とか思うやん。特にグループやとみんなの意見があるしな、こういう宿には最初から向いてないって」

「ですよね~……やっぱりウチは、ライダーハウスとして売った方がいい様な気もしてるんですけど……」

「ライハは儲からんけどな。でも、これが本業って訳じゃないからエエんとちゃう?本土最西端も近いし、逆に40歳以上専門のライハにしたら客単エエかもよ?若い子は金落とさへんやろ、騒がしいだけで」




宿主の本業は不動産関係。
笠岡のオトーサンも言っていたが、ライハなんて本当に好きじゃないとやってられないらしい。
たかだか一人二千円くらいじゃ、夏冬は水道光熱費で消えてしまうとの事。
そりゃそうだろうな、特にあそこはやり過ぎだと思うわ。





「基本、オレも値段で決めてるからな。長期の旅やと、やっぱり一番削らなアカンのは宿代やし。まぁ、若い頃みたいな【節約至上主義】には絶対ならんけど」







宿経営なぁ……

ま、オレも昔はゲストハウスやってみたいなんて思った事も無くはなかったけど、やっぱりすぐ「オレには向いてない」って悟ったもんな。「ここら辺でおすすめの店ありますか?」って言われても「知らん」って返すだろうし。
何でも仕事にすると大変なんだな。











それより姐やん







アンタいい加減に靴脱げや、ここ土禁やで