前回の話はコチラ↑






イビキや寝言に関しては、これはもう先に寝たモン勝ちである。

「それが嫌なら個室で寝ろ」というのは常識なのだが、流石に一ヶ月近くも旅するとなれば話は変わって来る。


ここ、笠岡では過去三度泊まっているが、そのうち二回は貸し切り。一度だけ若いチャリダーの兄ちゃんが同宿になったが、あの兄ちゃんも金さえあれば被害に遭わずに済んだはず(騒音被害)。


そう、本音を言えばオレだって毎回ビジホか旅館利用で旅をしたいのだが、特にこういった安くて清潔で居心地が良いライハ、しかもそこが貸し切り率の高いライハともなると、それはやっぱり利用しない手はないのである。


が、そういう一般的な話はさておいて…


なあ姐やん、アンタ昨夜はあんだけ「頭痛い…飲み過ぎた…寒い…」とか呻き散らかしときながら、その大村崑ばりにハツラツとした寝起きの良さは一体何なんだ?





「もしかして風邪引きかけてんのか?」


「えっ、何が?」


「いや、アンタずっと頭痛いとか寒いとか言うてたやないか。そやし夜中に何回もエアコン弱めたり、アンタが蹴飛ばした掛け布団を掛け直したりしてやってたんやで?」


「え〜っ??うっそ〜!全然寒くなかったし、むしろ暑かったくらいやで?私、そんな事言うてた??」





アレも寝言やったんか(_ _;)










道の駅・北の関宿(安芸高田)
寝言撃退用の麻酔銃を探したが見付けられなかった






さて、本日は夕方までに下関入りし、予約してある海の家を兼ねた民宿で湘南気分を味わう予定である。

一緒に行くのが還暦前のアル中女ではなく、寝る前にハーブティーを飲むのが習慣の低血圧美女ならもっと良かったのだが、そこは夏の海辺が持つスペシャルマジックというか、もしかしたら姐やんだって鳥羽一郎みたいな地元漁師と恋に落ちるかもしれないし、オレはオレでたまたま帰省していたバツイチ40代の月下美人と何かあるかもしれない。
そう考えたら笠岡というカブトガニタウンを出発してからというもの、頭の中を駆け巡るのは渚一色である。

渚のシンドバッド、渚のアデリーヌ、渚のエトセトラ、思い出の渚、渚の女、片平なぎさ…

最後の方は自分でも訳分からんが、それが安芸高田市の田園風景を横目にしながらも【夏】をテーマにしたメドレーに変わり、夏のクラクションを皮切りにして渡辺美里辺りまで幅広く制覇。
気分はすっかりバージンブルーである。





「さっきから、何ニヤニヤしてんの〜♪」



うるさいっ、せめて起きてる間くらいはオレの時間を邪魔するんじゃないっ!
ささやかな妄想タイムくらい堪能せにゃ居眠り運転しそうになるだろがっ。昨夜は一時間しか眠れへんかったんやぞアンタのせいで💢






トイレと野菜直売所を3往復するハカイダー。
本棚に並んだサバイバルを見て、正に今のオレの事だと思った。






丁度お昼時になった頃、どこぞのスキー場辺りで休憩。
車の往来はほぼ皆無、人影さえ見付けるのが困難な山村地帯だが、村の中心部にはJAとヤマザキが合体した様なストアだけは当たり前の様に存在し、そこには商品まばらな陳列棚の前で大アクビをしているオバハンが二人。
こんな店でも【山菜おにぎりセット】なる物は一応置いてあるが、そんな下らん物に550円も払う程オレの心は広くない。
なんせ今夜は渚のバツイチとシーブリーズな一夜を過ごす予定なのだ。
【HOTEL・サンタモニカ】の休憩代も馬鹿にならんはず。





「ねぇジュンちゃ〜ん、こっちに半額のカップ麺とかあるよ♪こんなんでエエんとちゃう?」





うむ、そんなんで十分や。

特にアンタとのランチにはピッタリやな。





「でもコレ、よく見たらフタがめっちゃ膨らんでるわ。よっぽど標高が高いとこにおるんやね、私たち」




標高が高いのが原因なら、他の商品もパンパンに膨らんでるはずやろ。

消費期限が近いからそうなってんのや、アンタと同じでな。





「わ〜い、何か得した気分やな♪私はシーフードヌードルの小さいのにするわ」




しゃあないな、オレもどん兵衛にしとくか。

それにしても、津山といい笠岡といい、どっちも名物があるにはあるんやけどな。今まで名物なんか殆ど食った試しがねーわ。

ま、そういう店に並んでる連中って、8割以上は地元の人間じゃねーけどさ。

普通は食わんやろ、ホルモンうどんとか。






「うん!こういうとこで食べるカップ麺って美味しいね~♪」


「そうかな…」


「美味しいやんか、空気は綺麗やし誰もいてないし!」


「そうかなぁ……」






店の前に設置されたボロボロのベンチ。



そこで嬉しそうにカップ麺を啜るド天然を、さっきから手押し車を掴んだまま固まっている八つ墓村の証人みたいな婆さんがずっと見てた。



因みに、丁度この店の裏手で汲み取り作業をしているらしく、嗅覚過敏のオレじゃなくても【空気が綺麗】とは誰も思わなかっただろう。








とっとと食って先を急ごう。















ここで食ってる間に見かけた村人は僅か3名。
何故かずっと監視されている様な気がした。