前回の話はコチラ↑
「………何じゃこりゃ?」
チェンラーイは昔から日本人の移住者が多く、【チェンラーイ日本人会】なる集まりも耳にはしていた。
日本人会というのは確かチェンマイにもあったはずだが、要するに『何事も不慣れな異国の地。同じ日本人同士、お互いに助け合いましょう』という趣旨なんだろうとは思うが、今では入会者の殆んどが後期高齢者。つまり、入会者の安否確認が主だった老人サークルになっている。
と言えば聞こえは悪いが、そこは勘違いしちゃいけない。
老いは皆平等にやって来る訳だし、オレにだってそんな未来はすぐそこまで近づいて来ている。
少なくとも(全員がそうじゃないだろうが)、若い頃のオレが夢見たタイの田舎移住を果たした人達だもんな。
愚痴は多かれ、そこに家まで建てて住み続けている人達には敬服する他無い。
てな事を考えながら走っていると、やたら若いカップル達が群れている不思議エリアを発見。
ダメな隅研吾風の建物には脱力感しか起きない。
(ンププププ♪………タイ人はホンマに好っきゃなあ、こういう偽ジャパンが笑)
バンコクにある某デパートの中にも似たようなのがあるが、そこよりは幾らかマシといった感じのミニチュア日本人村。
一般的な日本人が【アフリカ=サファリ】と思い込むのと同じで、外国人もまた【日本=忍者】となるのは仕方がない。
それに比べりゃ【日本=京都】というのはまだマシなんだが、やはりそこはタイ人のやるやっつけ仕事。所々に脱力感満載のネタが散りばめられているのが面白い。
最初は面白がって見ていたが、その暴力的な暑さも相まってか5分も経たないうちに萎えるオレ。
『サクラ~、サクラ~』と言いながら記念撮影をしている家族連れを見ていると、それがソメイヨシノじゃない事なんかどうでもよくなってくる。
初めてアメリカの寿司を食った時と似てるな、この感覚…
「ニホンジンデスカ?」
「えっ?…………あぁ、はい…」
アホらしくなってベンチに座っていると、そこそこ可愛らしいタイ人の女の子が話しかけて来た。
これで隣にエハラマサヒロみたいな華僑系の彼氏がいなけりゃときめく所なんだが、やはり現実は甘くない様だ。
「ワタシノナマエハ、トゥン、デス。アナタハ、ニホンジンデスカ?」
「そやから日本人やて言うてるやん」
「コチラノカタハ、プー、トイイマス」
「そやろな、そんな顔してるわ」
「ガンバテクダサイ」
「はあ?」
「マタ、オアイシマス」
「マタ、オアイシマス」
おそらく日本語を専攻してる大学生か、そうじゃなきゃ趣味で勉強している日本ヲタクだろう。
が、頼むからオレを練習相手にするのはヤメテクレ。んで、出来ればもうお会いしない方向でお願いしたい。
(もう行こ。物凄い勢いで時間を無駄にしてるわ、オレ…)
「アナタノオナマエハ、タロウデスカ」
「タロウ?……そういうのは~、学校で~、習うんですか~?」
「ワタシタチハ、ダイガクヲ、ベンキョウシマス」
「大学を勉強……あ、大学で日本語を勉強してるって意味か」
「アナタノ、オナマ…」
「はいはいはい、お名前ね?私ノ~、名前ハ~、ユタカです」
「ヌタカー」
「ヌタカー」
「ちゃうちゃう、ユ・タ・カ。ユタカ」
「ユ・タ・カー」
「ユ・カ・ター」
「うんうん、マサヒロのはちょっと違うけどまぁエエわ。ユタカ、ユタカ・タケノウチ」
「ユタカ・サテノウシ…」
「ユ…カター、サケ…」
「そうそう、それでいいよ。じゃあ元気でね、バイバイ」
他国の文化を正しく伝えるのは、なかなか難しいもんだな。
さて、先を急ごう。
しょうもない事で悩んでる人には是非来てみてほしい場所だ。