大変長らくお待たせしました。

前回の話はコチラ↑








最後に阿蘇へ来たのは、熊本地震から三ヶ月くらい過ぎた頃に元嫁と。

その前にも南阿蘇へ常連さんから預かった物資なんかを持って来てはいたのだが、まさかそんな最中に熊本でのんびりなんて訳にもいかず、避難所に置けるだけの物資を置いて早々に退散。

その日は実家の様子を伺いついでに別府で一泊したっけか。








前回の記事で見栄を切った割には全くアテにならないオレのアンテナ。
こういった道は殆んどが牧場に続く農道なため、家畜への疫病感染防止で通れない事が多い。






(ま~た降って来たか……こりゃ早いとこ風呂に浸からんと熱出るな……)




時折強く降ったり止んだりを繰り返す悪天候の中、標識の無い農道に片っ端からアタックするオレ。
この勇猛果敢さが少しでも仕事に活かされていたら別の人生があったはずなのだが、そこに関しては意外と地味なタイプなのでこれからも変わらないだろう。
来世ならマギーミネンコの如くブンブンいわせたい気もするんだが…







せめて雄大な景色でも眺められれば良かったのになぁ……裏目男の本領発揮。






今日予約してある宿は、ネットでは評判のいい格安ライダーハウス。
宿の周りには店らしき店も無いので、念のために朝夕二食付きのプランでお願いしておいた。
それが当たりかハズレかは知る由もないが飢えるよりはマシだ。ド田舎をナメちゃいかん。
あと、以前は宿の近くに温泉施設があったらしいのだが、熊本地震で湯が枯渇して休業になったとかいう話を聞いた。
管理してる方には大変気の毒だが、温泉郷で育ったオレからすると聞き慣れた話である。
そう考えるとかなりのバクチなんだな、温泉って。




「ふぅ~っ。ここか、やっと着いた」



直線距離なら20分もかからないところを、通行止めや雨宿りなんかで一時間以上かかって共同浴場に到着。
外観は四年に一度くらい【水前寺清子の夕べ】が開催されそうな町民センターといった感じで、湯の評判がいいのかどうかは知らんが駐車場は地元ナンバーの車で埋まっていた。
肝心の温泉はというとかなり普通なのだが、ここら辺の風呂で施設も充実してるなら400円は安い方だろう。
休憩所も広々してるし、空いてる時なら仮眠くらいは余裕でとれそうだ。







正式には【南阿蘇村立総合福祉センター・ウィナス】という施設らしい。
10回聞いても覚える自信が無い。





「あの……」

「はい?」



チェックインまでには、まだかなり余裕がある。
風呂から上がって休憩所のソファーで寛いでいると、駐輪場と露天風呂でも見かけた兄ちゃんが話しかけて来た。
そういや露天風呂でもこっちをチラチラ見ていた様だが、やはりこの兄ちゃんもバイクで旅をしているんだろうな。で、オレのナンバープレートを見て話し相手になりそうだと思ったのだろう。
やめてくれ、中途半端な皮被り同士がありきたりな情報交換したところで寂しさが増すだけだ。話しかけるなら向こうで盛り上がってるレディートド御一行様がいいぞ、昆布炊いたのとかお裾分けしてくれそうだし。






「大阪から来たんですか?」






やっぱりな。

つーか、オメー達みたいな連中は、寂しいなら何故一人旅をしようと思ったんや?

安宿で相部屋になったとかならまだしも、こんな場所でお互いの局部を見せ合った後で知り合いになっても勘違いされるだけだっつーの。場所を選べっ、場所をっ!






「あぁ……そうですけど」


「九州一周ですか?」


「あ、いや、特にそういうアレじゃないんやけど」


「あ、そうなんですか?シュラフとか積んであったから、てっきりそっち系の旅かと…」





シュラフを積んでたらナニ系になるのかは知らんが、少なくともインテリア系でない事だけは確かだ。キミはその日焼け具合からするとポリネシア系か?






「ボク、静岡からチャリでここまで来たんですよ」


「あ、そうなんですか。じゃあ、この後も事故には気を付けて下さいね」





そう言ってその場を後にするオレを、呆気に取られた顔で見つめるヤング静岡。

熊本入りして話しかけられたのはこれで二度目だが、悪ぃけどオレってそういうタイプじゃないんだわ。もっと若くて、こういう場所でコンセント泥棒とかしてるヤツの方が話も合うと思うぞ。







それにしても本当によく声かけられるよなぁ……







そういやタイでもオカマにはモテるもんな、オレ。

勘弁して。













いつかキープしておいた汚物入れで靴濡れをガード。
こんな情けない事してるバイク乗りはオレだけだと思う。