「寒っぶうぅぅーっ!!」
と思わず叫んでしまったのも無理はない。
ここ、福井の山間部は大阪の自宅より10度くらい低いんじゃないだろうか?
しかも名田庄に着く直前から雨にやられた上、カッパを持って来るのを忘れていた。
まあ、ワークマンで買ったイージスという防寒着は撥水性に優れているからマシっちゃあマシなんだが、それでも精々30分くらいで重くなってくる。
(ヤッベーな、こりゃ。早いとこ街に下りにゃパンツまでビショビショになるわ…)
とは思いつつも出発したのは割りと遅め。
ま、福井まで行きゃ富山なんかすぐだろうと勝手に思っていた。
で、小浜辺りで到着時刻をナビしてみると………
(5時間39分……ん?何で?………あっ!ちゃうやん!オレがピン立ててたの福井市やん!んあああああーっ!またやってもうたっ!富山はまだずっと先やんかっ!!)
アホだ、アホ過ぎる……この歳になって、しかも一度走った事のある道を……やっぱ一回調べてもらった方がいいかなぁ……脳波。
福井市を勝手に富山市と勘違いし、何なら富山市入りしてからそのまま飛騨高山に入ろうかなーなんて考えていたアホなオレ。
(いやいやいやいや、能登半島からの帰りも8時間以上かかっておきながら、その向こうに位置する富山が近い訳ないやんか!あーーーーっ!!!!これじゃ伊豆半島と三浦半島の二の舞やないかっ!オレのバカっ!!帰ったらトイレに一日の標語が書いてある日めくりカレンダー貼れっ、バカタレがっ!!)
途方に暮れたカサブランカ教師(←オレにも分からん)みたいな気分で一旦停止。
ついさっき決めた日程は二泊三日だが、富山で色白美人とブリ談話したり、飛騨高山でミスこんにゃく田楽と囲炉裏を囲むには時間が無さ過ぎる。
本当なら23日に戻って24日はのんびり過ごし、翌25日からの沖縄行きに向けて準備をしたいところだが……
知らん。一泊延長!
沖縄の用事と言っても、ツレがオープンする飲食店の下見・味見・メニュー作成とかそんなもんである。
そんなもんは二時間もありゃ終わる事だし、後はどうせ呑みに連れ回されるだけなはず。
もういいや、こうなったらギリギリまで北陸女将とのプレシャスナイトを楽しもう(←ある訳ない)。
「あ~~~……やっと着いた。すっかり暮れかけてきてるやんか」
エリアで言うと武生という場所になるらしいが、【越前市・旅館】で検索して安かったのがココ。
県道だか国道だか分からんが、その目抜通りをチャッと入ってシュッと曲がった場所にある旅館がソレだ(←余計に分からん大阪人ナビ)。
窓からは田んぼとドブ川と通学中のランドセル部隊を見渡せる好立地で、『越前と言えば!』な期待を見事に裏切るファストフード店が集中している。
ま、いっか。
どっちかと言うと蟹ってあんまり好きな方じゃねーし(←食べるの面倒な人)。
宿に着き、誰もいないフロントで暫く待つ事15分。
もしかしたら受け付けサービスも無しの素泊り料金だったのかと思ったが、暫くするとバブル時代の高原街でみるきぃうぇいという名の喫茶店を経営していた様な女将がやって来た。
が、こっちを向いて会釈はするも、その左耳には電話の子機が当てられており、何やら業者と思われる相手との会話は5分過ぎても終わらない。
オレはカンボジアかどっかの村役場にでもいるんだろうか?
「お待たせしました!いらっしゃいませ」←声の色
「あのー、さっきネットで予約した者ですが…」
「はい、素泊りで御予約いただいた方ですね?承っております!」
承っておるのなら時間通り待っとけよと言いたかったが、何分こっちが急に予約したんだから仕方がない。
この小っこいポケモンみたいなおばちゃんは、もしかしたら全部一人で用意してたかもしれないからだ。
「それじゃ、こちらの鍵をお持ち下さい。お部屋は二階にございます」
「はい、ありがとうございます。あの~、お風呂はもう……」
「ごめんなさい、お風呂は後30分ほど準備にかかりますが…」
「いやいや、全然構わないですよ。じゃあ30分くらいしたら使わせていただきます」
玉の様な汗を額にびっしりかいているのは、やっぱり部屋の用意で上り下りしてたんだろうな。
昔はオレもホテルのベッドメイクのバイトしてたから分かるよ、おばちゃん。
エレベーター無いと余計にしんどいよね。
「あ、それから近くに食事出来るとこあります?」
「そうですね~…今は結構…その…県外からだと……あ、吉野家さんとかハンバーガー屋さんならすぐそこに…」
「あ~なるほど、分かりました。風呂から上がったら、適当に散策してみます」
ま、こういう田舎は特にそうだろうな。
でも、そんなんは最初っから分かってた事だしね。とりあえず後でプラプラ散歩してみっか。
早朝ならともかく、夜に吉野家は寂しいわ、オレ。