(さて、行くか!)




心で気合いを入れ直したのは、勿論ジョンの足跡を辿る時が来たからである。







小学生の頃からファンだった話は記事に書いたが、成人してからも5年おきくらいで発売される、ジョンに関する書籍や写真集は、結構欠かさず購入していた様に思う。


月の手取りが13万くらいしか無かった時代に、一冊二千円くらいする様な本を買うのにはかなりの勇気が必用だったが、そこは趣味の範囲と考えれば何でも一緒だ。


バイクもそうだし車もそう。

ギターなんかの楽器もそうだし、その道に進む本格派以外は、自分の人生に何の役にも立たない物ばかりに金を注ぎ込む年頃だった。

ブルースハープなんて、後ろポケットに入れてカッコつける為に買ったみたいなもんだ(首に掛けるスタンドみたいなヤツも長渕の影響で買ったし)。






これ買ったな~……3000円以上したんじゃなかったっけ?
この頃のショーンは天使並に可愛い。





そのジョンの写真集に、【ジョン・レノン 家族生活】というのがあって、それを買って初めてジョンが何度も軽井沢に来ていた事を知ったのは24歳くらいの頃。


『いつかはオレも、ジョンが泊まった万平ホテルに!』


と心に誓っていたが、年齢と共にある程度の収入を稼ぐ様になると逆にケチってしましてダメだな。

いやホント、50を超えて未だにその程度の夢を叶えられない自分が情けない。


マジであの頃の自分に会いに行って説教してやりたいくらいだが、ちょっとその説教リストを簡単にまとめてみた↓




・音質の違いも分からん癖にメタルテープなんか買うな


・フミヤの真似してイアーカフスなんかするな


・CCBの真似してピンクのカラースプレーするな


・ガキのクセにルネッタ・バダの吉川サングラス買うな


・アームバンドをするな


・サントリージガーバーに行くな


・マイキューとか買うな


・出来もしないマッセをするな


・KENWOODを欲しがるな


・低音を分かったフリするな




ま、ザッと挙げたこれだけでも止めといたらかなりの貯金が出来たはずなのだが時既に遅しだ。

誰か早くタイムマシンを開発してくれ。






遂に来ました万平ホテル。
が、正面玄関口に原付を停めるのは流石に申し訳なかったのでコッソリと。




(うわ………来ちゃったよオイ…)



小雨降る肌寒い天候だったが、それが原因ではない尿意が唐突にオレを包み込む。

着いたで~……遂に来たで~……万平ホテルやで~……

人間とは、何と見栄っ張りで、何と愚かな生き物なんだろう?

田舎者は田舎者らしくお上りさんになればいいのに、自分の身なりや愛車の世間体を気にし、たかだか一般人が泊まるホテルの前で緊張しているのだ。


(オレ、いつからこんなに卑屈な人間になってた?たかがホテルやん。一泊四万?ちと無理すりゃ払えるし、一生の記念になれば別にエエやん、ガキやあるまいし)


と、頭では思うのだが………ねぇ…。
分かって貰える?この気持ち。





正面玄関での記念撮影は断念。
この写真だって、誰もいなくなってから撮ったというヘタレぶり。





で、泊まりもしない田舎者が、ここで写真だけ撮って帰ると思われる事だけはオレのプライドが許さない。
こう言っちゃ何だが、オレだって昔はリキッドのアイラインを引いて素人のモノマネ番組に出ていた男。
今じゃ小汚ない飲食店のアホ店主だが、それでも慕って通ってくれる美輪明宏みたいなママさんだっているのだ。『旅慣れた人ごっこ』の精神で最後まで誤魔化し通してやろうじゃないか!









「いらっしゃいませ」


「あ……ラ、ランチを……」


「……ランチでございますか?」


「あっ……い、いや、ランチじゃなくて、モーニングです、モーニング、朝メ…いや、朝食」


「失礼ではございますが、御宿泊いただいておりますお客様でしょうか?」


「あ、いや……あ!朝飯じゃなくてアレ!カフェです、カフェ!」


「ありがとうございます、カフェのご利用でございますね。ご案内致します」











バレてるよなー………





お上りさんって。