「ご、ごめん!!」



勢いよく体を離して慌てて距離を取る。


恐る恐る、松本くんを見ると瞬きをする目尻から涙が零れていて俺はその場で頭を抱えた。



何やってんだよ、俺は!!

怖がらせて泣かせて、どうするんだよ!!


数分前の自分を全力で殴りたい。




「松本くん…嫌だったよね、本当にごめん。大丈夫…?」




ようやく想いが通じて舞い上がってしまった。

 

俺たちは同性なんだ。

松本くん的には、もしかしたら心は通じても体の関係は別問題って可能性だって…あるかもしれない。


俺は松本くんの心も体も全て欲しいけど。




「だ、大丈夫です…。あの、ごめんなさい..嫌とかじゃなくて…その、」


「ううん、無理しないで。もうあんなことしないから安心して」


「…え?」




松本くんが俺のことを好きだって気持ちは間違いないはずだ。

大丈夫、焦る必要はない。


気持ちが通じていれば、今は無理でもいつかは先に進めるかもしれないし。

それに、このままでも俺は松本くんと一緒に居られれば幸せだ。



だけどせめて、



「松本くん、あのさ」


「…はい」


「キス…は、してもいいかな?」



何度かしたけどキスは嫌がってなかったよね。



「あのっ、」


「え!?キスもダメ?」


「ち、違います!キスして欲しいです!それに、その先も…あの、さっきしてくれたみたいなことも…して欲しいです///



最後の方が小声すぎて聞き取れなかったけど。

聞き間違いじゃないよな?



「いや、でも」


「さっきは驚いただけで、その、僕、こういうの初めてで…どうしていいのかわからなくて」


「……」



ちょっと、待って。ハジメテ…?ってことは。


松本くんのあんな表情や、あんな姿や、あんな声を…誰も知らないってこと?


俺だけのものってこと??

松本くんのハジメテを全部、俺がもらえるの?



今、自分がどんな顔をしているのか安易に想像できて。

そのだらしない顔を隠すように両手で顔を覆って、その場に座り込んだ。