箱の中で光るそれに、目を見開く。
なんて言っていいのかわからず、黙り込んで櫻井さんを見上げると、ベッドサイドに立っていた櫻井さんがベッドに腰掛けた。
近くなった視線と距離に鼓動が跳ね、僕はもう一度箱の中身を見つめた。
どうしてこれを渡されたのか見当もつかない。
箱の中から、綺麗なシルバーのアクセサリーを取って目の高さまで持ち上げた。
「…ブレスレット?」
「うん。ほら、俺とお揃いね」
そう言って、左腕の袖を捲った櫻井さんの手首には同じシルバーのブレスレットが見えた。
「俺さ、松本くんと出会ったのは運命だと思うんだ。それでね、松本くんの家族のこととか辛い記憶とか知って…。俺に出来ることないかなってずっと考えてた」
「え…?」
「最初は、少しでも笑ってくれたらいいなとか、楽しいことを一緒にしたいなとか。あとは…、辛い時寂しい時は俺に頼って欲しいなって」
固まってしまった僕の手を取り、ブレスレットごと握りしめられて、どくん、と胸が高鳴る。
「だけど、好きになればなるほど、それだけじゃ足りなくなって…。俺を好きになって欲しい、俺だけを見て欲しいって、独占欲が出てきちゃった」
「…櫻井さん、」
「俺は男だし、松本くんとは歳も離れてる。しかも芸能人なんて面倒な職業だから、迷惑でしかなんじゃないかとも思ったんだけど」
この人はどうしてこんな真っ直ぐに言葉を伝えてくれるんだろう。
櫻井さんにそこまで想われていたなんて、知らなかった。
「俺は松本くんの全部を受け止めたいって思ってる。過去も現在も…そして未来も。ずっと一緒にいたいんだ」
「なんか…プ、プロポーズ、みたい」
「ふふっ。半分そのつもり」
「え!?」
「あ、引いた?」
「いや、あの、引くとかじゃなくて…。ビックリしちゃって」
「実はあの日、これを受け取ってたんだ。せっかくだから世界に二つだけしかない物にしたくてさ。高校の同級生がアクセサリーデザインの仕事してて、そいつにお願いしてたの」
「なんで、そんな…」
「松本くんに告白するとき、絶対にこれを渡そうと思ってて。で、受け取れそうな日があの日しかなくてさ。せっかく誘ってくれたのに咄嗟に嘘ついちゃた…ホントにごめん」
どう見ても高価なブレスレット。
僕のために…。
嬉しくて、上手く言葉が出ない。
「だ…だからって、嘘は…ダメ、でしょ」
これだけの言葉をくれたのに、その返しがこれなんて。
「慣れない嘘はつくもんじゃないね。結局、松本くんを泣かせちゃった」
櫻井さんが苦笑いしたのが見えたと思ったら、あっという間に抱き寄せられていた。
覗き込まれ、自然と目を瞑れば優しく唇が触れた。
「もう嘘はつかない、絶対」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、僕は胸を詰まらせた。
嬉しいのに、やっぱり恥ずかしくてそれを伝えることが出来ない。
でも、せめて。
身を乗り出し、櫻井さんの太腿に手をつく。
「……ゆるさ、ない」
「え…?」
じりじりと距離をつめて、驚いたようにぽかんとしている顔にもう一度言う。
「絶対許さない!」
そう言い捨てて、驚いてる櫻井さんの唇にキスをした。