「……んっ、」


櫻井さんが、キスをしながらゆっくりと僕をベッドに押し倒す。


初めて入った櫻井さんの寝室。
ほんのりと香るフレグランスが鼻をかすめる。

じっと見つめてくる視線が恥ずかしくて、目を逸らさずにはいられない。
ドキドキし過ぎて、心臓がどうにかなってしまいそうだ。

櫻井さんは啄むだけのキスを繰り返して、僕の手を優しく絡め取る。
その手をぎゅっと握りしめればそれより強い力で握り返され、微笑まれた。


「好きだよ、松本くん」

「……っ、」

「俺はね、松本くんが思ってるより、ずっとずっと君のことが好きなんだよ」


好きという言葉をもう何度も言われているのに、その度に脈打つ胸の音が速まっていく。


ずっとずっと、ってそんなの。


「…そ、んなの、信じられない…」


見つめられる視線から逃れるようと横を向く。

櫻井さんからの言葉がもっと欲しくて。
まるで駄々をこねる子供みたいだ。


「じゃあ、」


頬に触れた櫻井さんの指が、こっち向いて、と撫でてくる。


「これから俺に想われて、甘やかされて…。分かっていけばいいよ」

「あの…、は、恥ずかしくないですか?」

「全然」


唇がまた触れて、そのまま櫻井さんの胸にすっぽりと収まった。


あったかいな…。


髪を撫でる櫻井さんの手が気持ちよくて、目蓋がどんどん重くなる。


「眠い?」

「…ううん」

「ふふっ、目が開いてないよ。寝不足?目の下のクマが酷いね」

「誰のせいだと思ってるんですか」

「俺か。じゃあ、もう寝ようか」

「…やだ…まだ、寝たくない」


もしかしたら夢かもしれない。
朝起きたら全部夢で…、そんなの嫌だ。


「大丈夫、朝になっても俺はここにいるから。だからもう寝なさい」

「あの、櫻井さん」

「ん?」

「……大好きです」

「俺もだよ。おやすみ、松本くん」



耳元で囁く櫻井さんの心地よい声を聞きながら、僕は意識を手放した。