せっかく買ったサンドイッチもデリもサラダも、何も食べる気になれない。


── 違うんだあれは、


櫻井さんの言葉が頭を離れない。

ごめん、と言ったあの声も頭の隅でずっと響いてる。

何が違うっていうの?


「……」


深いため息をついて、紙袋から買ったものを取り出し冷蔵庫に入れた。


── 松本くんが好きだよ。


そう言って抱きしめてくれたのも、全部嘘だったのかな。

あれもこれも、全部。


「…もう寝よう」


何もかも早く忘れたい。

そう決めて部屋の電気を消した。


今、胸が痛いのは。


── 松本くんが好きだよ。


頭から離れないこの声のせいだ。


やっぱり特別な人は作らない方がいい。
こんな思いをするくらいなら。


わかってたはずなのに…。
櫻井さんと僕とじゃ、住む世界が違うって。


布団に倒れ込み目を閉じる。
疼くような胸の痛みは治まらず、唇を噛んだ。


目蓋の裏に浮かぶ櫻井さんがいつまでも消えてくれない。
あの声がいつまでも頭の中で繰り返され、離れることはなかった。