幼いときに母親をなくしている彼女、「しっかり者」になったのは必然だったのでしょう。

少なくとも、少女のような母に育てられていたら、2才年下の小学生の陽大に自らキスをするような子には、なっていないように思います。

また母親が生きていたら、

大人の都合で理不尽に交換させられることへの不満も言えたのでは…

 

トンネルで雷を避ける陽大との会話、南関東大会の試合前の陽向との会話は

「欲しい言葉をくれるこ」と「欲しい言葉をくれないこ」の対比で

いつか交換させられる者同士という境遇も絡み、雛は陽大のことが好きになったのではと思います。確信はなかったようですが、お互い好きあっているとも思っていたようです。

 

千場伊織に「生きててくれてるだけでいい」と言っていますが、その後花染町に陽大が着いたときの様子だと、言葉通りのようには思えない印象です。本当に何も求めていない?

陽大が「実子として~」を将来結婚するということだけは避けたい思いからだということは、聡明な彼女ならすぐ気がつきます。

花乃にはそこまでする彼に疑問だと言っていますが、他に誰一人解らなくても、陽向にキスを見せつけた彼女だけは解るはずなのです。

 

雛の葛藤はそこから始まり、早気に陥っているとして描かれています。

陽向にした仕打ちが無ければ、そんな事態にはならなかったと後悔したのではないでしょうか。

花乃もそうですが、雛自身も陽大は自分が好きだったはずと思っていたのですから。

花乃を花染町につれて来たときも、まだその思いがある様子。

陽大の嘘を壊す糸口をさぐって、花乃に「どぉ思っているの」と聞く雛は

弓を教えて欲しい水野に、誘導尋問をする陽大と重なります。

しかし花乃は親友という…

 

 

さて、大学生の雛は早気を克服し、葛藤も乗り越えたように見えます。

花乃と陽大を引き合わせるべくする言動も、葛藤を乗り越えたゆえにでしょう。

 

いつ?

なにがきっかけで?

 

正直描かれていないから判らないと思っていました

時系列を整理するまでは

 

雛は、花乃を花染町に連れてきたときの一連の出来事から気が付いたのではないでしょうか。

陽大が元々誰を思っていたのか。

倭舞での過去を無かったことにしようとする陽大が唯一メールを送った相手。

雛と花乃が会うはずであろう大会の日に、空メールを返信する陽大。

たとえ火事の夜の事がなくても、陽大の気持ちが自分に無かったことに気がつけば、

陽大に対しての後悔は無くなり、葛藤は消えます。

(あくまで陽大に対しての恋心の部分ですが)

そして、陽大の世界を守る為には、二度と会わないと決心する花乃に、

「生きててくれてるだけでいい」という、相手に何も求めない本当の姿を見たのでは。

 

この頃から雛は、花乃と弓を引きたいと思いはじめたのだと考えています。

大人になった雛の印象が陽向と重なるのは、

陽大と花乃の気持ちが、本人たちよりもよく見えていたからと思えます。

二人を見守っていた陽向のように。