人生というのは、思わぬところで転換点があるものだ

 

一言で書くと、治療方針がまったく変更になった

 

通院日である、いつもと同じく電車に揺られる

病院の都合で医師が変更になるということだった

どんな人なのだろうか、不安でいっぱいだった

 

なんと、産業医でしかも労働衛生の専門家

産業医以外にも専門の国家資格を持ち、誰もが知っている大手企業で産業医を務めたこともある方だった

 

「今までの成育歴や治療遍歴をカルテで拝見しました」

「はっきり言って、あなたにはもう薬は必要ないと思うんですよ」

「初診の時は必要だったかもしれませんが、9時間以上眠れて、その上歩いている途中に眠くなる、すぐ横になりたくなるっていうのは、薬が効きすぎです」

「あなたの訴えられている症状は、すべて薬が強すぎだからです」

「もちろん、統合失調症や双極性障害やうつ病やてんかんのように、薬物療法が必要な疾患はあります。ですが、あなたにはもう必要ない」

「あなたはご自身の人生を考える段階に来ています。職業選択や将来の不安は、病気ではなく誰もが抱くものです。薬にそういった不安を和らげる効果はありません」

「むしろ、いつまでも家で暇にしているからこそ、不安が増殖していくのではありませんか?」

「生活習慣の改善。十分な睡眠と運動。あなたの場合、運動療法が最も効果がある薬です。運動療法は科学的に最も根拠のある治療方法です」

「依存症とかうつ病とか、あなたはすぐに色々調べすぎて勝手に病気だと思い込んでいます。もしインターネットに依存しやすいのだとしたら、それを防ぐためにあなたは今何ができますか?依存症とか抑うつとか、自分に勝手にレッテルを貼るよりも、何ができるかの方が大事なのではありませんか?」

「仕事は明日からでも復帰してもいいですが、会社とよく交渉してください。もちろん、意見が必要な時はご連絡ください」

 

何も言葉がなく、晴天の霹靂だった、まさか私淑する井原裕氏そのものではないか

だから面接の最後にふと聞いてしまった

「先生のおっしゃられることは、獨協越谷病院の井原先生にそっくりなのですが」

「はい、お会いしたことはありませんが、勝手に影響を受けて参考にさせてもらっています」

「先生、でも、こんなにじゃんじゃん薬を切って生活指導だけにしたら、病院に怒られるんじゃないですか、勤務医なのに」

「はっきり言って、精神科医はすぐ薬を出してしまえば簡単に儲かるんですよ、だから私は病院に怒られます。でも」

「でも?」

「私が怒られることよりも、あなたの人生の方が大事です」

 

ということで、治療方針は大幅に変更、服薬量も更に半分に、それも服薬の間隔も自分で勝手に決めて勝手に止めてしまってよい、とのことだった

先生の名前で検索したところ、ブログを発見、やはり井原裕氏と藤川徳美氏に影響を受けていた(薬の前に生活習慣の改善、ゆるい糖質制限、女性は鉄剤摂取)

 

繰り返しになるが、人生というのはどこで転機が訪れるか分からない

もし仮に、転院先としてもうひとつの精神科病院を選んでいたら

もし仮に、主治医が変更にならなかったら

新しい主治医が、普通の勤務医だったら

この展開にはならなかっただろう

 

自分の会社を持って、別に収入源があるから、こんなに大胆なことができるのだ

普通の勤務医は、クビになることを恐れて、「標準治療」しかできない

 

もしかしたら、私は今日世界で一番幸運な人間なのかもしれない