大きな教訓のひとつがこれだ
1度目のうつは、良くも悪くも薬と精神科に頼りすぎていたし、その反動で治療後半は薬を抜くことだけが人生の生きがいのようだった
ちがうのだ、原疾患が良くなったら自然と薬を飲み忘れるようになるので、じゃあそろそろ維持療法も終わりですねーとなって漸減・中止していくのだ
精神科薬を頑張ってやめようとしている、というのがそもそもの間違いだった
また、薬については添付文書やら製薬企業のサイトやらはたまた精神科医向けの医学書や論文を読んで、
・半減期
・薬理作用
・作用と副作用
・漸減スケジュール
を細かく決めていった
そんなことよりも、生活習慣の改善や、思考や認知の歪みの修正など、やることはあった
(私のように)精神科からなかなか離れられない人は、長きにわたって投薬でコントロールしないとならない場合はともかく、薬のマニアになってしまっていることが多いのではないか
精神科医と患者、あるいは患者間でのコミュニケーションはどうしても診断名と薬剤のことに終始しがちだ、いわば精神科における共通言語
でも、本当に完治させたいのなら、薬の話よりも優先されることがある
地道な生活習慣の改善と、「生まれ直し」とも言える人間観の変容だ
それがあってはじめて、完治に至る
うつには意味があって、「本当にその人生でいいんですか?」という心の叫び、頭の過剰なコントロールに対するストライキなのだ
だからその声に応えてあげないと、うつは何度もやってくる
余談
抗うつ薬について知っていることを軽くメモ
もちろん、こんなことを調べる暇があったら、前述の通りもっとやることがあるので、他の方の参考になれば幸い
抗うつ薬には大きく分けて
・三環系
・四環系
・ドグマチール
・SARI
・SSRI
・SNRI
・NaSSA
・S-RIM
の種類がある
現在主に使われるのはSSRI, SNRI, NaSSAだ
三環系
トリプタノールとかアモキサンとか
昭和の異物、薬価は安いが副作用も強いので、おじいちゃん医師や病歴が数十年の患者さん以外はまず使わない、知らなくてOK
四環系
テトラミドとか
これもまず使わない、なぜなら後述するNaSSAで用が足りるから
ドグマチール
少量で胃薬、中用量で抗うつ薬、高用量で統合失調症薬という面白い薬
抗うつ作用としてはドーパミンを出す
これも若い医師はまず使わない
SARI
デジレル(レスリン)
薬価が安い、セロトニンを出して眠くなる
平成初期の薬、これももう使わない
SSRI
デプロメール(ルボックス)、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ
平沢進の歌詞にも出てくる、おそらく一般人でも知ってる抗うつ薬
選択的セロトニン再取り込み阻害薬ということで、読んで字のごとくセロトニンの再取り込みをさせないことでセロトニン量を増やそうぜという薬
デプロメールはほとんど使わない
パキシルは悪名高く、いわゆる禁断症状のシャンビリがあまりにも有名
ジェイゾロフトは低用量から使えて効果がマイルド
レクサプロは抗うつ薬としての第一選択、開始量と維持量が同じなので使いやすい
ジェネリックが最近出たがそれでも10mg60円
ちなみにSSRIはうつ病・うつ状態以外にも、社会不安障害やパニック障害、強迫性障害にも適応があり、薬剤によって微妙に適応が違う
ジェイゾロフトだとうつ病に対しては維持量50mgでよいが、強迫性障害だと100mg必要、ということもある
SNRI
トレドミン、サインバルタ、イフェクサーSR
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
セロトニンだけじゃなくてノルアドレナリンも再取り込みをさせないことでどちらもドパドパ増やそうぜという薬
トレドミン<サインバルタ<イフェクサーSRの順に強く、薬価も高い
トレドミンはあまり使われず、サインバルタは第一選択で使われやすく、イフェクサーSRはその次
ちなみにトレドミンは錠剤なのに、サインバルタとイフェクサーSRがカプセルなのは、カプセルにしないと効き目が強すぎて忍容性が落ちる(続けられない)という説もあり
また、カプセルなので漸減しづらいという欠点もあり
ちなみにサインバルタは線維筋痛症などの慢性疼痛にも適用がある
イフェクサーは強すぎてしばしばハイテンションになりやすく、それを躁転と勘違いされやすい
サインバルタもしくはイフェクサーをリフレックスと併用する「カリフォルニア・ロケット」という難治性うつに対する処方があるが、もちろん第一選択ではない
NaSSA
リフレックス(レメロン)
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬と非常に長ったらしいが、四環系の親戚
神経伝達物質の再取り込みをさせないのではなく、そもそもの出る量を増やそうぜというアプローチ
そういう意味では四環系とSNRIの進化版とも言えるか
効果発現まで時間が早く、SSRIやSNRIよりも即効性がある
難点はとにかく眠くて眠くて仕方がなくなって日中起きてられなくなるのと、食欲が爆発して特に女性は数十キロ太ることもざらにある
逆にその副作用を利用して、不眠と食欲のないうつに使われやすい
慢性瘙痒や不眠症に適応外使用されることもある
他剤と比べて薬価も安く、禁断症状も比較的少なめ
S-RIM
トリンテックス
セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬
SSRIの進化版というイメージ
第一選択で使われることはなく、第三選択
つまりSSRIとSNRI or NaSSAの2剤を使って、それでもだめなら検討される
デメリットは先発品しかなく、薬価が飛び抜けて高いこと、10mgで161円もする
レクサプロのジェネリックが60円、サインバルタジェネリックが28円、リフレックスのジェネリックが14円であることを考えると、何だかなあという気持ちだ
抗うつ薬の等価換算
http://jsprs.org/toukakansan/2017ver/antidepressant.php
https://kokoro-hino.tokyo/?p=66
以下が等価
ドグマチール150mg
パキシル20mg
ジェイゾロフト50mg
レクサプロ10mg
サインバルタ15mg(※サインバルタカプセルは最小容量20mg)
イフェクサーSR75mg
ミルタザピン15mg
性差や年齢、体重で投薬量は変化する
食事の量も高齢女性で体重40kg台と巨漢の若年男性体重100kg超だと全然違うのと同じ
抗うつ薬は単剤での処方が基本
また、初診から3ヶ月未満で複数処方されている場合、あるいは同じ薬理作用のものが複数(SSRIふたつ、とか)処方されている場合は、医師に理由を聞いたほうが良いだろう