不定期連載小説「超能力少年タケル」 10
「ずばり!アイドルになるために、秋葉原へ行きましょう!」
キリシマは僕の顔を見ながら目を輝かせて言った。
いまどき秋葉原か?確かに、AKBとかメイドカフェとか常にオタクの文化はここから始まっているけど・・。
「秋葉原はアイドル激戦区です。私は毎週通っているので、ここからの成り上がり方を熟知していますよ!ここで天下を取れるようでなくては、芸能界に入っても目立つことなどできずに埋もれてしまいます。まず、タケルさんに一番学んで欲しいのが・・・・萌えです。」
キリシマは真面目な顔で続ける。
「いくらタケミちゃんになって美貌を生かしても、おとこが見え隠れするようではファンはついて来ません。やはりプロのしぐさを見て勉強しないと。」
「マジでやるんですか?つーか、僕さっきからずーっと黙って聞いてたけど、なんでこのプロジェクトを手伝わなくちゃいけないんですか?」
「それは先ほど博士も言ったように、世界平和の為です!タケルさんが世界を救うのです!」
「なんか、めちゃくちゃな展開になってきたなあ・・。」
「さ、そんなことは置いといて、とりあえず秋葉原に向かいましょうか。」
「ちょ、ちょっとまってくださいよ。僕もう疲れました。そんなにいそいでないんだったら、明日からでもいいですか?」
「そうですよね。一日でこの急激な変化と衝撃的な事実は疲れますよね。わかりました。今日は家に帰ってゆっくり休んでください。明日からの予定は、自宅のほうにFAXしておきますから。」
「やめてくださいよ!両親がいるんですから。そんなスケジュールなんて、まだないでしょ?電話とか手紙とかにしてくださいよ。」
「すいません、ちょっとテンションがあがっていたもので、つい焦ってしまいました。了解です。明日、直接タケルさんの自宅にお伺いしますね。」
「はい、そうしてください。」
「さーて、明日から忙しくなるぞー!!よっしゃーーー!!」
キリシマは顔に似合わずテンションが高い。そして、さらっと言ってたけど、毎週秋葉に通ってるのかよ・・。
このいかつい顔でメイド喫茶とか通ってるのか?この図体とこの顔にもメイドさんは平等に笑いかけてくれるのだろうか?・・・キリシマ・・・ちょっと気持ち悪い・・・。
帰りの車に揺られながらすっかり暗くなった外の景色をみつつ、僕はこれからのことも考えた。
僕はひょんなことからアイドルを目指すはめになってしまったけれども、本当になれるのだろうか?
確かに、自分でも可愛いと思えるタケミの美貌があればなんとかなるかもしれないけど、世界平和のためにアイドルになるというのはいかがなものか?
今まで、人類の歴史で世界平和のためにアイドルになったひとはいるのか?
いや、たぶんそんな壮大な理由でアイドルを目指すのは僕ぐらいなもんだろう。
まあ、もしもなれなくても仕方ないよね。芸能界はそんなに甘くないし。ごめんねって言えば、ある程度のところで開放してくれるでしょ。
とにかく、あの駄菓子屋に行ったおかげで僕の人生は大きく方向転換しちゃったなあ。これからも、まだまだありえない展開が待っていそうだけど・・・・・・とにかく今日は疲れた。
いつの間にか眠っていた。キリシマの「着きましたよ。」という声で僕は目を覚ました。
「では、明日。放課後におうちにお伺いいたしますね。今日はお疲れでしょう。おやすみなさい。」
「はい、よろしくお願いします。おやすみなさい。」
家に帰ると、母が心配そうに聞いてきた。
「タケル、こんな遅くまで何処行ってたの?あと、お母さんのお気に入りのスカート知らない?あれ、高かったのよねー。」
どうやら母はぼくよりスカートが心配だったみたいだ。平和な家庭だね・・。
そんな会話でも癒される。明日からのことを考えると気が重いけど、この家族に囲まれながら頑張っていかなくちゃ。
僕は階段を上って部屋に入ると泥のように眠った。夢の中ではキヨタとタクノに囲まれて逃げ惑う悪夢を見た。
おいおい、夢の中くらい休ませてくれよ・・。
そして次の日、僕は玄関で待っているキヨタやタクノ軍団を横目に学校へ向かう。彼ら、いつまであそこにいるつもりだ?君たちの待っているタケミはここにいるのに。それにしても恐ろしいのは飴玉の魔力。あっという間に男子生徒をとりこにしちゃうんだからなあ。
「おはよう、タケミちゃん!」
ケンタがにやにやしながらやってきた。
「おい、今日は変身しないのか?タケミちゃん、超可愛いぜ!正体がお前じゃなかったら、絶対惚れてた。いや、今でも少し惚れてるかも・・。」
「気持ち悪いこというなよ。僕にはその気はないぜ。」
「わかってるよ!冗談だって。でももう変身しないのか?あんなに可愛いのに。もったいないぜ。」
「それがさ・・・」
僕は昨日の研究所に行ってからの顛末を全てケンタに話した。
「なるほど・・。要約すると、お前が持っている飴はそこの研究所が作った飴で、ほかの人が舐めても効果がないと。そして、まだこの日本にはたくさんの超能力者候補がいるから、その人たちを探すためにお前がアイドルになっておびきだせ。ってことでいいんだな?」
「ま、まあ・・かいつまんでいえばそういうことかな。」
「そっかあ。お前は超能力者だったんだ。俺もその飴があれば女の子になれると思ったんだけどなあ。それより、お前アイドルになるんだろ!頑張れよ!まあ、タケミちゃんならすぐに芸能界でナンバーワンになれるよ。」
「おう、ありがと。本当はアイドルになんてそんなに興味ないんだけどな。」
「なに言ってんだよ!世界平和のためだろ!・・・なんで世界平和とアイドルが関係してんのか知らないけど。」
「そうだな。とにかく、やってみないとな。」
こうして僕はモチベーションを保って家路に着いた。キヨタやタクノはさすがに一日中待っているのが辛かったのか、姿は見えなかった。
そして僕がまた母のお気に入りのスカートをカバンに入れていると、玄関のベルが鳴りキリシマの声が聞こえた。
「タケルさん、お迎えにあがりました。」
「はあい。」
そういうと、僕は荷物をまとめて玄関に出た。するとそこには昨日とは明らかに違う胡散臭いいでたちの、えせ業界人みたいな格好のキリシマがいた。
「なんなんですか?その格好?」
「芸能界というのは舐められたら終わりなんです。だから、私も舐められないように業界人な服装で決めてみました。」
こっちのほうが絶対舐められる・・・・。そんな僕の不安を尻目に、キリシマは僕を車に詰め込んで発進させた。
「タケルさん、いやここからはタケミさんと呼んだほうがいいですね。・・タケミさん、今から秋葉原に向かうわけですが、アイドルというのは人目を惹きつけるのも大切なんです。そこで、まずは衣装を選びに行きますね。そして、衣装選びのポイントはイメージにぴったりのものを選ぶことです。私、昨日タケミさんが売れるにはどうしたらいいのか寝ないで考えました。」
キリシマは真面目だなあ。この人、本当に秋葉原が好きなのか、世界平和を願っているのかどっちかだな。
「私はタケミさんのイメージを定着させるには『キャッチフレーズ』が大切だと考えました。あややは「モーニング娘。の妹」みたいな、皆の心をぐっと掴むキャッチフレーズをつけるんです。」
「なるほど。」本当によく考えてるなあ。
「そこで私が考えた、みんなの度肝を抜くタケミさんのキャッチフレーズは・・・・・・・
つづく
どーも、ご無沙汰してました。申し訳ございません。本業のネタ作りとかに脳みそを持っていかれていたので・・。
さあ、タケルの芸能界修行編。おいらの進んだ道とはまったく違う秋葉原からのデビューを目指します。
誰もが一度は憧れる芸能界への道、タケルを生かすも殺すもあなたしだい!!
さあ、みんなの度肝を抜くような素敵なキャッチフレーズを考えてみてください。
よろしくお願いします!!
久しぶりの文章なので、文体はかなり変わってしまいました(汗)
また次回も文体が大幅に変わらないようにさくさく更新できるように頑張ります!