不定期連載小説「超能力少年タケル」 8 | 桜塚やっくんの見ないとがっかりだよ!! Powered by アメブロ

不定期連載小説「超能力少年タケル」 8

僕がタクノ達ファンを引き連れて家の前に行くと、玄関の前に黒いスーツに身を包んだ長身の男が立っていた。

男は僕を確認すると、ゆっくりこちらに向かって歩いてくる。

こんがり日に焼けた肌、薄いサングラスから覗いている切れ長の目はなぜか殺し屋とはこういうものだ。という異様なオーラを放っていた。

ぼくたちは危険を察知し少しずつ後ずさりしたが、その男はあっという間に間合いを詰め僕の腕をむんずと掴んだ。

こちらにいる全員、その状況についていけず凍り付いていると男はそのまま僕をひっぱり道の奥に止めてあるリムジンまで連れて行こうとした。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


僕は抵抗したが、姿が女だと体力も女の子みたいになるらしい。男はまったく気にせず僕を引いていく。

そして男はおもむろに僕の耳に顔を近づけてこう言った。


「おとなしくついてきてください。さもないと、ここで正体がばれることになりますよ。タケルさん。」


この男、僕の正体を知ってる!!確かに今タケルといった!

なぜだ?たった三日前に変身したばかりなのに、もう情報がもれたのか?ケンタか?それとも、他のだれかか?

そんないろんな考えが頭の中をぐるぐる回った。


「おい!お、お前!た、タケミさんをどうするつもりだ!!」


タクノが懇親の勇気を振り絞って、かなり遠いところから声をかけた。

男は僕に


「いろいろ面倒なので、正体をばらされたくないなら適当にごまかしてください。」


そうささやかれ、「大丈夫、この人は私の知り合いのおじさんなの。ちょっと用事があるからいってきます。」


と、僕はタクノとその他大勢のファンたちに言い残し、とめてあるリムジンに乗り込んだ。


「出してくれ。」


男が言うと、リムジンは音もなくすーっと動きだした。

僕は窓の向こうに見えるタクノ達を視線に入れながら、これからどうなるのかという不安に身を固めていた。

すると、男はサングラスを外しながら額の汗をふいてこう言った。


「ふう、先ほどは強引なまねをして済みませんでした。ああでもしないと連れ出せないようだったので。」


「こ、これからどこに連れて行かれるんですか?僕はどうなっちゃうんですか?」


僕があまりにもびくびくしているので、男は笑いながら


「大丈夫です。安心してください。あなたの身には危険はありません。安全第一でお連れしろと命じられてるもので。」


「そ、そうですか・・。で、なんで僕の正体を知ってるんですか?」


「それらの疑問には、到着してから説明があるとおもいますよ。あ、飴は出しておいてくださいね。あまり消費しないように。」


飴のことまで知っているのか!ひょっとして、あの飴を作っている会社関係の人なのか?でもなんで今更・・・飴なら小学校三年生から持っているのに・・。

などと小一時間考えているうちに、車は海沿いを走りはじめた。


「あそこです。」


男の視線の先には、二時間ドラマに出てくるような断崖絶壁があり、そのがけの上に灰色の壁をした巨大な立方体が見えた。

車がその巨大な建物の前にとまると、僕は男にうながされ車を降りた。建物の入り口の横には『港北サイキックアビリティ研究所』と書かれた看板があった。

サイキックアビリティ?なんだかよくわからないが、怪しそうだ。そして、僕達はその門をくぐって中に入った。


中はまるでSF映画に出てくるような、窓も何もない長ーい鉄のトンネルのような廊下が続いていた。

その廊下にカツーン、カツーンと二人の靴音だけを響かせながら歩いていった。


やがて、正面にある大きな分厚い鉄の扉のまえに男は立つと、扉の横についている電卓のようなものをピピピっと叩いた。すると正面の扉が下から上にシャッターのごとく開いた。


その扉の先に待っていた光景に僕は呆然としてしまった。そこには幕張メッセや有明展示場のような巨大な空間がひらけており、その天井高く積み上げられた工作機械や見たこともない最新機器などがところ狭しと並んでいて、その周りをたくさんの白衣を着た研究員らしき人々がめまぐるしく働いていたのだ。


「す、すげえ・・・。」


僕がその光景にみとれていると、奥の方から白衣を着た和製アインシュタインのような老人が近づいてきた。

その老人は僕の前に立つと笑顔になってこう言った。


「やっと飴を使ってくれたね、タケル君。長いこと待ってたんだよ。」


「あなたは誰ですか?ここはどこですか?何で飴のことを知ってるんですか?僕はどうなっちゃうんですか?」


矢継ぎ早の僕の質問に苦笑いしながら、その老人は言った。


「まあまあ、そう焦りなさんな。時間はたっぷりあるから。私の名前はドクターヒガノ。ここの研究所の所長じゃ。そして君を連れてきたこのこわもての男はキリシマ。私のアシスタント兼ボディーガードをしている。もし、荒っぽいところがあったら許してやってくれ。キリシマは悪いやつじゃないんじゃが、少しおっちょこちょいでな、ついガサツになってしまうのじゃ。」


すると、その男キリシマは顔に似合わずテレながら頭をかいた。


「さて、何から話そうかの・・・。おおそうじゃ、タケル君飴は持ってきたかのぉ。」


「はい・・。」


僕はポケットから飴の入ったカプセルを取り出した。


「おおそれじゃ。それにしても、何年もよく使わないでとって置いたのう。実はその飴は、ここの研究所で開発した飴玉なのじゃ。」


「えっ・・」


「ここは港北サイキックアビリティ研究所。つまり超能力開発を専門に行っている極秘機関なのじゃよ。昔から人類は脳のたった10パーセントしか使っていないのはご存知かな?

その脳の残りの90パーセントの中にはきっと人知も追いつかぬすごい力が眠っていると考えられてきた。

その力を科学の力で引き出し、人類の役に立てようというプロジェクトが20年前に起ちあがった。

それがこの研究所なのじゃ。わしを始め、世界中の名だたる専門家がこのプロジェクトにたずさわり、七年前遂に超能力の開発に成功した。

その能力とは、君も知っているとおり人類が所有する男性ホルモンと女性ホルモンを瞬間的に逆転させ、性別まで変えてしまうという素晴らしいものだった。

その能力を得るためにはOTON700という液体を体内に入れ続けなければならない。つまり、OTON700の供給をストップするとたちまち元の性別に戻ってしまうというわけじゃ。

そこで、この液体を飴玉にして摂取し続けることによって、超能力の維持を成功させたわけなんじゃ。」


「はぁ・・。」


僕は一気に話されて、半分くらいしか理解していなかったけど、生返事をしておいた。博士はさらに続ける。


「しかもこの能力はマウスではほぼ完璧に成功したものの、人類ではまだまだ成功例は少なかったのだ。どうやら、このOTON700は選ばれたごく少数の人間にのみ効果があるとわかった。

そこで、研究所で極秘裏に会議をした結果、この飴玉を目の届く範囲で配布し、その中から性別転換する能力者をさがすことになった。」


「で、僕が選ばれたわけですね。」


「そう、まさに君だった。我々は、君の他にも数十人にこの飴玉をガチャガチャの機械を通して渡すことに成功したが、変化が表れたのは君だけだった。しかし、君はまだ若くその能力に怯え上手く使えないままこの年まで大きくなってしまったのだ。我々も再び自分の力で能力を発動する日が来るまで静観することに決めた。

そしてついに先日、君は飴玉の能力によって再び女の子になったのだ。

そしてここに連れてこられた。というわけなのだ。わかってくれたかな?」


「うーん、なんとなく理解できました。でもなぜ連れてこられたのですか?この能力で人類の役に立つ働きができるとは思いませんが・・。」


「いや、実は君にしか出来ないことがあるんだよ。おい、キリシマ。サブロウ君を呼んできてくれ。」


「かしこまりました。」


そういうと、キリシマは研究所の奥に消えた。


「おお、そうじゃ。カプセルを貸してくれるか。」


僕は握り締めていたカプセルをドクターヒガノに渡した。

博士はカプセルの中を確認すると、


「ほほう。そろそろこの飴もなくなりそうじゃの。ほれ、追加の飴じゃ。」


そう言うと博士はポケットからドロップの缶を出し、僕に渡した。


「そこに、この飴と同じ飴が数十個入っている。なくなったら、また言ってくれたら用意するぞ。」


「あ、ありがとうございます・・・。でも、なんかこの飴を使ったせいで僕のまわりが変な事になっているんです。だから、正直この飴をもらってもあんまり舐めたくないんです。すいません。」


「舐めたくない?君は他の人間には真似できない超能力を持った人間なんだぞ?選ばれた人間なんだぞ?・・・むーん・・まさかそういう気持ちになるとは・・やはり人間の気持ちが一番奥深い・・。」


「でも、一応もらっておきますね。・・・で、僕は一体どうしたら・・。」


そこに、キリシマが一人の男をしたがえてきた。


「博士、お連れしました。」


「うむ、ごくろう。タケル君、紹介しよう。こちらはサブロウ君。君とは違う超能力者だ。」


紹介された男はゆっくりとおじぎをした。見た目は20代後半で体型はずんぐり、顔はどんぐりまなこで太い眉毛をした少々田舎臭い雰囲気をかもしだしている、どことなく憎めない感じの男だった。


「はずめまして。サブロウだす。君がタケル君かえ。今後ともよろすくな。」


するとその自己紹介に付け加えるように博士が言った。


「このサブロウ君もこの研究所で開発したたくさんの能力の中のひとつを使える男なのだよ。彼はここの研究所員で、飴の実験を何度も受けてるうちに能力が発動した、所内では唯一の人間なのだよ。ちなみに、彼の能力は・・。」


「今からお見せしますだ。」


そう言うと、サブロウと名乗る男は青いカプセルを取り出し口に入れた。


「タケル君みたいなカッコいい能力じゃなくて恥ずかしいけど、みてておくれな」


そのサブロウの意外な超能力とは・・・・・




                               つづく





さて、自分でも予想がまったく予想がつかない意外な展開!!

新しい登場人物もたくさん出てきて、学園モノから大幅に壮大なスケールになってしまいました。

正直このまま書き進めるのが怖くなってくるよね・・。


一度は消えたこの話、皆さんの励ましのおかげで、再び書く元気をいただきました。

今回はちょこちょこ下書きしながら書いたので、消える心配もなくなりました、ありがとです。


さあ、いよいよ新しい能力者の登場だ!はたしてこのサブロウ君の能力とはいかなるものか?

そしてこの小説のゴールは??


まだまだ続きそうなこの小説を盛り上げ、引っ張っていくのは、皆さんの書き込みだけでございます!!


なにとぞ、おいらに力を!!