不定期連載小説「超能力少年タケル」 7
「この人は俺の姉ちゃんで、ケンタのお姉さんの友達なんだよ。昨日はケンタのおねえさんへのプレゼントを買いに行ってただけなんだよ!」
人というのは嘘をつく生き物である。最初についた嘘を隠すためにさらに大きな嘘を塗り固めていく・・。
僕はもう、こういうしかなかった。ケンタには迷惑をかけられないし、自分の身も可愛い。
キヨタの憤怒は抑えられるかもしれないが、これでクラスで目立たない存在だった僕は注目の的になるだろう。
「絶対タケミさんはこいつと付き合ってないんだな?」
キヨタがしつこく確認してくる。
「そうだよ。ケンタのお姉さんと、うちの姉ちゃんは昔から仲良しなんだよ。昨日はケンタに頼まれて買出しにつきあっただけだよ。なあ、ケンタ。」
「え?ああ、そうですよ。俺、タケルのお姉ちゃんにプレゼント選びについて来てもらっただけっす。」
突然の設定に多少とまどいながらも、うまく口裏を合わせてくれた。ほんとケンタはアドリブのきく男だ。
「ふーっ。それならいいが・・・・おい!ちびメガネ!!ガセネタを記事にしてんじゃねえ!!」
キヨタはタクノに拳骨を一発くらわせると、新聞を丸めて教室を出て行った。
すると、こんどはクラスの皆が僕のまわりに集まってきた。
皆口々に、「この人おまえの姉ちゃんだったの?」「紹介しろよ!」「名前は?」と質問をあびせてきた。
ああ、これだから面倒なことは嫌なのに・・・と思いつつも、僕自身いままでクラスの話題の中心になったことなどなかったので、少しだけいい気分だった。
「いてててて・・タケル君。そういうことはもっと早めに教えてくださいよ。おかげで、スクープがガセネタになってしまったじゃないですか。」
キヨタに打たれた頭をさすりながら、タクノは続けた。
「でも、タケル君にこんな素敵なお姉さんがいたとは知りませんでした。これは凄い事ですよ!お姉さんは必ず人気アイドルになれます!今日の放課後、早速取材させてもらいに行きますからね!」
何を考えてるんだこの男は!そんなのダメに決まってんだろーが。絶対正体ばれちまう。
うちの母ちゃんに会ったら、タケミは僕の彼女って言い出すだろうし・・。
クラスの大半の男子も行きたそうに僕を見ている。来られても困るよ・・。
「さあ、どうなんですか?行ってもいいですよね?いや、ダメっていっても押しかけますよ!もし取材拒否なんかしたら、毎日家の前に張り込んで・・・」
「わかった、わかったよ。取材でもインタビューでもなんでもすればいいだろ。でもうちは家族もいるし、そこでガヤガヤされるの困るから放課後三つ池公園で待っててくれ。そこに姉ちゃんを連れてくからさ。」
いきおいとは言え、また変な約束しちゃったなぁ。僕はクラスの騒ぎが沈静化してからも一人で反省していた。昔から僕は強い押しにはついしたがってしまうところがあるのだ。
放課後、帰り支度をしているとケンタが部活の荷物を抱えてやってきた。
「おい、タケル。本当に公園で取材なんか受けるのかよ。」
「仕方ないだろ。約束しちゃたんだし、うちに四六時中張り込まれるよりかはマシだよ。」
「そっか、俺は行けなくて協力してやれないのが歯がゆいけど、うまくやれよ!」
「ああ、大丈夫。どうせすぐ終わるよ。」
そう言うと、僕は荷物を抱えて教室を出た。
さて、どうする?直接公園に行くか、一度家に帰るか。一応もしもの為にスカートは持ってきている。
ここで家に帰って人がいたらまたごまかすのが面倒か・・。でも、カバンは僕のだし、このまま行ったら怪しまれるか?いや、ここは一応戻ろう。ちゃんと家からタケミが出てこないと、急に自然発生したみたいになっちゃうからな。
僕はそんなことを考えながら、家の前まで来た。すると玄関の前に数人の男の姿が。どうやらタケミが出てくるのを待っているらしい。なんだよ、もう情報はそこまで回ってんのかよ。
それにしてもタケミってすごいな。僕が学校で注目されないのと反比例してもうこんなに話題になってる。
僕はこのギャップにひとりほくそ笑んだ。だが、ここで家に帰るとタケミになったときに足止めされたりからまれそうなので、僕は予定を変更して変身することにした。
とりあえず変身できる場所を探し、コンビニのトイレへ。着替えてから飴を舐め女の子に変身。
荷物をまとめて出てきた。レジの店員さんは不思議そうな顔をしていたけど、なんとかのりきれたみたいだ。
そして、待ち合わせの三つ池公園。この公園は入り口が3っつあり、休日になると家族でキャッチボールや子供たちがサッカーなどをして遊べるような広い公園である。園内にはその名の通り小さな池が三つあり、それぞれそこに生息する生物から名前を取って、「鯉が池」「亀が池」「蟹が池」と呼ばれている。蟹が池に関しては、本物の蟹がいるというわけではなく、ザリガニのカニから取ったものらしい。この三つの池に囲まれたちょうど真ん中にちょっとしたステージのある広場があり、花見のシーズンになるとその広場は宴会のシートで埋め尽くされる。
今日のタクノとの待ち合わせはその広場であった。
僕は鯉が池の横を歩きつつ広場に向かった。角を曲がって木々がなくなり視界が開けた瞬間、僕は自分の目を疑った。
僕の目線の先には、広場のステージを囲んで百人以上の学生がカメラを片手に芝生に座って騒いでいる姿だったのだ。ステージのかぶりつきでは、タクノのすがたも見える。
なんだ?この人だかりは?・・・もしかして僕を待ってたのか!?
タケミの姿の僕は、目の前の光景に圧倒されながらも恐る恐るステージの方へ歩みを進めていった。
そんなタケミの姿に気づいた一人の生徒が「ついにお出ましだあぁーー!」と声をあげた。
すると、皆いっせいに僕の方を振り返りタケミを確認すると、ヒャッホーー!と大きな歓声と拍手で迎え入れた。
僕は一人の生徒に案内されるがまま、ステージの上に立たされた。
なんだか、いつの間に凄い人気になっているな・・。たぶんこの男子たちは、今日の新聞を見て気になり、タクノにここで取材することを聞いて集まったのだろう。それにしても、こんな状況になるとは予想もしてなかった・・。公園のベンチに座ってタクノと二人で話すものだとばかり思っていた。
「えー、ただいまより、わが新聞部が発掘しましたこちらの美少女の記者会見を行います!」
タクノが急に立ち上がり、後方の集団に向かって高らかに声を発した。イエーーーイ!!とその場にいた全員手を上げながら食い入るような視線を僕にぶつけてくる。
なんか、異様な宗教みたいになってるな・・・。この状況を意外にも楽しんでいる僕がいた。
タクノはそのまま取材に入った。
「まずはお名前から聞いてもよろしいですか?」
「えーと、タケミって言います。」
よっ!タケミちゃーん!後ろから野次が飛ぶ。それを他の生徒がたしなめる。
「わが校のタケル君とは兄弟だとお伺いしているのですが、それは真実ですか?」
「はい、そうです。ここへは、弟に来るように言われたんですけど・・。」
「大丈夫です。新聞部の取材ですから。・・えー、ではタケミさんはいまおいくつですか?」
「15です。」
「ということは、現在は中学三年生でよろしいですか?」
「はい。」
「学校はわが校と同じ末吉に通っておられると?」
「えーーっと・・・・それは・・・(どうしよう・・違うということにしておいたほうがいいか?)・・ち、違います。」
「では、どちらの学校で?」
「えーっと、私最近留学から帰ってきたばかりで・・まだ編入手続きしてないんです。だからまだどこにも・・。」
「なるほど。しかし、僕が撮影したカメラにはわが校の校門から出てくるあなたの姿が写っていましたが。そもそも、その写真が本日のような反響を呼んでいるのです。そこのところはいかがですか?」
「学校に行ったのは、弟の忘れ物を渡しにいったときだと思います。それ以外は行ってないので。」
「ちなみに、現在お付き合いされてる方は?」
「いえ、特には・・まだ日本に帰ってきたばかりなので・・。」
「そうですか。ありがとうございます。・・では、いよいよ本題に移りたいと思います。」
そういうと、タクノはメガネをキランと光らせた。
まだ本題じゃなかったのかよ。何か人も多いし、疲れるなあ・・早く終わらせてくれよ。
すると、タクノと後ろの男子全員がおもむろに立ち上がりいきなりこんなことを言った。
「では、タケミさん!ずばり言ってしまいます!僕たち、あなたのファンになってしまいました!!ファンクラブ結成、認めてください!!よろしくお願いします!!」
「よろしくお願いしまーーーーーーす!!」
全員で深々と頭を下げてきた。何なんだ?これは?一度写真を見ただけの女の子のファンになるものなのか?
それとも、一度見た男を虜にしてしまう、これもこの飴玉の能力なのか?そういうことなら納得できる。男が女になってしまう飴だもの、惚れさせる能力があってもおかしくないな。
なんだか、おかしな展開になってきたぞ。やっぱり、この飴はあまり使わないようにしておかないとね。
とりあえず、どうぞご自由にとその場に一言言葉をかけて僕は帰ることにした。
途中で着替えようと思ったが、なんとファンの男の子たちがあとからぞろぞろついて来る。まるでバスガイドと団体旅行客みたいだ。このままでは、変身をとくタイミングが無い!どうしよう・・。
どうせ家もばれてるし、こうなったらこの姿のまま家に帰るか・・・。
タケミ御一行様はそのままタケルのいえの前まで来た。するとそこには、一人の男がたたずんでいた。
その男とは・・・・・
つづく
新たに加わった飴玉の能力!そして急遽表れた男の正体は?
なんか、自分でもまったく今後の展開が読めなくなりました(汗)。
それも全て皆さんの書き込みのおかげでございます!!
いやあー脳みそを使うのはいいことですね。たぶんこのまま続けていけたら、文章力は確実にアップするね。
いろいろなことに今後もチャレンジしていきまっす!!