不定期連載小説「超能力少年タケル」 2
その能力とは一言で言うとズバリ!
「飴玉を舐めているときだけ女の子になれる能力」 である。
この能力に気づいたのは、その日の真夜中。窓を開けっ放しで寝ていたため、僕はやぶ蚊の格好の餌食になっていた。
しこたま刺された僕は、あまりの痒さに目を覚まし、時計の針を確認すると用を足しに一階のトイレに向かった。
そう、その後は皆さんのご想像通りである。
パジャマのズボンとパンツを同時にずり下げ、いざ用を足そうと右手を股間に持っていく・・・・。
「ぎゃああああーーー!!な、ない!ないよおおおおーーー!」
夜中にも関わらず、僕はあまりの衝撃にわれを忘れて叫んでいた。
その勢いで尻餅をつき、口の中に入っていた溶けかけの飴玉が床に転がり落ちた。
すると、その騒動にあわてた両親がドタドタと駆けつけ、何事かと僕の顔を覗き込んだ。
「おい、タケル!どうした!」
「何がなくなったの?」
「ち、ちん・・・・。」
二人はまくし立てるが、僕の耳には入ってこない。口をパクパクさせるのが精一杯だった。
「とりあえず、何もなかったみたいね。」
「寝ぼけてないで、とっとと寝なさい。」
二人はぶつぶつ言いながら寝室に戻っていった。
僕は、気が動転しながらももう一度股間を確認した。
「あ、あったあー!」
先ほどは自分の股間のシンボルがなくなったと思っていたけど、今はしっかりとあるべき場所に付いている。
きっと父の言うように寝ぼけてたんだな。
そして無事に用を済ませ、トイレを跡にしようとしたとき、床に転がっている飴玉をみつけた。
「なんだよ。ひょっとしてこの飴のせいで変な幻覚見たんじゃないか?」
ぶつくさ言いながら、飴玉をトイレットペーパーに包みゴミ箱に捨てた。
一連の騒動ですっかり目を覚ましてしまった僕は、部屋に戻ってもなかなか寝付けなかった。
ふと、先ほどの飴玉の事が気になって、机の上に転がっているカプセルを見た。
さっきは気づかなかったが、カプセルの内側にうっすらと文字が書いてある。
{ちょうのうりょく このあめをなめると おとこのこはおんなのこに おんなのこはおとこのこに なれるよ}
まさか・・・。
そんなマンガみたいな飴玉あるわけないだろ!・・と、普段なら馬鹿にして終わりだが、今の僕は違った。
それなら、さっきの事件にも説明が付く。
でもまてよ、本物の超能力カプセルだったら、なんであんな寂れた駄菓子屋に置いてあるんだ?
いや、これはきっと夏休みにまじめに遊んでいた神様からのご褒美だ。
そんなわけない、さっきのは見間違いだ。今は付いてるし・・。
などと一人で葛藤していたが、結局は原因であるところのあの飴玉をもう一度なめてみる事にした。
「うえっ。そういえば、ゴミ箱に捨てたんだよな・・。まあいっか。」
トイレ脇のゴミ箱に飴玉を取りにいくと、洗面所で丹念に洗って部屋に持ち帰った。
「もしもまたこれを舐めてちんちんがなくなったら、すごいぞ!よし、実験開始。」
とは言ったものの、舐めたあとにずっと女の子のままだったらどうしよう。
野球の仲間にいれてもらえないかも・・。
スカートはくのかっこ悪いな。
なんていう、小学生ならではの不安もあり飴を口に入れる勇気がなかなか出ない。
ベッドの上で一時間悩んだ末、女になってもいいか。という変な悟りをひらき、飴玉を口に放り込んだ。
すると、なんということだ!!
僕のおちんちんがみるみる小さくなっていくではないか!!
「やばいやばいやばいやばいい!ぺっ!」
急いで飴を吐き出すと、ちんちんは元の大きさに。
「すげえええええ!これ、本物だ!女になっちゃう!」
まだ、この頃の僕は男と女の違いを、ちんちんの有る無いのみで判断していた。
ゆえに、この飴玉はちんちんを無くす飴玉だと思っていた。
僕はしばらく興奮していたが、やがて冷静になるとこの飴玉の有効な使い方を考え始めた。
「うーん・・。凄いんだけど、どうしよっかなあー。友達に見せたら、おかまだって馬鹿にされるに決まってるし。
女の子には見せらんないし。もっと、ましな力がよかったなぁ。」
がきんちょの僕にはとてもその能力を使いこなせる知恵はなく、そうそうに諦めて食べかけの飴玉をカプセルに戻し、引き出しの奥にしまった。
次の日、また暑い日ざしの中を僕は右手に今日のお小遣いの100円玉を握り締め、あの駄菓子屋に向かった。
目的はもちろん例のガチャガチャである。
ガチャガチャとは元来、いろんな景品が詰まったカプセルの中身を楽しみに開ける遊具だ。
したがって、あのガチャガチャには{おんなのこになれる超能力}以外にも、たくさんの超能力が入っているはずなのだ。
本当はありったけのお金を用意してカプセル全てを買い占めたかったが、貯金は先月新作のゲームソフトを買ってすっからかんだし、当然お小遣いの前借りなども認めてもらえないので、100円しか用意できなかったのだ。
友達を誘っても、信じてもらえないという不安より、金持ちの買占め好きに独占されるのが嫌だったのだ。
これは僕だけの秘密だ!
駄菓子屋に到着すると、まずは店の中を確認。他の仲間がいると買いづらい。
タイミングがよかったらしく、店は静まり返っていた。
「こんにちはー。」
声をかけて、目的のガチャガチャの方へ。しかし、そこにあるはずのガチャガチャの影はなく、うまい棒のダンボールが積み上げられているだけだった。
「あれ、ばあちゃん、ここにあったガチャガチャは?」
「ああ、あれなら、期限が切れたから業者に持っていってもらったよ。」
「ええーー!?もうないの?」
「二ヶ月だけ置かしてくれっていう期限付きの約束だったんだよ。まあ、こっちは貰うもん貰ったし中身が売れようが売れまいが関係ないけどね。」
「なんだぁ。残念。あーあ、なんかやなかんじ。」
「まあまあ、もうすぐロボット9ちゃんの新作入るから、またおいで。」
僕はちょっと落ち込んだが、すぐに気持ちを切り替えて駄菓子を100円分買うことにした。
すると後ろから、「おータケル。ここにいたのか。野球しよーぜ。」
「おう、すぐいく。」
僕は、友達のケンタに誘われるまま末吉公園へ野球に向かった。
その日はバッティングが冴えに冴え、ホームラン三本の猛打賞。
有頂天になった僕はカプセルのことなどすっかり忘れ、家に帰ってからも父と母に得意げに今日の活躍を話した。
それから数年、カプセルは引き出しから出てくることは無かった。
高校生の僕は、窓からの心地よい風を受けながら数年ぶりにカプセルを見つけて使ったときのことを思い出した。
まさか、あの飴玉を使ってまともに女になったのがあんな場所だったとは・・・。
その、意外な場所とは・・・
つづく
さあ、連載第二回、早くも文体がめちゃくちゃになってきました。
たくさんの書き込みありがとうございます。まさか女の子になるとは思ってもいませんでした。
女の子になるというアイデアと、飴を舐めてるときだけ変身するというアイデアは別々の方の書き込みでしたが、まとめて使わせていただきました。
ありがとうございます。
というわけで、次の書き出しの一行も皆さんに考えていただきたいと思っております。
タケルははたしてどこで最初に飴玉を舐めるのでしょうか?
それは皆さんの書き込みにかかっています!
どうぞ、よろしくね!