不定期連載小説「超能力少年タケル」 1
僕は選ばれた人間だ。
よく田舎のヤンキーがコンビニにたむろして「俺は選ばれたすごい奴だ!」などと叫んでいるが、あんなものとは当然次元が違う。
そう、僕には人には言えないすごい秘密がある。
この秘密の話をするまえに、僕の生い立ちを少しだけ話そう。
「池上タケル」これが僕の名前だ。
神奈川県の工業地帯に生まれ、毎日排気ガスや光化学スモッグをしこたま吸いながらすくすくと育った。
家族は典型的な核家族で、製鉄所に勤める父と、給食センターにパートで通う母と三人で暮らしている。
父は無趣味な人で、仕事以外に熱中できることといえば仕事の後の晩酌くらいだった。
母はそんな父を支えていくのが生きがいの、これまたおしとやかな女性だった。
こんなごく平凡な家庭に育った僕は当然ぐれる事もなく、クラスでも目立たない存在だった。
僕が通う高校は工業地帯から少し離れ、小さな商店街をぬけた閑静な住宅街の端にあった。
現在はこの「末吉高校」三年D組の教室で窓際にもたれながら、校庭で行われている体育祭の予行演習をボーっと眺めている。
「あーあ、面倒くせ。」
いつの頃からか、口癖になってしまった。
自分にはすごい能力があるにもかかわらず、それを使えていないことや、人に言えないジレンマからか、高校生活が面倒になってきているのだ。
「こんなところでくすぶってる場合じゃないんだけどな・・・。」
僕は目線を校庭からゆっくり上空に移しながら、この能力を手に入れた時の事を思い返した。
そう、すべては小学校三年生の夏休みから始まった。
夏の暑い日ざしにアスファルトから白い湯気が立ち上る午後、僕は親からもらった100円玉を右手に握り締め、いつも近所の悪がき連中が集まる駄菓子屋に走っていた。
当時の僕には100円は大金で、このお金で一日の娯楽のすべてをまかなっていたので、使い道にはかなり慎重になっていた。
大抵は、みんなにあわせて10円や20円のお菓子をいくつか買って、少しずつ消費していた。
タンクトップの露出した肩に日差しを感じながら、陽炎でゆらぐ駄菓子屋に走りこむ。
「こんにちはー。」
いつものように店の奥にいる動かずのばあちゃんに声をかけて、狭い店にぎっしりと並んだ駄菓子たちを物色しはじめる。
普段は必ず悪がきの一人や二人いて動かずのばあちゃんをからかっているはずなのだが、今日はなぜか人の姿はない。
そんな、ちょっと違う雰囲気のせいか、今日は店の奥まで入ってみたい衝動にかられた。
この駄菓子屋は、入り口の方に売れ筋の商品をおいているので、みんな奥にはめったに入らないのだ。
「ばあちゃん、いるー?」
ばあちゃんの様子を伺いながら、壁にかけられている見たこともない商品をながめていた。
奥の商品はほとんど出入りが無いらしく、ほこりまみれだ。
「なんだこれ?売る気あるのかな。」
いつの時代かわからないレトロなプラモデルなどを見ながらフラフラしていると、肩に何かがぶつかった。
それは、ガチャガチャの機械だった。ほこりにまみれて、ガラスケースの中身がほとんど見えない。
「こんなとこにもガチャガチャ置いてあんだ。外に並べればいいのに。」
そう、当時ガチャガチャにはみんな夢中で、当時人気のあったロボット9ちゃんの消しゴム欲しさに、一回100円のガチャガチャに大金を投入するお金持ちの少年もいるくらいだった。
僕はお金にそんな余裕は無く、友達の消しゴムをながめているだけで精一杯だった。
そんなわけで、ガチャガチャには興味があったものの、まだ一度も買ってみたことはなかった。
「ん?超能力カプセル?」
そのガチャガチャ機械のほこりをはらうと、ケースに派手な文字でそう書かれていた。
「ねえ、ばあちゃん、何このガチャガチャ?何でこんなところにあるの?そとに置けばいいのに。」
「なんか、白い服着た業者が、奥でいいから置かせてくれっておいてったんだよ。まったく。」
「ふーん・・これであなたも超能力者に!?ほんとかね?これ、怪しいんじゃないの?」
言ってはみたものの、心はなぜかすでに買うことを決めていた。
まるでその機械に吸い寄せられるように、握り締めた100円玉をコインがはまる隙間に差し込んでいた。
ガチャリ、ガチャリ。
手前のハンドルを右に回すと、下のカプセル取り出し口にコロンと真っ赤なカプセルが顔を出した。
そのカプセルを手に取ると、猛烈な後悔の念が襲った。
「ああーっ。何でこんな変なの買ったんだあ。」
一日の唯一の楽しみである100円をこんなほこりまみれのガチャガチャに使うなんて・・・。
せめて、ロボット9ちゃんの消しゴムを買えばよかった・・。
それでも、100円もするカプセルなんだから、中にはひょっとしたらすごい物が入ってるかもしれない。
そんなわずかな可能性にかけて、僕はカプセルを開けた。
そこには、真っ赤な飴玉が一粒。しかもすすけて、いかにも美味しくなさそうなフォルムでころがっている。
「うそだろーーーっ!!?これだけ?」
僕は100円の使い方に一人落ち込みながら、とぼとぼと家に帰った。
勉強机の上に赤いカプセルを投げ出して、居間に行くといつものようにテレビのお笑い番組を見て母が帰ってくるまで時間を潰した。
夕食を済ませ、風呂に入り、「宿題は終わったの?」というお決まりのフレーズを背中にうけながら、僕は自分の部屋に戻った。
「あーあ。今日は何にも楽しいことなかったな。・・・・・でも、あれって何だったんだろ。」
後悔しているとはいえ、やはり100円もしたあのカプセルの飴玉が気になる。
「たしか、超能力がどうとか言ってたな・・・。」
机の上に無造作に転がっているカプセルを取ると、中の飴玉を手に取り勉強机のライトに透かして見た。
飴玉はぼんやりと鈍い赤みを帯びていた。
「超能力かあ・・・。欲しいけど、本当にあるのかな・・。」
その当時超能力は休日のゴールデンで特番を組まれるようなすごい人気だったが、実際出てくる超能力者は、スプーンを曲げたり、封筒の中身を予言したりするマジシャンくずれがほとんどで、アニメに出てくるような空を飛んだり、瞬間移動する超能力者は皆無であった。
そんなことをぼーっと考えながらベッドに寝転がり、その飴玉をそっと口にほおりこんだ。
「たいして美味しくないな・・・。」
そしてまた、テレビにでている超能力者のことを考えながらいつのまにか眠りについていた。
・・・・そう、その日から、僕の能力が開花したのだ。
あんなテレビのインチキ超能力者とは違う、本当の能力を手に入れたのだ。
ただ、その能力は想像もつかないような途方も無く中途半端な能力だったが。
その能力とは一言でいうと、ズバリ!・・・・・・・・・
つづく
さて、ここで皆さんに提案です。
この小説は「読者参加型小説」にしたいのです。
どういうことかというと、この「つづく」につながる一行を皆さんに考えていただきたいのです。
コメントのタイトルに、その続きの一行を書き込みしてください。
その中から一番合うものを選んで、物語のつづきを書いていこうと思っております。
あなたの書き込みが、タケル君の人生を作っていくのです。
おいらにも今後の展開が全くわかりません。
是非独創的なアイデアでこの物語を盛り上げてくださいませ!
なお、不定期連載なので、なかなか筆が進まなかったらごめんなさい。
皆さんの参加、心よりお待ちしています!!