学校というところは、悪いことしてしまった。また、人を怪我させたり、心を傷つけてしまった子に対し、「罰」を与える権限はそもそもありません。あるとすれば、家庭裁判所だけです。


そういう意味では、「出席停止」や「別室での対応」は罰ではありませんが、そうとられることの方が多いと思うので学校が判断することには馴染まないと思います。そして、前回お話ししたように、学校のマンパワーでは、どちらの対応も現実的ではないのです。

結果、法律があってもなくても、いじめの指導は、学校で指導をし反省させ、謝罪させる。ということが一般的な流れです。


法律が悪いわけではないのですが、加害側の子どもにそのような措置をそられるとしたら、「認めてしまえば大変な事になる」という圧力がかかるので、頑なに「やっていない」とか、「相手も悪いんだ」とかえって非を認めにくくなります。

「確固たる証拠や証言」とか、殴られたあとがあれば別ですが、被害者が嫌な思いをしたと言ったくらいでは、

相手が認めない可能性もあるのです。

親御さんも自分の子を守るのに必死になるので、「やってないと言ってるじゃないか」「学校は犯人扱いするのか」「それだけいうのなら確固たる証拠を出せ」などと抗議されると、学校は尻込みしてしまうこともあります。

そうなると、いじめは極めて指導しづらくなります。


フランスや韓国ではいじめの加害者には厳罰に処す。転校させる。という処罰があるので、日本でも厳しくするべきだ。

という意見もあります。心情的にはわかりますが、そもそも日本の少年法では14未満の子供の犯罪は処罰を受けません。

また、14歳を超えていたとしても、それが犯罪にあたるかどうかは、最終的には裁判所しか判断できません。

そう考えると、いじめは犯罪だから、全て厳罰に処す。というにはほとんど不可能です。


少し悲しい話になりますが、明らかにいじめで自死した事案があり、その加害者が14歳を超えていた場合、学校は警察や児童相談所への通告をしますが、警察が家裁に送検するかどうかは警察に委ねられるし、児相は、更生プログラムを受けさせるなどの処罰ではなく支援をします。結果、被害者が自死したような事案であっても、犯罪として少年院で数年間過ごさないといけなくなった子はごく一部です。

まず、少年鑑別所送致となり、数週間、鑑別を受け、その後、児相で更生プログラムを受けることが多いです。

ましてや、被害者が傷ついたり、苦痛を感じたとしても、日本の法律では、厳罰に処すことはないと言っていいと思います。


じゃあ、被害者は泣き寝入りか!こんなに傷つけられ、長い間苦痛を受け、学校にもいけなくなったのに、

加害者は笑って学校生活を送っている。おかしいじゃないか!


そうです。おかしいのです。苦しみが報われず、名誉も挽回できず、悔しさや悲しさを抱え、癒されたいまま生きていかねばならない、

こんなに理不尽なことはありません。でも、これが今の現実です。


いじめ法を実行あるものにするために、運用の改良が必要です。

そうしないと「被害者に寄り添って守り抜く」という理念は、「絵に描いた餅」なのです。


まず、学校がいじめを認知した場合、時系列で事案を説明する報告書を所轄の市教委に送ります。

ここで、小中学校を管轄する教育委員会が「通常の学校生活を送らせて良い」「学校への一時的な出席停止」「別室で短時間過ごさせる」

「児童相談所通告」「警察通報」の5段階の措置を学校に指示すればいいことです。


そして、「出席停止」措置にした場合は、学校からプリント等に課題は出しますが、家庭訪問等はなし、保護者が責任を持って監督する。

「別室対応」の際も、同様とすれば、一気に解決します。


なんで親がそんなことまで、、、と言われるかもしれませんが、「教育基本法」には、「子どもの責任は第一義的には親にある。」と定められているので、我が子の過ちを一緒に見守り反省し、これからに生かす責任は親にあるのですから、これくらいのことはしなくてはいけないと思います。


このシステムを構築することで、現いじめ法が効力を発揮します。

私は、いじめ法の理念を貫くのであればこうする方法が一番適切だと考えます。


被害者も加害者も大切な子どもと考えるのであれば、学校の立場を尊重して、関係機関が一層連携した取り組みが必要だと思います。