前回、不登校の主要因になったケースが2種類の文科省調査で、0、2%と約30%と大きら開きがあることに触れました。これは4年前の調査ですが、このことは指摘されることなほとんどなく、スルーされていることです。

調査の主体は同じ文科省です。何か違うかと言えば「回答者」です。「学校」か「当事者(子ども)」です。

なぜ、このような開きが出るのか?

私は教育委員会にもいたし、学校のもいたので少しわかります。

 

特に、「学校」が回答者の場合です。

世間的には、「いじめを出したら校長や教員の評価が下がるから隠蔽したいのだ」とか、「学校の評判が悪くなと困るので少なく報告しているんじゃないか」などの憶測が強くあるように思います。

 

実際には,「いじめ多く発生したから先生方の評価が下がる」ということはありません。もちろん、責められることもありません。

逆に、生徒の様子をちゃんと見ていじめを認知できているという良い評価がつく方が圧倒的に多いです。

また、学校に評判が悪くなるのは、決して喜ばしいことでないですが、悪くなったからと言って、給料が減るわけでもないし、

生徒が他の学校に行ったとしても、特段、責められるものではないのです。

 

よく、学校と教育委員会がいじめを隠蔽した。という話を聞きますが、私は隠蔽するメリットは何もない。と思っています。

では、なぜ、いじめを認めなかったり、学校が嘘の報告をしたり、第三者委員会の調査結果を受け入れなかったりするのか?

ケースによって違うため、説明はできませんが、ただ一つ言えるのは、「加害者と言われる側の大人集団と被害者の大人集団の主張のぶつかり合いが学校や教育委員会という行政を通じて起こっている」ということだと思います。

裁判も視野に入れながら、対応することが3者に出てきますので、主張がこんがらがってしまったり、口を閉ざす、あるいは、事実を認めない。ということが出てきます。

そうなると時間もかかることになり、一番、心理的に苦しく、時間が経つほど、事案の重さが薄まっていく事を感じる被害者及びそのご家族なのです。

 

実際の学校のいじめ指導は難しいです。法律があるので手順は決められており簡単だと思われるかもしれませんが、実は違います。

この「いじめ法」は、いじめか確認され、学校がいじめと判断した。のはもちろんですが、実はその先が大前提なのです。

それは、いじめをした方が「いじめを行ったと認めたか?」の一点です。

そうなんです。いじめたこどもとその保護者が、「いじめてない。」「そんなことは言ってない。」「あなたからも嫌な事をされたのでやっただけ」「単なるトラブルやケンカだ。」と主張した場合、残念ながら学校は打つ手と権限がないのです。

また、「学校はうちの子を加害者と決めつけるのか?」「犯人扱いか?」「人権侵害で訴えてやる!」と言われると、

タジタジになる管理職も多く、外ら側のなびいてしまう学校もあってますますこんがらがります。

加害者といわれた親は、法律があるので「ごめんなさい」では済まない。転校しなくてなならなくなったり、別室で過ごさないといけなくなるかもしれない。なんとか我が子を守らなければ!とどうしても親として思ってしまいます。

結果,被害側、加害側の怒りの矛先は「学校」にむかいます。

被害者は、「なぜ、いじめを止めてくれなかったのか」「なぜ、加害者にいじめを認めさせられないのか」「ちゃんと対応してくれないのか、対応がなぜ遅いのか?」などを訴えます。

逆に加害者側は「なぜ学校はうちの子に威圧的な尋問をしたのか、心が傷ついている」、「なぜ、うつの子ばかり犯人扱いするのか、他のもいるだろう」「うちの子はその子から嫌な事を言われたと言っている。それもいじめじゃないか、うちの被害者だ!」

と大体こうなります。そして揉めて、一番の被害者であるはずの子どもが「もうこれ以上傷つく環境にはおけない。」と保護者が判断し,

転校していくのです。そして心に傷を受けたまま、新しい環境に飛び込んでいかねばならなくなるのです。

 

このように法律が機能しないのは「加害者がいじめを認めないから」というのが最大の要因だと私は考えています。

これは、いじめ法を改正したからと言って、解決できるものではないと思います。

もし改正するなら、この部分をクリアする方法を盛り込むべきです。

 

話を戻しますが、学校が回答した「いじめにより不登校になった」という割合が実際よりも著しく低いのは、

「加害者がいじめを認めないものは報告できない」「事実をしっかり確認できていないものは報告できない」

からだと私は思っています。

いじめ方ができて10年、一向にいじめは減らず、命を落とす子も入り現状が変わらないことはここに要因があると思います。

 

過去には、「我が子がいじめた事を知った親」は、子を連れて相手の家に謝罪に行ったものでした。

子と一緒に親が頭を下げる姿を子に見せて、本当に悪かったと反省したものでした。

しかし、ここ20年くらいで、この文化はほとんど見られなくなりました。

 

「反省すること」が必要なのに、「あなたは何も悪くないよ」と何が起こったか聞く前に言う保護者もたくさん出てきました。

「我が子がやった事を認めない親」「認めたくない大人」が人により重い苦しみを与えているのです。

 

本当に我が子が大事ならば、やったことの重さや相手の苦しみを考えさせ、責任の取り方を教える覚悟が必要なのです。

「なんでも人のせいにする文化」が子供に責任の取り方を教える事を邪魔しているのです。

もしかしたら、このような親御さんは、「責任の取り方を学ぶ事なく、人のせいにすることで許されてきた人」なのかもしれません。

もう、真剣に大人がみんなで考えないと学校では1から10までやることは残念ながら無理だと思います。