不登校になると教科の評定がつかない、あるいは「評定不能」や斜線となり内申点がつかないことは全国的に見られる課題です。

ですから、学びの場を確保するために「学びの多様化学校(不登校特例校)」を設置したり、校内フリーススクール的なスペースを確保したりする動きがあります。

「学びの多様化学校」は教育課程に準じて教員が授業をするので評価も普通につきます。

しかし、校内フリースクール的な場所を確保したからと言って、先生がつくわけではなく、支援員や指導員がつくため別室の自学と同様の活動となる場合がほとんどだと思います。また、フリースクール等の学校外施設に通っている子も「出席認定」をして学びの場の一つとして認めています。

しかしながら、これは「学びの場」の場の確保であり、「学びの確保」ではありません。

ようするに学校外施設で所属学校と教材を共有化して頻繁にやりとりをし、評価材料を提出しないと、定期テストを受けただけでは

評定はつきません。

ということは、「学びの確保」はできない上、「進路の確保」もままなりません。

現在のシステムでは、「教室で授業を受けている子」以外は評定は極めてつきづらい状況にあります。

 

この動きをうけ、「内申点(評定)」を考慮しない当日の入試一発勝負の高校入試を行う高校が首都圏で出てき始めています。

なんとなく見れば、勉強していれば、当日のテスト基準をクリアできれば合格できる。このことが吉と働く子もいると思います。

 

しかし、私は義務教育の存在意義を揺るがす大問題だと思っています。

「そういった入試の方法も併用してします。」ならいいと思いますが、全面的に変更するとしたら個人的には反対です。

理由は2つです。

① 教室で授業を受けていない子はただでさえ、学習の遅れが見られるのに、クラスメイトと同じくらい5教科の得点をテストでとることは至難の業だと思います。むしろ、学校外施設で頑張りや面接を重視する入試制度の方が子どもたちにとって、よっぽどいいと思います。

 

② 平成の初めに子どもたちに受験戦争という苦しみを与えた「偏差値教育」が終わり、学力のとらえ方や定義も知識偏重から学ぶ意欲や思考力・判断力・技能にシフトしました。

それから30年余り、中学校卒業後の進路も多様化し、さまざまな角度から学力を測り評価するようになったのです。

「当日テスト一発勝負」ならば、以前いたように、「5教科だけまじめにすればいいや」という子も出てくるでしょう。

また、評価自体が全く関係なくなれば、学校ではまじめにしない子も出てくるかもしれません。

そして、一番の問題は、再度、「知識量が重んじられる傾向」にもどらないとも限らないのです。

そう考えれば、現在の義務教育の理念から外れた制度と言えます。

 

不登校の子どもたちがそれで救われるのなら大賛成ですが、実際はそうなりにくいと思います。

また、「評定がその子を救う」ということもあります。テストで少し低めでも評定が高ければ合格することもあります。

それは3年間のこの子のまじめな取組や頑張りが一目瞭然だからです。

観点別のどこにAがつき、どこがCなのか。その子がどのように授業にとりくんだかわかります。

 

まとめると、一発勝負の制度も併用することはやぶさかではありませんが、不登校の子どもが「よかった!」「チャンスだ!」

「頑張ろう!!」となるかは私は疑問です。

その点については、両方の有利な方を選べる制度が複数あるといいかもしれません。

 

そして国には、どうか、「学びの場」の確保だけでなく、「学び」の確保をしてほしい。

文科省のココロプランは「誰一人取り残さない教育」を謳っています。

今は残念ながら、指の間から砂が流れるように取り残されてしまっている子どもたちが大勢います。