前回、学級開きの「不適切な指導」についてお話ししました。
「先生の指導」には、教科指導や学級指導、部活の指導などなど、学校の教育活動の全般で行われるものです。
その中で、先生の「不適切指導」についての報道が最近多くなったように感じます。
私から言わせれば報道されていることは「不適切な指導」ではなく、「不適切な関り、謝った認識や言動」であり、子どもの人権をないがしろにするあってはいけない、言ってはいけないものだと思います。
「暴言」「暴力」「体罰(残して給食をたべさせる、トイレに行かせないなど)」「合理的配慮の欠如」「差別的発言」など
が大きく取り上げられています。これは誰が見てもおかしく、社会通念上許されません。
一昨年、文部科学省が「不適切指導の実例」をあげ、全国の学校に通知しました。その内容は、
〇 大声で怒鳴る。ものを投げるなど感情的、威圧的に指導する。
〇 個人でなく組織で対応する。
〇 指導後は一人で帰らせない。などです。
どれもとても大切なことで「怒る」ではなく「叱る」ということなんだと思います。私はこれを見て、とても考えさせられたことがあります。それは、「不適切な指導」は×、では「適切な指導」って何だろう。ということです。
興味深いことに「適切な指導」または「有効な指導」とはこうですよ。と示したものは私の知る限りありません。
実は、学校、教員には「懲戒権」が認められています。法的には次の通りです。
「懲戒」は、生徒指導上、生徒の問題行動を反省させて立ち直りを図り、正常な生活を送るために行なわれるもの。
では、仮に「授業中携帯電話でゲームをするなど校則を守らなかった」「教師に反抗し、暴言を繰り返し吐いた」「授業に入らず校内で喫煙しながら徘徊している」などの問題行動があったとします。
一般的には、その子を別室に呼んで「心に触れるような諭し方をして反省を促す」と思われるのではないでしょうか?
しかし、現実は違います。
「○○時に会議室にきなさい」と言っても来ない子もいます。完全拒否です。探すと校庭でサッカーをしています。
「じゃあ、放課後残っていなさい、教室で話しましょう」と言ってもさっさと帰ってしまいます。
先生はどうしたらいいですか?懲戒権はあるのに行使できません。力づくで無理やり引っ張って行けばそれこそ体罰です。
「ここでの適切な指導とはなんでしょうか」
犯罪ではないので警察対応事案ではありません。ダイレクトに保護者に電話しても「家でも言いますけど、学校でもしっかり指導してください」と言われます。そして、親に言いつけたと子どもの反抗は強まります。
行為はますますエスカレートします。
「全く指導ができないし、通らないのですがどうすればいいのでしょうか?」
「学校の荒れや問題行動には毅然として対応すべし」と通知されていますが、「毅然に対応とはどうすることでしょうか?」
だって、大声をだしても「不適切指導」なんですよ。
もし、この指導対象の子が学級の子を目の前で何度も腹パンチしていたら、どうしたらいいのですか?
こんな場合でも、大声でどなったらだめなんですか?
このような方針では「子どもたちは守れない」と思います。
好き勝手にふるまう子どもひとりも指導するすべがない。退学や停学もない、自宅謹慎などの処分もない。
義務教育だから学習の機会を奪えない。やりたい放題を阻止できない、指導できない現状があるのです。
先生方は指導する情熱はあっても具体的な指導の方法が示されていないので、多くの先生方が困っています。
正直、きれいごとでは子どもを守ることはできません。
「子どもの話を聞こう」「カウンセリングマインドで接しよう」「犯罪はためらわず警察に通報しよう」
「毅然として対応しよう」などと言われても子どもたちには響きません。
私はだから「体罰が必要と停学や退学などの処分が必要」と言っているわけではありません。
「子どもを守るために毅然として問題行動に対応する方法」が知りたいだけです。
「わたしたちは何もできない、どうやって指導すればいいのか」と悩まれている先生方はいっぱいいます。
大津市のいじめ自死事案で、自死した子が数人に囲まれ殴られているのを見た担任が何と言ったか。
たった一言、「やりすぎんなよ」でした。
その子は絶望したと思います。悲しかったと思います。では、この時、先生は何と言うべきだったのか、
とても考えさせられます。