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私は昨年まで中学校の教員でした。30年以上勤め、思い返すと、

学校は7校、20年以上、教育行政を県教育センターと市教委の2機関、8年間経験しました。

勤務した学校は、長崎県最大の大規模校に勤務したり、各学年単一学級の小中併設の学校にも勤務しました。

もちろん、その他、中規模校(一学年3クラス程度)の学校もたくさん経験しました。

 

ときどき、小規模校の先生は授業が少なくていいね。などと言われることがあります。しかし、

毎回、3学年分の授業の準備をし、毎回3種類の定期テストを自作しなければありません。

大規模校では、だいたい1学年を担当し、4~5クラスくらいの授業をするので同じ授業を4回することになります。

テストも複数でもつので2回に1回の割合で1つ作るというペースです。

しかし、毎回、テストの採点は、40人×5クラスで200枚の採点があります。

 

また、わかりやすい例を挙げれば、夏休みや冬休み等の長期休業中は「特定勤務」といい、誰か管理職以外で職員室にいる当番があります。大きな学校は年に1回回ってくる程度ですが、小規模校では夏休みに2回、年に5回とか回ってきます。

お盆も正月も4日からなのでなかなか大変です。

 

ですから、大規模だから、小規模だからではなく、とちらもそれなりに大変で、どちらが楽という感じではないのです。

 

しかし、1つだけ決定的に仕事の極端に量が多い学校があります。

これは規模は全く関係なく「生徒指導困難校」です。

昨年から「生徒指導の課題がある学校」と呼び方がソフトになっていますが、ぶっちゃけて言うと「荒れた学校」です。

これは、転勤すると今までの指導や対応が生徒に全く通用せず、先生方は自信をなくし、絶望します。

何を言っても、「死ね、あっち行け!」「だまれ!ウザイ」「殺したい」など生徒に暴言を吐かれます。

 

携帯を校内に持ち込み、使っているところを注意して預かろうとすると、狂乱状態になり襲い掛かってきます。

暴言は当たり前、椅子をガラスに投げつけられたり、けってきたり、先生に唾をはく子もいます。

私は、このような学校に初めて行った時から、ラグビージャージを着、使い捨てのソフトコンタクトに変え、

頭はすぐ洗えるよう坊主にしていました。スリッパではなく、いつでも走れるようスニーカーです。

必要なくなった今でもこのスタイルは変わりません。

 

話がそれましたが、このことを警察に通報するまでには管理職に状況を伝え、最終的に校長が判断します。

自分で判断できない場合、教育委員会に相談する校長もいます。なかなか通報までには至りません。

 

結局、毎朝、「ピアスをはずしなさい」「たばこは捨てなさい」「金髪では教室で授業は受けられません」「私服のパーカーを脱ぎ、制服をちゃんと着なさい」という押し問答が繰り返されます。揉み合いにもなります。

その後も、授業にいないので校内を探したり、座り込んでいる生徒に教室に入るように指導したりしますが、言うことを聞きません。壁を叩いたり、他学年の体育の授業に勝手に入り込んでバスケットをしたり、やりたい放題です。


少し目を離すと学校から出て近くのコンビニで買い物をし、肉まんやパンを食べながら学校に戻ってきます。

そして、勝手な早退やいつくるかわからない登校が常習化します。

 

そして、保護者に協力をもとめても「家ではなにもありません」「先生が指導するから暴れるんじゃないんですか、もう指導しないでください」「服装とか髪型とかどうでもいいじゃないですか?もう、うちの子には注意しないでください」と言われたことも何度もあります。

 

このような学校に6年以上勤務しましたが、1年が他の学校での5年分くらいに感じました。

そして、「荒れた学校」には次のような特徴的なことがつきものです。

それは、

① 「髪型とか服装とかピアスとか自由でいいんじゃないの?そんなことで注意するから生徒もムキになるのよ」という「妙にも  

  のわかりのいい大人」が出てきます。そして、「私もその子たちの気持ちわかる―」という寛大な心の人も現れます。

② 学校の行事に地域の有力者や教育委員会関係者などが来賓として来ても、その生徒を目にしても全く反応しないし、

  話題にもしません。生徒に声をかけたり、注意する人もいません。誰も関わろうとしません。

③ 一方でこんな状況にしたのは教師のせいだ。子どもたちは悪くない!!と事情は全く知らないのに声高に言う人が学校に

  手紙を出したり、電話をかけてきたりします。

 

もう、こうなったら先生方は孤立無援、外は敵だらけとなり、心身共に疲弊します。

こうなったころには生徒はグループを作り、空き教室を占拠し、無法地帯と化します。

 

なぜ、「先生が注意するのか?」それは、「髪型が多様化でもよい」とか、「ピアスも、携帯もいいだろう」とか個別のことではなく、

「今ある学校のルールを守りなさい」と言っているだけです。

「自分が所属する集団の決められたルールを守る」のは集団に所属する人には一番大事なことです。

また、ルールを守れない人がいると遊びやゲームも成り立たないし、学校では「まじめに勉強したい、頑張りたい」という生徒が一番不利益を受けるのです。

「ルールを守らない子」がどうのではなく、ルールを守り、頑張っている子を守るために指導をしているのです。

 

もう、今の時代、子どもは情報をよく知っているので、「お前は手をださんやろう、出したら体罰で訴えるぞ」「ほらほら殴ってみろよ」などと挑発する子もいます。

 

私はまじめに頑張る子と共に、この「荒れた子」をどう救うか、その時、真剣に考えました。

それは、いくら物わかりのいい大人がいようと、批判されようと、暴言やつばを吐かれようと、「ルールは守りなさい」と立ち向かう大人の姿を見せることが、将来、この子がきっと気づいてくれる時がくるだろう。「自分に真剣に向き合ってくれた大人がいた」ということを思い出してくれるだろう。と思い、毎日向き合いました。

 

今は、金髪やピアスなどの見た目でわかる「荒れ」すくなくなっているそうです。

ただ、普通に格好をし、普通に勉強もする子が全く指示に従わなかったり、暴言を吐いたりするケースが多いと聞きます。

全く平和な学校なんてありません。

授業や学級が荒れたり、指導が通らなかったりするケースはいくらでもあります。

教師にとって一番頭と心を悩まし、疲弊する業務は、この「生徒の指導」です。