パニック障害とはどんな病気か

  パニック発作といわれる、急性の強い不安の発作を繰り返す症状を特徴とする病気です。
 パニック障害は、のちに述べるように、特別な原因やきっかけなしに急性に発症し、パニック発作を繰り返すことや、不安のため一人での外出や乗り物に乗ることが困難になること(広場恐怖)、薬がよく効くことなどが特徴です。



パニック障害の原因は何か

 

原因はまだよくわかっていませんが、心理的原因説は疑問で、脳内ノルアドレナリン系の過敏・過活動、あるいはセロトニン系の機能不全など、脳機能異常説が有力です。これらは薬の有効性の説明にもあてはまります。
 また実験的な研究から、パニック障害の患者さんは、乳酸、炭酸ガス、カフェインなどに過敏で、発作が誘発されやすいことがわかっています。過労、睡眠不足、かぜなどの身体的な悪条件や、日常生活上のストレスなど、非特異的な要因も、発症や発作の誘因になることが知られています。



パニック障害の症状の現れ方

 

  パニック発作では、突然の激しい動悸(どうき)、胸苦しさ、息苦しさ、めまいなどを伴う強い不安と、死ぬかと思うほどの恐怖に襲われ、多くの患者さんは心臓発作などを疑って救急車で病院へかけつけます。しかし、症状は病院に着いたころにはほとんどおさまってしまっていて、検査などでも異常はなく、多くの場合そのまま帰されます。
 しかし数日のうちに、また発作を繰り返し、次第に予期不安や広場恐怖が発展してきます。発作を恐れて一人で外出できなくなったり、医師から何ともないといわれていても心臓を心配して運動を控えたり、病院を転々として検査を繰り返したりするようになります。
 症状が軽く、一過性でおさまってしまう場合もありますが、よくなったり悪くなったりしながら慢性に経過する場合が多くみられます。また、半数以上にうつ病を伴ってくることがあるといわれているので、注意が必要です。



パニック障害の検査と診断

 

  突発性のパニック発作の繰り返しと予期不安があり、原因になるような身体疾患がないのが診断の主な条件です。
 この身体疾患を除外するために、内科的なさまざまな検査が行われます。尿、血液、心電図、場合によっては脳波検査などが行われ、心血管系疾患、呼吸器疾患、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)、低血糖、薬物中毒、てんかんなどが除外されます。



パニック障害の治療の方法

  治療法には、薬物療法と認知行動療法があります。
 通常は、まず抗不安薬(ベンゾジアゼピン誘導体:ソラナックスなど)や抗うつ薬(SSRI:パキシルなど)、その他を使ってパニック発作が起こらないようにする治療を行います。副作用のことも考慮に入れたうえで、発作が起こらなくなるまで十分な量を使用し、発作がなくなっても6カ月~1年は薬を続ける必要があります。
 次に、不安が軽くなってきたら、今まで避けていた外出や乗り物に少しずつ挑戦し、慣らしていく訓練(行動療法)を行います。また、ちょっとした動悸を心臓発作の前触れではないかなどと破局的に解釈する癖を直していきます(認知療法)。
 パニック発作は薬物でほとんど治りますが、予期不安や広場恐怖はそののちまで残ることが多く、これには認知行動療法を併用する必要があります。うつ病が合併した場合は、休養と抗うつ薬療法が必要で、うつ病の治療に準じます。



パニック障害に気づいたらどうする

 

  パニック発作を経験したら、まず内科などで体に異常がないかどうかを検査してもらってください。異常がないのに何度も発作を繰り返すようなら、パニック障害の疑いがあります。
 正しい診断がなされず、過換気(かかんき)症候群、心臓神経症、自律神経失調症などの病名で、パニック障害が見過ごされている場合も少なくありません。これはと思ったら、精神科か心療内科の専門医の診察を受けてください。
 診断が確定したら、指示どおり薬を飲むことがまず大切です。薬が十分効いて不安が軽快してきたら、今まで避けていた状況へ少しずつ入っていく訓練をします。外見ではわかりにくい患者さんのつらさを家族や周囲が理解し、外出訓練に同伴するなどの協力も必要です。