梨子ちゃん、誕生日おめでとうヽ(´∇`)ノ


という訳で。お祝いにようりこ書いたよ。ラストぐだぐだだけどギリギリセーフ(;^_^A
誕生日関係ないけど。
数日前台風きてたから、それネタにしました。








-明日晴れたら-








『戸締まりは大丈夫?』

『大丈夫だよ』

『明日の昼には帰るけど、何かあったら連絡してね』

『うん。お母さんも気を付けて』

カタカタと、風が窓を揺らしている。
大きな目玉を持った特大低気圧は、着実に内浦に向かって来ているらしい。先日、用事で東京に出掛けたお母さんは、台風の影響で帰路を閉ざされ、友人の家に泊まることにしたようで。
明日まで、家には私一人。寂しくないと言えば嘘になる。でも、今からあの子の家になんて危なくて行けないし。
来て欲しい、なんて口が裂けても言えない。

早めに寝ちゃおうかなって、思ったところで震えるスマフォ。

『梨子ちゃん、大丈夫?』

届いたメッセージは、大好きなあの子からで。

『大丈夫だけど、どうしたの?』

『お義母さんから、今日は梨子ちゃん家に一人だって聞いて』

ちょっと、お母さん!?って、お義母さんて!?
まぁ、お母さんは私達の関係を知っている訳だけど。

『平気だよ。お母さんが用事で家を空けるの、珍しくないの』

ここは、敢えてスルーの方向で。

『でも、台風近付いてるし』

ここで逢いたいって返したら、優しい貴女はきっと来てくれるんだろうな。でも、危ない目には遭って欲しくないから。
ほら、ザァーって、雨も降って来た。

『ありがとう。本当に大丈夫よ』

逢えないなら、せめてずっと連絡し合って、寂しさを紛らわせたいな。

『あのね』

うん。

『直ぐ近くまで来てる』

!?

反射的に、道路側にある窓に目を向けると。ちょっと離れたとこに見覚えのある姿。それが何か理解した瞬間、階段を転げ落ちる勢いで駆け降りる。
そのままの勢いで玄関の扉を開けると。

「こんばんよーそろー」

服も髪もびしょ濡れの、へにゃりと笑って、ビシッと敬礼してる恋人。

「なに、してるの?」

「いやー、その、梨子ちゃんが寂しがってると思ったら、居ても立ってもいられなくなったと言いますか」

こんな雨風の吹き荒れる嵐の中、こんなにびしょ濡れになって。

「…ばか」

来てくれて嬉しいのと、危ないでしょって怒りたいのに、口から出たのは、そんな言葉。
言葉とは裏腹に、彼女を抱き締める。

「濡れちゃうよ?」

「いいの」

「風邪引いちゃう」

「そしたら、よーちゃんのせいだね」

「それは困ったなぁ」

「じゃあ、もう無茶しないで」

「…はい」

怒られてしょぼくれる曜ちゃん。
反省したなら、許してあげる。でもね。

「来てくれて嬉しかったよ」

こっそり呟いて、浴室へ押し込めた。

——————

「簡単な物で悪いけど」

シャワー浴びてスッキリした曜ちゃんに服貸して上げて—梨子ちゃんの匂いとか喜ばないで、恥ずかしい—髪乾かしてあげてると、曜ちゃんのお腹が情けない悲鳴を上げた。
曜ちゃんは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。全く格好いいんだか情けないんだか。まぁ、可愛いからいいけど。
とはいえ、夕飯はあるもので済ませちゃうつもりだったから、ろくな材料がない。
取り敢えず、お腹が膨れて暖まる物。尚且つ、腹ペコさんの為に手早く出来るもの、ということで。

「あ、親子丼!!」

簡単なものなのに、曜ちゃんは料理を見るなり待ってましたと目を輝かせる。

「大したものじゃないよ?」

言いながら、親子丼とお吸い物を二人分テーブルに並べる。

「梨子ちゃん、料理上手だから、何だって美味しいよっ。いただきまーす」

余程お腹が空いていたのか、勢いよく掻き込んで、もぐもぐごっくんして、ニッと笑う。

「うん。美味しいっ」

あんまり嬉しそうに言うものだから、恥ずかしくなって。真っ赤な顔で親子丼を掻き込んだ。

「ご馳走さま」

「お粗末さま」

お腹をぽんぽんさせて、満足そうな曜ちゃんの顔には、ご飯粒がひとつ。しょうがないなぁ。

「曜ちゃん」

「んー?」

お腹いっぱいなのと、嵐の中走って来た疲れも相俟ってか、曜ちゃんは眠そうだ。
ペロリとご飯粒を舐め取っても、幸せそうに笑うだけ。

「眠い?」

「ねむい、かも」

ちょっとだけ寝てていいから、取り敢えずその抱き着く手をほどいてくれないかなぁ。食器片付けられないよ。

「りこちゃんは、よーとはなれたいの?」

…うん。なんでこの子はいきなり爆弾放ってくるのかしらね。
思わず溜め息身漏らすと、不安そうに揺れるアクアブルー。

「ちょっとだけ、寝ちゃおうか」

「…えへへ」

くしゃりと頭を撫でてやると、そのまま胸に顔を埋めて、曜ちゃんはすやすやと寝息をたてはじめた。


ガタガタ、ザァーザァー。相変わらず、外は台風が猛威を奮っている。
でも、明日になったら予報では晴れるらしい。

明日晴れたら、君と何をしようか。

でも先ずは、一度起こして歯磨きをさせよう。