「健康な漁夫」


   詩 : 石垣 りん




 天空に海苔シビのようなものが並び

 家ごとにテレビのアンテナが並び。




 光や風や水滴の中の

 おりのような

 こけのような

 かすのような

 人間の彫像がひつかかり

 少しづつたまり。




 いまや季節の当来。

 晴れた日、

 寒冷に舟をやつて、

 アンテナに生えた海苔のようなものを集め。




 人間が食糧として好む、

 有名

 光栄

 満足

 等を。

 簀(す)にうつすらのべて

 干上がるのを待つている。




 向こう岸で

 赤銅色に焦げている漁夫とその家族。