では、なぜ手入れが必要なのでしょう?
ここでは、植生遷移と、生物多様性という二つの観点から考えてみたいと思います。

植生遷移、つまり大地をほったらかしておくと、どう変化していくかということです。
何もない所に、草が生えて、そのうちに木が生えて、
最後にはうっそうとした暗い森になるということですね。
たったの一行で説明しましたが、無から暗い森(=冬も葉っぱの落ちない森)になるまで、150年以上
人によっては数百年から千年を要すると言います。

この暗い森、実は緑地全部がこれになってしまうと、
「生物多様性」という点ではあまり喜べない状況です。
冬も葉が落ちない森では、日光を必要とする植物は育つことができません。
お日様が当たらなくても伸びることの出来る特定の植物ばかりになってしまいます。
関東の場合は、シイ・カシ・タブなどの森になるわけです。

でも、これらの森にトンボやみつばちはいますか?
ちょうちょは飛んでいますか?
ススキや美しい花々はありますか?
答えはNOですね。

裸の大地から、暗い森(=極相林)へと変化していく途中には、
雑木林という状態があります。
様々な植物が混在する広い意味での雑木林は、氷河期時代からありました。
草地、雑木林、極相林それぞれに、そこに適した生物が住んでいるわけですが、
私たち人間を始め、馴染み深い生物の多くは長年この雑木林を中心として生きてきました。
つまり体の作りが、その環境に一番適しているということです。
そのためにも、雑木林の状態を保っていくことが、
多くの生物にとって、「住みやすい環境が保たれる」ということにつながるのです。
日本人の生活の歴史を振り返ってみても、
雑木の山があって、川があって、海や池があって
という風景の中で暮らしていた時代が一番長いのではないでしょうか。