空の彼方。

彼方の向こう。

今、自分は何処にいるんだろう……。


ふわふわふわふわ。浮かんでは消える紫煙に手を伸ばす。もちろん煙を掴むことは誰も出来ない。

神様は例外は作らない。

「あ?何やってんだ、お前?」

ピッやら、ガガッという雑音と機械音を混ぜた耳障りな音をいつものように出しながら、いつものような子供の声で無機質な目で俺を見上げながら、奴は俺に首を傾げて言う。

発する音と違ってその動作はまだまだ滑らかで、その辺りにいる犬のようなしぐさで鼻を鳴らしては俺に甘えてくる。

手に触れる冷たさと鈍い鉄の色せず、言葉も喋らなければ犬そのものだろう。もし、もの話だが。

「……お前じゃないだろ?ご主人様と呼べよな、バカメカ」

「お前はお前で十分だろ」

生意気なことを言いながらも頭をなでられることが気持ちよいのか、鼻を鳴らしては目を細める。

……こいつにそんな感覚があるのかは定かじゃないが。

「可愛くないな。拾ってやった所謂命の恩人だぞ?」

「何が命の恩人だ。メシだって安い油じゃないか」

だって、俺金ないもん。その安い油だって、アンドロイド犬専用のじゃないといけないので、勿論俺の安い給料では痛い失費になっている。

この俺だって、安い簡易食事しかありついていない。

「俺だって、美味いものが食べたいぜ」

文句を垂れるこのお犬様に俺はいつだってため息を欠かせない。

「……じゃぁ、何で俺を拾ったんだ、お前」

もう取れてしまった睫のない瞼がゆっくり落とされ上がる。

「それは……」

それは、棄てられていたこいつを見て俺は自分を見た気がしたんだ。

いくらアンドロイド犬が高いといっても奴は旧式の旧式で。ゴミダムの中に埋もれ、ピクリとも動かないこいつに俺は目を反らせなかった。

誰かに必要とされ、擬人化(犬だから擬人犬か)の命を与えられたこいつはそれこそ、こいつの言うご主人さまに命の限り付くしてきたんだろう。それがこいつに内臓されているチップに埋め込まれたプログラムといえども。

人間のために生まれ、人間に棄てられて。俺はそんなこいつに俺を見た。誰にも必要とされないこいつに俺を見た。

「…イ、オイったら!!」

「あ、ぁ?」

「……も、いいよぉ」

メカの癖に生意気にため息をもらす。

「お前なぁ、俺はが拾わなかったらお前は今頃スプラッタだぞ?」

「だろうね。でも、何処にいても変わらないよ。いらなくなったものは棄てられる」

「あ?俺が棄てると「僕、もうすぐ止まるんだ。そうなったらそこらにある廃棄になった機械と同じなんだ。」

動かなくなっても僕をおくの?

どう……なんだろうか。動かなくなっても俺はこいつを置いておくんだろうか?

「僕。海がいいな、海が」

何も言わない俺にこいつは独り言のように言う。

もう、こいつには自分の止まる時期が近づいていることに気づいているのだろうかと思うような言い方に俺はただ「あぁ、海もいいな」と呟くしか出来なかった。


その翌日。

昨日とは違って激しい雨。

ベランダで日向ぼっこをするのが好きなこいつはベランダに落ちる雨を黙って見ていた。

「おい、メシの用意が出来たぞ」

俺は自分の分の皿を机に置くともう一度呼びかけ止めた。

パタパタと義務のようにいつも振られている尻尾が動いていないのが気付いたから。

そいつは今日、ピ……と小さな音を立てて完全に停止した。

俺はただ。

雨がやんでもその後ろ姿を見続けていた。

雨の後の空からは眩しいような太陽の日差しが降り注いでいた。



コポリ……


コポ…コポコポ……


ゆ め …を見ていた。

む かしの。

なつ か しい ゆ めを……。

体の中に残っていた空気が水の中へと溶けては静かに水を揺らす。

あの後、俺はあいつが言ったように海の中へとあいつを弔った。

棄てたのではなく、弔ったのだ。


コポコポと。

空気の粒が体から抜け出て行く。

体に貼っていた人工皮膚が至る所で剥がれ落ち、鉄色の自分の腕が目の片隅に見える。


まだ。

動くだろうか?


俺の努力はギシっりとも何もなく、ただ、其処にあるだけだった。

棄てられた俺。

人間のように生きた俺。

俺は何になりたかったのか。あいつのようにプログラムされていれば、スプラッタも棄てられることも何も怖くなかったのだろうか。

それとも、怖いなんてプログラム俺はされていたのだろうか。

俺がフリーズしてしまっている間に。

俺が掴みたかった世界は。

海の上へ。

世界は、人間が住む陸上は。


俺は人間になろうとしていた。

それでも。

そこには手も伸ばせずに。

空のような海の上の遥か彼方へとなっていた。


コポリと。

最後に俺の体から出た泡は。

太陽の淡い陽光に溶け込み消えていった。


終わらせました、キングダムハーツを……(=▽=)ノ

スクエアはやっぱいいですよね、ストーリーが所々切ない感じが大好きです、ウルってしかけます……ただ、ど~~~~~しても、お気に入りのキャラが……敵さんでしたので、消えてしまって……エンドは生き返るか、元の体を出してくれるかとか色々期待していたのですが、やっぱセインの勝手な願いになってしまいました(ネタばれ?)

そこと愛情未満友情以上が不満というか、心に残ったというか……

えっと、私的ですけど、主人公(男)がヒロインに会ったときは……まぁ、普通に素直な喜びをしていました。

主人公(男)が捜していた友達(男)と会ったとき、泣きました。

……コントローラもって「……ぇ?」と呟いたセインをお許しください……(。。:)


感想的には、「キングダムハーツ」類はFFに比べると大分簡単に出来ていると思いますvやっぱD社が関連しているからどうしても簡単にしなきゃいけないのかな?スクエアだとどうしてもストーリーが長くなっているイメージがあるから……(-▽-)

ただラスボスが……めっさ面倒(笑)なんか、死んだらまた最初からかよ!!っていう思いで二度目は必死になって死なないようにばっかり集中してたら、感動もなく倒してた……(ショボーン…)


でも、これで気になるのは終わったのでvバサラに熱中できるように(笑)

次のFF12が出るまではバサラ三昧をしていそうなセインです(笑)

今日は朝からバタバタしていました(´ゝ`)レポを直接先生の家に届けたり(先生には確実に恐怖)、親戚とお食事したり(スーツで)写真をとりにいったり、本を大量に買ったり、CDを探したり探したり探したり探したり………結局見つからなくてアウアウ言ってみたり。

最近、V系は簡単に見つかるようになったんですが、欲しい!!と思ったCDが全く持って普通のCD屋さん(でも、一応大手のCDショップに行ってるんです)に売ってないんです……オウオウ(T-T)

でも、まるマのCDは売っていましたので買いまして……聞いて笑ってしまいました(笑)

だって。

あれ。

深読み。




しちゃうんだもん(笑)


コンラートのバラードは微妙に受けましたv(好きだよ)


別に好きって言って欲しいわけじゃないけど。



背中越しに伝わる微温湯い温かさにうつらうつらと船を漕ぐ。

「眠いの?そこに布団あるよ?」

クスクスと笑う振動が心地よく、益々眠りへと誘う。誘惑に負けそうになるが、目を擦って眠気をやり過ごそうとする。どうも、ここ数日の疲れが一気に押し寄せているようで、眠くて堪らない。

「……ん~~……大丈夫……眠くない……」

自分で呂律が回っていないことくらいわかってる。嘘だとばれてることもわかってる。それでも、「そう」と言ってパラリと本をめくるアンタとの静かな時間が好きだからもう少しこうしていたい。

本当はこんなことをしている場合じゃないのにね。アンタも俺も。

「ねぇ」

あぁ、星がきれいだなぁとか、明日も晴れるかなぁとか。どうでも良い事を色々考えてると肩越しに綺麗な顔が半分見えた。見返り美人ってこういう人の事をいうのかなぁって一瞬、思ったけど、アンタは何処から見たって綺麗だから当て嵌らないか。

「ん~……何?」

自分のじゃない、絹のような柔らかい長い髪を手探りで遊びながら、気のない返事をしているけど、大丈夫。しっかり聞いてるから。分かってるだろうけどね。

「キスしていい?」

パラリ……。

弄んでいた髪が力なくした指から零れ落ちていく。

……ちょっとだけ。驚いた。

眠気が少し飛ぶくらいには。

「ね、いい?」

「……勝手にすれば」

「わかった」

にっこりと満面の笑みを見せたかと思うとこっちが目を瞑る暇もなく、唇に温かいものが触れる。それは名残を惜しむことなく、触れたかと思うと直に離れていったけど。

なんだろう。

胸が。

苦しい。

離れた背中温度の方が名残惜しいのに。

どう、反応すればいいのかわからず、キスした相手を凝視するのも何だかおかしいような気がして、細く白く長い指先を見続ける。

反応に困っているのを面白がっているのが、居心地悪く、こんなことなら狸寝入りでもすれば良かったと後悔する。

「ほんと……面白いよね、君って」

指が。腕が伸びて俺の頬を優しく撫でた。指はゆっくりと頬を撫でると、そのまま背中に回って何も言わずに抱き締められる。

俺はというと。

抵抗もせずにそのまま、肩に顔を埋めて目を瞑った。眠くて死にそうなんだもん。

「放せれないかも」

だったら、何処にも行かないように足でも切ってしまえばいいのに。

「このまま時間が止まったらいいのにね」

そしたら、アンタの腕ん中で嫌っていう程寝てやる。まぁ、アンタなら疲れたとでも言って俺を放りだすだろうけど。

「まぁ、君は行っちゃうだろうけどね」

耳元で、喋られるとくすぐったい。けど、体を動かすのも面倒でそのまま。

「行っちゃうと……つまんないよねぇ……」

さっきより、一層落とされた声の大きさ。

耳元なのに、拾えきれないほどの声の大きさ。

子供だよね、言い方が。本当。

薄く目を開くと肩越しに見える数え切れない星屑の向こう。見えることのない星たちに心を寄せる。

「……だったら」

「……なぁに?」

「……なんでもない」

それ以上何も言わないから、俺も何も言わない。

肩に顔を埋めてると、一度やり過ごした眠気が襲ってきて。

そのまま、深い眠りへと誘われるまま行ってしまいそうだけど。



今は目を瞑るだけ。



だったら。


だったら、一言でも言って。


別に好きだとか言って欲しいわけでもないけど。


言ってくれたら全てを捨て――――。



Fin







も、ムリ……BASARA大好きだぁぁぁぁ

文字の大きさどうにか出来ないの、結構不便だな……←今更

BASARAがBASARAがっ……!!私の中でとまらない……久々の萌えでございます。

こんなところで書いてしまうほど、萌えておりますだって、楽しすぎ(笑)

ゲームが好きな人は一度やってみることですよ、あれは飽きません!!(多分)

ばっさばさ、切って切って切り捲って「お館様ぁぁぁぁぁぁ!!!」と叫ぶのであります!なんて、馬鹿vv

そんな熱い馬鹿が好きなセイン(でも、あそこまで熱くなくても……)

利家とまつにちょっと、ショックを受けたセインでありますが、佐助のおかん振りにキャーキャー叫んでいる次第でもあります。

友人に見せたら嵌ってくれましたし(笑)

痛い伊達も、熱い幸もおかん佐助も大好きですv

そんなBASARA萌えにセインの好みをとてもよく熟知していた友人は「あぁ……幸村って好みそうだよね」と呆れられましたが……ごめんなさい、めっさ好みです(笑)

時代設定が色々おかしいですがBASARAだからで許せますよね!だってBASARAだもんで、許せますよね?

ここで、叫んでも許されますよね?

はい、叫びます。


「お館様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


色んな意味でスッキリv

キングダム・ハーツ2で切ない切ないと叫んでいたセインは何処へいったのやら……(でも、FF12を考えている最中)

だって、ストーリー面白いんだもんv

「……愛子?」

元々白い顔を更に白くし、みるみるうちに顔を青ざめていく愛子に、修は驚き、立ち上がりその震える体に触れようとするとバシッとその華奢な腕からは想像出来ない程の強い力で押し返された。

予想していなかった出来事に目を大きく広げ見つめるが、愛子は固まっている修を他所に、まるで視界から消えたように、両腕で震えを止めるように抱き締め「どうして……どうして……」とただ呟くだけ。

「愛子?愛子!!」

理解出来ないが怯える愛子を落ち着かせようと、乱暴に体を揺さぶり大声で名前を呼ぶ。授業中で誰もいない静かな中庭に響く声に教師の存在に気を配るが教師が駆けつける様子はない。

それがホッとする反面、まるで隔離された空間になったようで修を孤独へと誘う。

(……まるで、ここにいる事も夢のようだ)

愛子は落ち着いたようで、もうぶつぶつと呟いてはいないが、まだ体の震えは収まっておらず、ただ薄い瞳を修のほうに向けず下へと向けている。修は仕方なくソッと愛子から手を離し、再び池の中を覗いた。

確かに今の愛子の様子も気になるし、離れてはいけない気もしたが、やはり、先ほどの声の方が修の気を寄せさせる。

もう、声は聞こえずにただ……ただ深遠のような青色の水と魚が泳いでいるだけ。

それでも、目を離せずにジッと池の中を見つめていると、後ろで棒のようにたっていた愛子が修へとポツリと呟いた。

「……なんで、修にも聞こえたの?」

「な……に……?」

振り返ると虚ろな愛子と目が合う。

「ねぇ、なんで?どうして……あいつらの声が聞こえたの?ねぇ!どうして!!」

普段の落ち着いた、大人しい愛子から激しく弾叫されてたじろぐ。どこか必死めいた様子は狂気しているようにさえ見える。

「俺こそ……聞きたい……何で愛子が知ってるんだよ……」

「……私は……私が倒れるようになったのはあいつらの所為だもの……」

「ど、いうことだ?あいつらって……なんだよ……?」

「………小学校くらいから私……倒れるようになったでしょ……それ、あいつらの声や夢を見るようになってからなの……」

ポツリポツリと紡ぎだされる真実に心臓が張り裂けそうなほどドクドクと血液を激しく流す。喉はもうカラカラ。

「あいつらっていうのは……修が見てる魚のことだよ……」

ドックン。

「夢の……内容を教えてくれ……」

「ん……男性の人と女性の人の夢で……」

壊れたポンプのように心臓が動く。

何故か喉が痛い。

乾きなどとうの昔に通り越し、火がついたように熱い。

(夢が……)

あの夢が。

「最初は恋人同士みたいなんだけど……最後は……女性が刃物を持っていて……その次は……真っ赤な……」

そこからはグッと唇を噛み、青い顔をし押し黙り、もう何も喋ろうとしない。が、修はその風景ではなく幻想を見た。

薄暗い水の中へと落ちる幻想。

(……重なった)

愛子が悲鳴めいた声で自分の名前を呼んでいるのが聞こえる。一瞬にして視界は水の中から暗転へと変わり。

落ちていく。

落ちることしか。

出来ない暗闇に。


―あぁ、喉が乾いたな―



誰かが泣いている。

誰かの声が聞こえる。

『帰っておいで……』

フルフルと首を振る人影。

『消えてしまうよ……』

ただ涙を流す。

『帰っておいで……』

もう一度問い掛けてくる声に人影がソッと顔を上げて見る。

その視線の先には。

頬を赤らめている男性と女性。

男性はいつも見ている夢の男性だが、女性は知らない―夢の中でも見たことがない女性。

幸せそうに寄り添う二人に理解する。

この影は。

この影は。

いつも見ていた夢の中の女性。

女性は涙でぬれた瞳を上げると口を動かした。

声が出ないのか、ただ口を動かすだけで。

でも、彼女が言った言葉はわかった。

『愛していたの……』

『だから……水の中から上がってきたのに』

言うやいなや、人間の足をしていた彼女の足が輝く尾びれへと変わり……。

夢の中で泳いだ瞬間、砂へと変わった。



ハッと目を開けると、愛子が心配気な様子で覗いていた。

「……夢……みてた……ここ、どこ?」

夢という単語に眉を寄せたが、「修の家」と小さく短く言った。

「倒れて……そのまま、修の家まで運んでもらったの。おばさんとか、皆で払ってていないみたいだから鍵、修のカバンの中から勝手に借りたよ」

立ち上がり、はいと修に水を差し出す。冷たい水が喉にスッと馴染むが水を求める渇望に似た思いは止まらずぐしゃりと髪を掻き揚げ息を吐き捨てる

焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感焦燥感……


『時間が……ないよ……』


声が聞こえ。


「……『夢』がかわったの……こんなことなかったのに……かわったの」


鍵は重なり物語は進む。

悲しかな、人魚姫。

消える定めの命を。

泡になる命を。

悲しかな、人魚姫。



喉の渇きが日に日に増していく。

修はベットの上で飛び起きたままの状態で、喉の渇きを喉を覆うように手をおくことでやり過ごした。

「……っ!」

滝のように流れる汗と毎度みる同じ意味の分からない夢。苛立つ感情と言い知れない焦燥感がまだ、現実を掴めていない体を襲う。

軽く息を吐き、ギシリと音をたててベットから起き上がると軽い眩暈を起こしたようで、気が付いたらまた、ベットへと舞い戻っていた。

其処から見える景色は天井のはずなのに、視えるのは水の中から見る揺らめく月の色。

ゆらり。ゆらりと。

深く。

潜る水の中。

『消えてしまうよ・・・…』

頭の中の誰かが言った。


どうも、ここ最近体の調子がおかしい。

修は淡々と説明される化学の数式をBGMにし、シャーペンを器用にくるくる回しながら思った。今日の朝のようなことも喉の渇きも時間、日にち関係なく、いや、それ以上にここ毎日修の体を襲い蝕んでいく。しかも、それは日を追うごとに強くなる一方で、どれだけ飲料水や眠り、または薬まで手を出したというのに全く改善される様子はない。

このままでは本当に脱水のあまり死んでしまいそうだ。

(今も……喉が渇く・・・…)

授業の前に飲んだ500mlのペットボトル一本では足りないようで、修はポケットからこっそりアメを取り出し口の中へと放り込んだ。

乾いた喉に甘酸っぱい作られたみかんの味が溶け込む。

美味しい。のだが………

(違う、こんな味じゃなく……)

欲しているのはもっと別の味。

まただと思いながら、授業中だというのに机の上に倒れこむ。

何を欲しているのか検討もつかないのに、頭の中で何かを口にするたび違うと思う。もっと、甘く、淫靡で濃厚で背徳な味。欲しているのはそんな味なのに、それが一体何でどんな味あのかもわからなく、それを考えるたびに脳裏に写しださえるのは懐かしいと感じてしまう暗い海の中と見知らぬ男と女の姿。

それは夢と同じで。

男はいつも優しげに笑い、女はいつもその男の姿を見ている。

夢の中で幸せそうにする二人なのに、夢の終りはいつだって深い暗い水の中。水の中で溺れるわけではなく、ただ修はたくさんの声を静かに聞いているだけ。

『消えてしまうよ』

『外れてしまうよ』

『帰っておいでよ』

『『『だから……』』』


そこから先は闇の中。


ズッと。

音がしそうだなと思ってしまうほど、体が重く、修はずるずると壁に背中を引っ付けたまま座った。

授業に出る気がおこらず、修は昼休みのまま自主休校をさして貰うことに決めた。目にはコンクリートと反射する太陽の光。と。

「ずる休みだね、修」

「……愛子」

薄い茶色の長い髪を夏だというのに結びもせず背中へ流し、黒より茶色に近い瞳に修を一杯映して覗ききんでくる美少女と名高い愛子の出現に修はげんなりした様子で答えた。

出来れば今は一人にして欲しいと態度で語る修にケラケラ笑いながら修の気持ちに分かっていながらも愛子は修の隣に腰を下ろした。

白い肌を持った愛子はその姿から分かるように病弱で学校にも中々顔を出さない。太陽の日をあまり浴びない体は透けるように白く細いが性格はその容姿から想像もつかないほど淑やかから程遠い性格をしている。

「・・・・・・授業はいいのかよ?」

「まぁまぁ、硬いこと言わないの。私と修の間じゃないの」

「たんなる幼馴染の関係だろ?」

あは、と笑う愛子に修はハァと嘆息し、寒くなり始めた秋風にあたって愛子が体を壊さないように羽織っていた上着を脱いで愛子に照れ隠しから乱暴に渡した。

愛子は上着を素直に受け取り、羽織るのを見届けるとさっさと愛子から視線を外し自分の世界へと没頭した。愛子が最近様子のおかしい自分を心配し、屋上まで様子を見にきたのは、本人の口から決して言わないだろうが長い付き合いだからわかる。それには感謝するが、どうしても今は愛子にまで気を使う余裕がない。

愛子もそんな修の心情が分かったのか、何も言わずただ、傍に座り、二人、静かな時間を過ごす。

いつまで、そうしていたのか。

喉の渇きを覚え、持ってきたペットボトルに手をかけるがその中身も空になっていることに気付き、修は舌打ちすると立ち上がった。

「どこ行くの?」

それまで静かだった愛子が修の服の裾を掴み聞いてくる。

「飲みもの買ってくるだけだよ」

「ふ~ん……私も行く」

あっそと言葉短く二人、体育館までにある小さな中央広場まで教師に気をつけながら歩きだす。歩きながら、ぽつりぽつりではあるが、会話を交わした。

「最近、飲んでばっかりいるね」

「喉、渇くんだよ」

「ちゃんと寝てる?目の下隈出来てるよ?」

「……夢みがわる」

『消えちゃうよ』

ぴちゃん。

夢を。

見ているわけではないのに、脳裏に聞こえた声に修はハッと足を止めた。修が足を急に止めたので、その一歩後ろを歩いていた愛子がドンと修にぶつかり、修を驚いたように見上げるが修はそれに気付かずに、声がした場所を探す。

ぴちゃん……。

水がはねる音のまま。

見るとそこは校長が憩いになればと考え作られた池から音がし、修は音に誘われるまま池へとフラリと近づいた。

「ちょ、修、見つかっちゃうよ」

慌てて修の後を追う愛子を無視し、修は池の中を覗き込むと鯉が驚いたように一瞬早く泳ぐが、すぐに自由きままに泳ぎ始めていた。

「どうしたの?」

何かいた?と修にならって池を覗き込む愛子。

「声が……聞こえた……」

誰にいうつもりもなく呟いた言葉だったのだが、その言葉に愛子は傍目でもわかるほどにビクっと体を強張らせた。


霊界門社は霊界と人間界の架け橋のような仕事をする場所だ。

霊界の仕事の手伝いのようなことをしている。死んだ人間の魂の回収や冥界からのものが人間界へ降りてきた時の対処など大雑把に言えばこんなもので、ようは霊界の雑用係のようなものである。

霊界門前で働く会社、という意味で霊界門社と簡単につけられた社名の癖にその仕事量は半端ではないといつも、美貴は愚痴をこぼす。

美貴が働く霊界門社は美貴をはじめ、まだ、現世で生きている者が多く、そういう者は普段の生活をしながら、夜な夜な、それこそ、深夜を這いずり回るように仕事をしている二重生活者ばかりだ。

だから……


「だから、仕事量を減らしてください!!」

バンッと上司である、神谷に今日も負けずに抗議をおこした。

「部長は死んだ人間だから、昼とか、学校とか考えなくてもすむでしょうけど、私はまだ生きてるんですよ!!こんな二重生活いつまで続けろっていうんですか!!」

クッと涙を堪えながら訴える美貴に神谷は、またか、というように渋い顔をして眉間を押さえた。

今日も今日とて、社内ルームで唯一つ木製で出来ている神谷上司の机は潔癖症の彼らしく、塵一つなくワックス後のようにきれいに光っている。

渋い顔をしたのは、手形が付いたら嫌だなと思ったからでもあり、何度も聞いた抗議に耳についた蛸が増えた気がしたからだったりする。

「凛、その話は何度もしただろう。死ぬまで無理な話だろうし、それはお前も承諾してこの仕事を引き受けたのだろう?」

神谷は茶色がかった目に申し訳ない程度にかかった前髪を鬱陶しそうに払った。

「大体、お前ももう、古株とまではいかないにしても新人社員じゃないんだから、もうそんな台詞を吐くのは止めたらどうだ?」

子供に言い聞かせるように言ってはいるが、その姿は面倒だと語っている。が、そんなことで諦める美貴ではない。自分の意見が通るまで、何日でも何年でも言う覚悟はこの四年で出来上がっている。いうなれば、四年も同じことを言い続けているということだが。

「確かに承諾したことですが、こんな生活続けていたら、また死んでしまいます!!」

堪えきれず泣く美貴に、上司の態度は冷たい。

「はい、泣きまねは終わりにしてお仕事に行ってね」

上司の机に突っ伏している美貴の頭の上に一枚の紙をおいた。美貴が頭を上げれば、その紙は重力に従ってズルリと美貴の頭あら落ち、ピカリと光る机の上にちょうど、美貴の目の前に自分の置き場を落ち着かせた。

その紙の上に書かれた『今回のお仕事』に美貴の顔が渋くなる。ちなみに、その目には涙の後などない。

「今回はパートナー付きだからな、前回のように単独行動するんじゃないぞ!」

「……前回は個々でしたほうが早く終わるからしただけですぅ……悪魔帰巣……面倒な仕事、押し付けられましたね」

ハァと上司に対する態度ではないが、美貴は関係ないとでもいうように軽く睨むと神谷はその男とは思えない丹精な顔に極上の笑顔を作り返してきたのだった。

「……おかしい」

無我夢中で、走ったものの、人っ子一人誰とも会わない。深夜だからかと思い、病室を空けるとそこは空っぽで誰もいない。

きれいに整頓されたシーツとベットが並んでいるだけの病室に意味もわからず、鳥肌がたつ。

病院を出て行こうとしても、玄関、窓あらゆる外へとつながる場所から外へと出て行こうとしても、何故か同じ病院内へと戻ってきている。

何度も何度もためし、真は諦め、院内を詮索している最中なのだが、ナースセンターも物抜けの殻。

少女と会って、何時間たったのだろう。いや、それほど、時間はたっていないのかもしれない。

ハァとため息を吐くと真はその場に座りこんだ。

「……俺が何をしたっていうんだ」

家に帰りたい。

今は家が思い出さないが。

ともかく、この病院から出たい。

出たいのだが、出れない。

どうするべきか、と真が考え込んでいるとき、サワ・・・・・・空気が動いた。

「……え?う、わぁ!?」

ガン!!

伸びてきた黒い影。真が間一髪で避けなければ、真は影による破壊力によって、つぶされていたかもしれない。

「な、な…!?」

影は一瞬、真がいた辺りを覆ったが目標がいないと認識したのか、広がった影を元通りに凝縮し、真の方へと影をまた伸ばした。

「ちょ、なんだって言うんだ!!」

真は起き上がると、また、歩いてきた廊下を走り戻る。

影は目があるかのように、真を追って伸びていく。

「つぅ・・・!?」

「こっち」

「!?」

グッと手を掴まれ、真はつんのめりながら、階段の踊り場へと放り出された。

手を掴んだ人物を見上げると、先程の少女が。

厳しい顔つきで、伸びてくる影を睨んでいる。

「……今更、仲間増やした所で何もならないでしょうが……!!」

少女は早口で、何かを唱えながら、胸に下げていたペンダントを乱暴に引きちぎった。

キラキラと光るペンダントに付いた宝石。よく見れば、暗いところではわかりづらいが、たくさんの装飾品が不似合いなほど彼女は身に着けている。

一本線だった影が少女を前に口を開けるように、ブワッと広がる。が、少女と影がぶつかる寸前にバチリと大きな音を立て、火花のように影の口の部分が散った。が、影は諦めず少女へと突進するのだが、まるで、少女と影の間に見えない壁があるかのように、影の先端は少女に触れることが出来ずにバチバチと少女のギリギリの所で音をたて止まっている。

現実離れした出来事に真が目を見開き、両者の動きを見守ることしか出来ない。もちろん、体も。全身が金縛りにあったように動けないでいた。

「あ、あ・・・・・・」

ガタガタと全身が振るえ、意味不明の言葉が勝手に漏れる。

そんな真を少女はチラリと横目で見ると、チッと舌打ちをし、ダンっと音をたて後ろへと飛ぶ。
飛ぶと同時に、少女はまた別の言葉を唱え………

「!?」

ガシャンッ!!!!

窓ガラスに自身の腕を叩きつけた。

少女の細い白い腕が一瞬にして真っ赤に染まり、辺り一面に血の匂いが充満する。それでも、少女は顔色一つ変えずに未だ、何かを言い続けている。その間に遮るものがなくなった影は少女へと迫りきて。

「危なっ!!「――……終わったよ」

「え……」

ダラダラと。

流れる血を傷ついていない、もう片方の手で救い上げるような動作をしたかと思うと、その手には真っ赤な鋭い釜が握られていた。

「!?」

目を見開く真に見向きもせずに少女は影を正面にすえ、ニィと笑う。

「そんなに消されたいのなら消してあげるわぁ~」

やる気のない間延びした声とは裏腹に機敏に影に反応し、正面から突っ込んでいく。そのまま無駄のない動作で伸びてきた影に体をギリギリで捻り避けると、その勢いで釜の刃で影を裂いた。

真っ二つに割れた影は、元に戻ろうと触手のようなものを何本も出し、互いを引き寄せるが

「無駄よぉ~……私、これでも、認定血呪されてるの」

ごめんね、と呟くと「散!」と片手の指を器用に絡ませ発した。すると、同時に、影が裂けた部分を中心に弾けとんだ。

散り散りになり消えてゆく影は最後には跡形もなく消えうせていた。

少女は、影が全く無くなったのを見届けると、ハァと息を吐き、まだ、動けずに青い顔をしてガタガタと震えている真にその丹精な顔を向けた。

「あのね~、あんたが逃げなきゃこんなメンドクサイことにならなかったんだけど?」

「え、え……?」

カツカツと近づき、へたれこんでいる真の顔を怒った表情で覗き込む。だが、その表情はどこか、小さい子供相手に言い聞かせるような雰囲気を出している。

「す、すみません……」

少女に気おされ謝ると、少女は納得したのか、わかればよろしとニッコリ笑う。

「あ、あの、さっきの化け物は……」

まだ、現れるのではないかと、キョロキョロと辺りを警戒する真に少女は苦笑する。

「あぁ、大丈夫大丈夫。っていっても、また、あの影は再生するんだけど……まぁ、当分は大丈夫」

「さ、再生?」

(また、あんなのが、出てくるのか!?)

再生という言葉にギョッとする真に少女は極自然に頷く。

「あれは魍魎っていって、本来単体なら害にもならない弱い魂―幽霊、怨霊といったらいいかな?そういうものが引っ付きあってしまったもの。だから、完全に消すことは出来ない。あれが消えても、また別の魂を核として生まれるからね。

強力なものなら人間も襲うけど、あれはまだ、成長過程のものだったから、そこまでの力はなかったから放っておいてもよかったんだけど……あんたがウロウロするからぁぁぁ」

もう、面倒だったと肩を揺らす少女にハァと気の抜けた返事を返す。

真っ白な頭でボーと少女を見上げる真に少女が微かに小首をかしげる。

「もしかして、あんた……」

「主、その者、気づいておらぬようだぞよ」

「みたいっスね、黒石……マジですか?」

「っ!?ひょ、豹!?!?しゃ、しゃべ・・・!?!?」

気配なくあらわれた黒い豹と、その豹が喋り、二重に驚く真を完璧無視し、少女と美しい毛並みを持つ豹は互いにハァと嘆息した。

「なんだ、逝くのが嫌とかじゃないのか……」

「だから、最初の説明は大切だといつも言っているのだぞよ」

「ウ……、分かってるよぉ。ごめんって……黒石」

「面倒がるから、さらに面倒なことになるのだぞよ」

「ちょ、あの、無視しないでくれませんか?」

「「あ?」」

「うっ……」

両者にジロッと見られ、気おされる真。

(俺、悪いこと何もしてないのにぃぃーー)

やったことなど、怖くて逃げ出したことだけ。誰だって、誰もいない病院に不似合いな少女があらわれたら逃げるに決まっている。

いじけ、凹む真の耳に、「主、その腕……」と黒石と呼ばれた豹の言葉にハッと思い出す。

(そうだった……確かあの時、腕を……)

「あ……、その、大丈夫ですか?」
顔を上げ、尋ねると、少女はん?と笑顔を返した。

「今の私もあんたと同じようなもんだから……て、自分の状態分かってないんだよね?」

(自分の……状態?)

ぼんやり見上げる真の視線にあわせるように前に肩膝を立て、座る少女。

「本当に……何も思い出せない?」
探るように瞳を合わされる。反らすことを許さない、その瞳の強さに魅せられたように見つめた。

その瞳の奥に映った姿に。

目を見開くまでは。

「……思い……だした?」

「あ、俺は……」

少女の瞳の奥底に映っていた自身の姿は、皺だらけの年老いた老人の姿。

恐る恐る自分の両手の掌を見ると、さっきまでは若い、貼りも、つやもあった手ではなく本来の皺だらけの手へと戻っていた。

「そ……だ……わしは……死んだのか……」

「……そうよ」

静かに真実を告げられ、真は「そうか」とだけ呟いた。

「だったら、あんたはわしのお迎えか?」

「まぁ、そんなもん。自己紹介がまだだったわね。私は霊界門社、西部関西地区担当の美貴 凛。あんたを冥界門へと送ります」

凛と抑揚のない声で自己紹介をする少女―凛に真はフムと頷いた。

「まさか、お迎えがこんな女性とは思わんかったわ……それとも、お前さんの年はわしより、遥かに年がいっとるのか?」

「……うんにゃ、この容姿通りの年齢よ……まぁ、お喋りは終わりにして、もう、逃げないよね?」

クスリと笑う凛に真は目を閉じた。




「……お仕事終わり!!」

無事、畑 真を霊界への奥底にある冥界門に送り届け、上司への報告書―魍魎との戦闘の際に破壊した窓や秘力石などの経費等等、そのほか細かな書類作成を届け終わり、凛はう~んと伸びをした。

「やっと寝れる……」

学校がぁと叫ぶ凛の隣で黒石が思い出したように呟く。

「そういえば、主よ、宿題とやらはやったのかぞよ?」

「……こ、こんなの労働基準法違法だぁぁ!!」

叫ぶ凛のを尻目に向こうの山陰から朝日がキラリと光ったのだった。



                                    (紅の夢 終わり)

はたして。

運命というもの神が決めるのか。

それとも、自身が決めるのか。

それとも……

変わることのない運命に足掻らうことは果たして誰も出来ないことなのか。


真夜中の病院。

の屋上で少女が一人、フェイスを超え、空に向かって足をブラブラと泳がしていた。もし、滑ったりしたら、そのまま、地上へと転落し、死んでしまうだろうが、少女は畏怖した様子もなく鼻歌を歌う。

何故、深夜ともいえる時間に少女が一人、本来は許可がいるであろう、病院の屋上で足を放り出しているのか。

誰もが思うことだろうが、回りには誰もいない。

「……主、そろそろだと思うが?」

少女の背後にどこからか一匹の黒豹があらわれ、人の言葉を話したが少女は驚いたようすもなく、黒豹へと振り返り、ただ、ニヤリと笑っただけだった。


「はて、何故俺はこんな所にいるんだ?」

畑 真は自分がいる場所に首を大きく傾げた。

ここは、病院の通路。で、自分はというと一昔前の襟つき学生服に身を包んでいる。

誰かの見舞いで来たのかと、考えてっみても、思い当たる節もなく、それならそれで、昼の時間帯にくればいい。今は誰がどうみても深夜だ。こんな時間で外来客を入れる病院はいないだろう。

(……わからん)

うむ、と一通り考えるのを止め、一歩踏み出し、真は歩くのをやめた。

「……俺はどこに行けばいいんだ?」

何故ここにいるのかもわからない。

どこへ行けばいいのかわからない。

「え、え、え・・・・・・・!!」

思い出そうとしても、何も思い出せない。

何か。

何か。

何か思い出そうとしても、頭は霞みがかったように何も思い出せない。

カツン・・・・・・。

深夜の病院内にヒールの音は大きく響いた。

いや、響くはずなのに、真はその音を間近で聞くまでまったく聞こえなかったのだ。

「はぁ~いv畑……真さん?よね??」

「な、んだ……お前は……?」

カツンと再びヒールの音を響かせる人物は年端もいかない少女。

中学か高校くらいなのだろうか、幼い顔つきだが、夜目にもわかる赤い唇とスッとした二重の切れ長の瞳をニンマリと歪ませ、少女は立ち止まっている真へカツンカツンと足音を響かせ近づく。

カツン、カツン、カツン、カツン・・・・・・。

異様に響く足音。

(ど、どうして誰も来ないんだ!?)

何かがおかしい。

何かがおかしい!!

少女を取り巻く空間が。

病院内が。

すべてが何処か日常とかけ離れている。

恐怖が一気に真を襲い……

そして。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「あ、ちょっと・・・・・・あっちゃぁー……」

走りだし、逃げ出してしまった真の背中が一瞬、ぼやけたかと思うと一瞬にして消えてしまい、残された少女は頭を抱えた。

「主、逃げ出したぞよ?」

「……わかってるよぉ、黒石……絶対、わかってないよなぁ、あれ、自分の立場」

「わかってないから、逃げ出したのだろうぞよ。主」

「はいはい。追いかけますよぉ、もう、めんどくさいなぁ」

少女はハァとため息をつくと、スッと切れ長の目を閉じた。