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(サイトに載せていたものです)



「このシングルで櫻坂46を卒業します」


その瞬間、時が止まったように周りの景色が見えなくなった


理佐さんが卒業する..考えないようにしていたことが現実になってしまった。



手の届かない体の奥深くに、冷たい水をかけられたような気持ちになり頭が真っ白になる。



言葉にできない悲しみに全身を支配されていると、喪失感で乾いた目に滴るほどの涙が溜まっていき、

割れたコップの欠片のような涙が一滴私の服の色を変える。



だめだ、ここで泣いてしまっては理佐さんに迷惑をかけてしまう。



私には理佐さんを止めることはできない。



してはいけない。





それから、理佐さんの卒業コンサートまでの毎日は稲妻の如くにあっという間に過ぎていった。



理佐さんと作り上げてきた沢山の曲を披露して、走馬灯のように思い出が溢れてくる




最後の曲も披露し終え、もう”櫻坂46”渡邉理佐ではなくなってしまった。




最後に私は理佐さんを安心させてあげれただろうか。


いつも私達を気にかけてくれて、

いつもやりたいようにやっていいよと

声をかけてくれていた。


私はそんな理さんに感謝を伝えられたのか、

最後まで心配かけていたんじゃないか、



お姉ちゃん・・


蚊の鳴くような声でつぶやくと背後から

絹布の肌触りのような優しくて、落ち着いた私の大好きな声がした。




「天ちゃん。お疲れ様」



精一杯の笑顔を浮かべて、笑う



「理佐さんこそ、お疲れ様です」



Buddiesの言葉嬉しかったよ、ぴったり収めるなんて天ちゃんは流石だね」


「ありがとうございます、、スタッフさんに呼ばれているのでいきますね」


今、理佐さんと話すときっと気持ちが溢れてしまう。


その場から早々に離れる



楽屋にはみんないるから、、と思って

誰もいない場所に向かう。


その時に保乃とすれ違った気がするけど、それを気にする余裕はなかった。



誰もいないところまで来ると、せき止めていた思いが溢れてきて涙が止まらなくなってしまった。


もうどうしようもない涙は私の呼吸まで奪っていった。


その時、背中に暖かみを感じてふと楽になった。


「天ちゃん、大丈夫やからな」


この声は保乃か、


保乃の柔らかい声が私を包み込む。


「天ちゃん泣きたい時は泣くんやで?理佐さんも言ってたやろ?」


変わらない関西弁で話す保乃の優しさに私の涙は流れ続けた。



少し落ち着いた頃、保乃が話し始めた。


「天ちゃん全然理佐さんに甘えへんもん。無理してたんやろ。

甘えない天ちゃんなんか天ちゃんちゃうからな〜」


「私ってどんな印象なん?」


「保乃たちの甘えん坊の可愛い末っ子」


「だからさ、もっとわがまま言ってええんやで?」




「あっ天ちゃんいた〜」


「理佐さん、、」


保乃が私の頭をポンっと一回撫でて、去っていった。


「天ちゃんどうかした?」


「、、、理佐さん辞めないで」


「わがままいってごめんなさい。でもまだ理佐さんと一緒に活動したい、」


「知ってた。天ちゃんがそう思ってるのもわかってた」


「じゃぁなんで、、」


「もう天ちゃんには私の手はいらないと思って。こんなにおっきくなってくれたんだから。次は天ちゃんが手を差し伸べる番。私の可愛い妹ならできるでしょ?」



理佐さんの卒業は理佐自身の決意だってことは頭では分かっているつもりだった。

でも、やっと分かった気がする。


お姉ちゃんの背中を追うのはその背中を見てきた妹。


私の役目。理佐さんは私に役目を残してくれた。


「できます。もちろんです!」


「天ちゃんなら大丈夫。でもどこにいたって妹なんだから、しんどいなと思った時は頼って甘えていいんだからね?」



あぁ、やっぱり理佐さんは理佐で、お姉ちゃんで私の大好きな人だ。



「理佐さん、卒業本当におめでとうございます」




抱きついた理佐さんの体温はまた私の涙を誘うほど、暖かかった。






??「ちょっとやめてください。うちの的野を」