【大事なことは些細なことから生まれる】
リチャード・ワイズマン氏の心に響く言葉より…
スタンフォード大学の心理学者アルフレッド・バンデュラは、偶然の出会いと運がプライベートな生活に及ぼす影響を研究している。
バンデュラによれば、偶然の出会いはどこにでもあり、しかも強大なパワーを持つ。
そして「人生にとって最も決定的な要因は、最も些細なことから生まれるものだ」という。
それを裏づける実例の一つは、バンデュラ自身の経験でもある。
大学院生時代に授業の予習をしていたバンデュラは、気分転換に友人と近くのゴルフ場へ行った。
コースに出ると、前の組は魅力的な二人の女性だった。
四人は二組に分かれてマッチプレーを楽しんだ。
ゴルフの後、バンデュラは一人の女性と次のデートの約束をして、ついにはその女性と結婚した。
ゴルフ場での偶然の出会いが、彼の人生をすっかり変えた。
パンデュラがもう一つ紹介しているのは、名前の単純な混同から、ロナルド・レーガン元米大統領が未来の妻ナンシーと出会った偶然だ。
一九四九年の秋、女優のナンシー・デービスは、ハリウッドの新聞に掲載された共産党支持者のリストに自分の名前を見つけた。
まさかと驚いたが、実は同姓同名の女優がもう一人いたのだ。
ナンシーは、そんなリストに名前が載ったら仕事にさしつかえるだろうと心配になり、担当の演出家に、ちょうど映画俳優組合の委員長だったロナルド・レーガンと相談してほしいと頼んだ。
レーガンはその演出家に、ナンシーが共産主義者だと誤解されて不利な扱いを受けるようなことがあれば、組合が彼女を守ると約束した。
ナンシーは自分もレーガンに会って、もう少し相談したいと思った。
こうして二人は対面し、恋に落ちて、まもなく結婚したのだ。
ここでも一つの幸運な出会いが、その後の二人の人生をすっかり変えた。
運が仕事上の選択や成功を左右することについても、多くの専門家が研究している。
幸運と不運は決して些細な要因ではなく、偶然の出会いやチャンスが仕事の方向を大きく変え、予想外の昇進をもたらした例はたくさんある。
アメリカのある著名なキャリア・カウ ンセラーは、運が仕事上の生き方を左右する力について、次のように述べている。
「予想外の決定的な出来事がキャリアに大きな影響を与え、予想外の些細な出来事が小さな変化をもたらす経験は、誰にでもある。
生き方を左右するような予想外の出来事は、毎日のように起きている。
幸運は偶然ではない。幸運はどこにでもあるのだ。」
『運のいい人の法則』角川文庫
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「計画された偶然(プランド・ハプンスタンス・セオリー)」はスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって提唱された。
個人のキャリアの8割が、予想できない偶然の出来事によって左右されるというものだ。
それは、「慎重に立てた計画より、想定外の出来事や偶然の出来事が、キャリアに影響を与えている」、「人生には偶然の出来事はかなり頻繁に起きている」ということ。
そして、その偶然に対してポジティブなスタンスでいると、キャリアの成功を得やすいというものだ。
キャリアには、仕事やビジネスだけでなく、人の生涯やプライベートな人生という意味も含まれる。
野球のイチロー選手や、大谷翔平選手のように、子どもの頃からの夢や目標を実現したという例もあるが、これはほぼありえない確率で起きた奇跡的な事例。
ほとんど大多数の人は、予期せぬ偶然に翻弄されながら、自分のキャリアを積み重ねていく。
そして、その中でも、成功した人たちは一様に、肩の力が抜けている。
「こうでなければ嫌だ」、とか「ここは絶対に曲げない」というようなこだわりがない。
クランボルツ教授は、よき偶然が起こるためには5つの考え方が大事だという。
それが、「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」の5つ。
目の前の出来事に対して、好奇心を持ち、楽観的に、柔軟に考え、冒険心を持ち、チャレンジすることを生涯持続し続ける。
肩の力が抜けている人の特徴だ。
それが、つまり「運」のいい人。
「大事なことは些細なことから生まれる」
「人生にとって最も決定的な要因は、最も些細なことから生まれるものだ」という言葉を胸に刻みたい。