【chatGPT時代を生き抜くために】



山口周氏の心に響く言葉より…


生成AIのテクノロジーのベースにあるのは統計です。

ある質問を受けたときに 言語生成AIである ChatGPTは、仮想空間にある情報を探索して、最も出現率の高い回答から順に答えていくことをやっているわけです。

質問する側が意図的に探索空間を限定しない限り、ChatGPTはネットの仮想空間において「統計的に最も頻繁に出てくる答え」を回答として出してくる。

だから 最も標準的な回答を知りたいときは、ChatGPTに聞けばいいのです。


言い換えると、ChatGPTは統計でいう正規分布グラフの山の一番高い部分、つまり両端から数えてちょうど真ん中のところ、「中央値」を答えとして出すということです。

統計の中央値ですから、往々にして「それはわかるけど、まあ当たり前だよね」といった内容になりがちです。

これに対して統計的に出現率の低い、正規分布グラフの山から大きく離れた値を「外れ値」と言います。


人間は「中央値」での勝負ではChatGPTに勝てるわけがありませんから、必然的に「外れ値」で勝負したほうがいいということになるわけです。

しかし、外れ値で戦うと言っても、単に奇抜なだけ、トリッキーなだけでは意味がありません。

「意外だけど納得感がある」「思いもよらない答えだけど、その手があったか! と思える」、そのような「外れ値」が求められるのです。


市場調査の結果を踏まえて事業を進めることも、やはり中央値の考え方です。

その結果、滅びてしまったのが日本の携帯電話産業でした。

デザイナーの原研哉さんが言っていることですが、「センスの悪い国で市場調査やマーケティングをきちんと行うと、センスの悪い商品が出来上がる」というのですね。

それこそがまさに日本の携帯電話産業で起こったことです。

センスの悪い国でマーケティングをしてセンスの悪い商品を出し続けた結果、かつての隆盛は見る影もなくなってしまいました。


このような状況を見たスティーブ・ジョブズは「なぜ携帯電話はこんなにダサイのか?」という視点からiPhoneを発想し、世に出したわけです。

ではその当時の市場調査の結果としてiPhone的なものがどのくらい求められていたかというと、 これはもう完全な外れ値で、消費者の誰もがそんな製品は想像すらしていませんでした。


2003年に創業されたテスラも同じです。

その当時に市場調査を行えば、大多数の人たちは電気自動車など見向きもしなかったでしょう。

市場調査の結果から見れば、一番太い需要は論理的には中央値のところにあるわけです。

それを頼りにした戦略を採っていたならば、テスラの電気自動車もアップ ルのiPhoneも生まれなかったでしょう。


一方、中央値のところでずっと戦い続けた結果としてグローバルな競争に苦戦しているのが日本です。

しかし、市場に顕在化しているニーズの太さを確認しながらそれに応えていくというリアクティブなやり方をやっていては、テスラのような事業は生まれないと思います。


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自動車王のヘンリー・フォードはこう言った。


「なにが欲しいかと顧客に尋ねていたら、『足が速い馬』といわれたはずだ」。

人々はみんな、実際に”それ”を見るまで、”それ”が欲しいかなんてわからないものなんだ。

だから私は、市場調査に頼らない。

私達の仕事は、歴史のページにまだ書かれていないことを読み取ることなんだ。



また、スティーブ・ジョブズはこう述べている。

「製品をデザインするのはとても難しい。

多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ。

消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。

完成するころには、彼らは新しいものを欲しがるだろう」


これから生成AIは想像を絶する速さで進化していく。

それは、シンギュラリティが幾何級数的に早まっているということだ。

シンギュラリティとは、AIが進化して人間の知性を超える転換点(時期)のこと。


落合陽一氏は「2025年にシンギュラリティが訪れる」と言っている。

かつてそれを唱えた、カールワイツ氏の予測より、なんと20年も早まった。


chatGPT時代を生き抜くために…

中央値ではなく、「外れ値」で発想する人でありたい。