【AIが日本の追い風になる】


北海道大学大学院教授、川村秀憲(ひでのり)氏の心に響く言葉より…


最近、日本や日本経済に関しての話題は悲観的で夢のないものばかりが多く、世界各国からの遅れや先進国からの「脱落」など、先行きを憂う論調が少なくないと感じます。

一方で、そんな日本だからこそ、じつはAI時代の大きな変化を先取りし、「先行」できる大きな可能性を秘めているといったら、にわかに信じられるでしょうか?

しかしこれは、日本、あるいは日本人の大きな特徴であり、また知られざるメリットです。



1.《人手不足》

まずは、日本はすでに、否応なくAIの手を借りざるを得ない社会構造になっている点です。

少子高齢化は、簡単には止められません。

ところがここに来て、要介護者はどんどん増えているのに介護をしてくれる人がいない、海外から観光客は押し寄せているのにホテルや旅館などで働き手が足りていないなどといった問題が広く共有され始めています。

すでに多くの現場で外国人労働者や実習生、留学生が働いています。

つまり、「借りられるならAIの手も借りたい」のが日本の現状です。

言い換えるなら、日本はAIの開発や導入に積極的な動機を持っている国だと言えるわけです。



2.《ロボットへの親近感》

ふたつ目は、とても意外なポイントです。

日本の文化のなかで育ってきた人たちには、AIやロボットに対する「抵抗感」が少ないのです。

日本では「かわいい」「賢い」などとロボットに感情移入したり、友達や芸能人、ペットに抱いたりするような感情をロボットに対して抵抗なく持てる人が珍しくありません。

最近では、一人暮らしのお年寄りの孤独感を緩和するペットロボットも注目されています。



3.《日本流ソフトパワー》

最後に指摘しておきたいのは、日本の得意分野、いわゆる「おもてなし」や「サービス精神」がAIの使い方にはよい影響を与えられる可能性です。

日本ではAIロボットが普及してきた場合、日本人がこれまで培ってきた「おもてなし」の考え方を盛り込もうとするはずです。

人工知能やロボットがやるならすべてドライでいいや、とはならないのが、日本人の特徴だと思います。

少子高齢化と人手不足で悩む日本で進行するAIの応用を、「おもてなし」や「サービス精神」といった、いわゆる日本流ソフトパワーのAI化と捉えることで、全世界のAI化で先行メリットを得ることができるのではないか、大きなチャンスが隠されているのではないかと期待しています。


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川村秀憲氏は、「ロボットへの親近感」について本書の中でこう語っている。


『このロボットに親しみを感じる感情、具体的にはロボットに名前をつけたり、服を着せてあげるような感覚は、じつは世界的に見ると一般的ではないのです。

キリスト教的な価値観、世界観で考えれば、「人間」はあくまで神様が作ったものであり、神様が作っていないものに対して、人間のように扱ったり、仲間のような感覚を持ったりすることには抵抗感があることになります。

鉄腕アトムやドラえもんなど、幼いころからロボットが活躍したり人間と仲よくなったりするコンテンツに親しんできたことも理由のひとつだと思われます。

じつは、ChatGptを世界でもっとも肯定的に受け止めているのは、日本人です。

海外ではAIが発展、普及することに、宗教的、倫理的立場から抵抗感を示す人がいるのに対して、日本ではそうした声をほとんど聞きません。

そして実際にChatGptに対するトラフィックは、アメリカ、インドに続いて日本が多く、両国との人口比で見れば、圧倒的に日本人が生成AIを好んでいることが受け取れます。』



「リープフロッグ現象」という言葉がある。

「カエル跳び」という意味だ。

今まで遅れていた国が、あるとき、急激に発展して世界の先頭に躍り出るということ。

たとえば、アフリカには電話線が張りめぐらされていなかった。

だから、スマホが急激に発展した。

日本は、電話線が全国の隅々にまで張りめぐらされていたから、スマホの普及が遅れた。


これは、「人手不足」の日本にも言える。

日本は究極的に、困ったことが起こると、そこから考えられないような力を発揮する国柄だ。

幕末の黒船がそうだった。

そこから、世界の奇跡といわれる「無血革命」である、明治維新が起こった。


AI時代の大きな変化を先取りし、一挙に先頭に躍り出る。

AIが日本の追い風になると信じたい。