本日はMKタクシーと
モスバーガーの創業者同士の
対談記事をご紹介いたします。

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二人の創業経営者が語る
「無」から「有」への出発

青木定雄(エムケイ会長)
櫻田慧(モスフードサービス会長)

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【青木】

私にもこんな経験があります。
私の事業の手始めは、ガソリンスタンドなんですよ。

働いて得た小金を知人のガソリンスタンドに
出資していたのですが、そこが倒産しましてね、
経営を引き受けることになった。

二十八歳でした。若かったですから、
ガソリンスタンドの二階に寝泊まりしまして、
寝るまでポンプをくんどったわけです。

で、私が何でお客さまの信用を得たかといいますと、
遅くまでやっていたからじゃないんですね。

ガソリンというのは、他の商品と違いましてね。

ガス欠になったら、もう車は走らんわけです。
昔はスタンドも少なかったですし、
うちに来てね、ベルを押すわけです。


【櫻田】

嫌がらずに出てあげた。


【青木】

ガス欠じゃあ、車が動かんですから、
私が寝ていても、起きるまでベルを押し続けます(笑)。
そのとき、嫌な顔をせずに起きて、
ガソリンを入れて差し上げるわけです。

お客さまによっては、タクシーに乗って
買いにこられた方もおります。

そんなときは、一斗缶に油を入れて、
一緒にタクシーに乗っていってあげました。

中には困って一一〇番する人もいるんですね。
そのうちお巡りさんが、
お客さんを連れてくるようになった。
これがいい宣伝になりましたね。

これ、嫌々していたらダメなんです。

叩き起こされて眠いことは眠いのですが、
気持ちよく起きてさしあげることが大切なんですね。

そんなある日、いつもと同じように
夜中に起きてガソリンを入れていましたら、
名刺をくださって、

「明日でもいつでもいいから、
 一度、会社に来てくれないか」

といわれました。

名刺を見たら、大会社の社長さんでした。

翌日、私が伺ったら、すぐさま資材部長を呼ばれて、

「明日からこの店の油を購入するように」

と指示してくださったのです。


【櫻田】

人間の持つ情の機微ですね。
もうお若いころから、お客さま本意の姿勢が
身に着いておられたんですね。

頭で理解していても、なかなかできるものではありません。
自然と行動の伴っているところが素晴らしいです。


【青木】

眠たい時に、一所懸命してさしあげたことに
感激してくださって、お得意さまができる。

この一社だけで、当時、私の家族が
生活していけるだけの利益が上がりました。

そうした一つひとつが宣伝になり、
お客さまがお客さまを呼んでくださる。
ですから、心からにじみ出る笑顔というのは大切ですね。