ガラス越しの面会は…
二度と彼女が、戻らない事を一瞬で理解させた。

看守に付き添われて現れた彼女は
顔色も良く、体調も崩していないようだ。

二人を遮る目の前のガラスは国境であり
もう、彼女を抱きしめる事は叶わない.....

 

見つめ合い...時より作り笑顔を浮かべ

虚しく時が過ぎて逝った。



あれから長い年月が過ぎ
今では、街も綺麗に整備されている。


紅い唇、漂う異国の香り、桜花の様だった彼女達.....
もう、儚い紅桜の森が現れる事は無かった。


おわり
〜 紅桜の森 〜 
 
久しぶりに街を通り掛かると...
やけに人が少ない?

特に外国人らしき人は殆ど居ない...
不信に思い自転車を自宅に置いて
タティアナの家へ向かった。

アパートの部屋に居たのは
ナタリーだけで彼女は泣きながら
状況を説明するが言葉が分からない。

上の階に住む日本語が少し出来る友達に
来てもらい事情を聴いた。

どうやらナタリー以外はオーバーステイで
入国管理局の職員に拘束された様だ。

詳しい事は、
行きつけのバーのママが知っいると...

直ぐに家に戻り、
自転車でバーに向かったが
夜の街は、やはり閑散としていた。

バーのママは昨夜の出来事と
タティアナのいる場所を教えてくれ
「出来れば面会して上げて欲しい...」と言う。

このままでは、私も複雑な心境なので
明日、面会に行く事にした。

つづく
 
どんなに探してもこの人混みでは
奇跡が起きない限り……見つかる訳なく

そんな私をよそに…
タティアナは、ルンルン♫である。
「大丈夫、帰って来るよ〜!」と脳天気。

あ〜心配だ…どうしよう……
でも三人だし…大丈夫かな ?

考えても仕方なく
タティアナと二人で帰る事にした。

三人が帰宅したのは、
深夜1時...どれだけ迷ったのだろうか⁈...

なのになぜ、このハイテンション ⁈
そして両手一杯のお土産 ‼︎

「自分でチケット代払えたじゃん ‼︎
オレは貧乏なんだよ全く‼︎...」

何を言っても笑顔だけで......
あ〜...スペイン語で文句が言いたい ‼︎

まあ、みんなが楽しんでくれたから良いか ‼︎

つづく
母国にないディズニーランドに
タティアナは、本当に嬉しそうで
やっぱり来て良かった〜と思えた。

アトラクションにも色々乗れ大満足 !

タティアナには、何か記念になる物をと思い
奮発して腕時計をプレゼントした。

園内はすっかり暗くなり
夜のパレードの時間になった。

幻想的なパレードは、現実を忘れさせ
まさに、夢の世界へ二人を運んでくれた......


しかし、忘れていた現実が… ‼︎

迷子の三人がまだ見つからない
どうしよう……もうすぐ閉園だ… ‼︎

つづく
改札を出ると...
みんな、勝手に走り出す‼︎

「ストップ 〜 ‼︎ 」 大声で叫び!

親ガモの様にみんなを引き連れて
チケット売り場へ向う...

チケットを買っている間にも
また、勝手に... あ〜 も〜 ...どうして〜
ようやく全員を集め入場口へ

「うわー‼︎  ストップ ‼︎」
 
入場するなり、またしても全員がダッシュ ‼︎

何とかタティアナは捕まえたが
残り3人は既に行方不明...

簡単に言えば、迷子である ‼︎

入場からわずか1〜2分で放飼い状態に
リードでもしておくべきだった‼︎

悔んでも、休日の園内では捜索不可能
おまけに日本語も通じないし......

仕方なく、3人の捜索は打切り
タティアナとデートを楽しむ事にした。

帰り迄には、
何処かで会うだろう?...と思い

これはまだ、携帯電話が
一般普及する前の出来事である...

つづく
絶好のお出掛け日和 〜

電車にも乗った事の無いみんなを
学校の先生気分で引率 ‼︎

歩く速度もバラバラ、車道を歩くし
電車に乗せるのも一苦労.....

え〜 ‼︎ どうして〜 ‼︎ ......

みんな、座席ではなく床にすわり込む
アルマの彼氏は何故か勝手に車両の端へ....

床に座らないように
みんなに言い聞かせていると...

突然、アルマの彼氏が車両の端から
「ミ・アモーレ ‼︎」とバカでかい声を上げ
動く車両の中をアルマが走り寄る!

本人達は、映画のワンシーン気分の様だが
勘弁してくれ......恥ずかしい...

乗客に頭を下げながら呼び戻し
タティアナを見るとナタリーと読書していた。

安心して本を覗き込むと...
これまたビックリ‼︎

自慢げに車内で披露する日本語は...
卑猥で低俗この上ない内容であり
またもや注目の的に...何処でこんな本を?

取り敢えず、本は没収 ‼︎
まるで生活指導の先生の様である......

先が思いやられる...

つづく
ただでさえ騒がし家に今朝は
アルマの恋人が来ていて
さらに、うるさい!

掃除をすると布団から出され
隅に追いやられると......

目を疑う光景が!

フローリングにモップ掛けを始めた!
しっかりと絞って無いので
床はビショビショ...

あり得ない!
そう思いながらも終わるのを待った。

みんなで朝食を食べ終えると
私は、ずっと考えていた...
みんなで楽しめる事と思い
ディズニーランドに行く事を提案した。

またしても異常なテンションで大喜び......

こうして、纏まる訳の無いメンバーを連れ
無謀なディズニーランド行きが決定した。

つづく
初めて二人だけの時間

お互いを気にしながらも
ぎこちない二人の距離......

張りつめた空気が重くのし掛かり
街での現実を思い起こさせる。

もたれ掛かる彼女を抱き寄せ
無言のまま...しばらく時が過ぎた。

触れ合う緊張感と心地よさが
愛おしく想う心を...実感させた。

つづく
浮かない顔のタティアナは言葉も少なく
ただ、行き交う人達を眺めている

訳など聴くまでも無い...

私は、ヤクザに払うショバ代を彼女に手渡し、
アパートに帰るよう勧める事にした。

物悲しい雰囲気の中......

外はいつの間にか小雨になり、
暑さも少し和らいでいた。


「雨好き ! 気持ちい!」

濡れながら髪をかきあげ
楽しそうに舞う姿は、愛おしいく

彼女の純粋さが
美しく街に輝いていた。

つづく
 
路地を抜けると...
眼下には、異世界が広がり...

客を物色する彼女達と
品定めをする男達でひしめき合っている。

徒歩で相手を探す男
車に乗合せ物色する男
彼女達からショバ代を集める地元ヤクザまで

ここは、日本と思え無い無法地帯である。

警察車両は何事も無い様子で
通りをゆっくりと巡廻している。

酷い現実だ......

幾人もの女性に声を掛けられながら私は
タティアナを探したが見つからずバーで待つ事にした。

今日も店内は、まるで街の吹き溜まり...
充満する香水の匂いと彼女達の真紅の唇が
咲き遅れた桜花の様に香っていた。

つづく