ブロ友さんが紹介されていた映画

『川っぺりムコリッタ』

(2022/9/16公開)

prime video で観ました。

 

 

 

訳アリな様子で、塩辛工場で働くことになった山田(松山ケンイチ)は

社長の紹介で「ハイツムコリッタ」暮らし始める。

間もなく、隣に住む島田(ムロツヨシ)が

「風呂を貸して欲しい」と、あつかましくやって来る。

最初は断った山田だったが…

島田が育てている野菜を持ってきたと思ったら、

茶碗と箸を持って来て、山田が炊いたばかりの白飯を

「一杯だけ」と言って、勝手によそってたり。

「一杯だけ」と言ったくせに、お変わりしてたり。

お味噌汁を飲んで、塩辛を食べて。

その代わりに、育てた野菜のお漬物を持ってくるんだけど

あつかましい奴なのだ。

 

2人がご飯を食べる様子が、次第に自然になって

一人で食べるご飯よりも、2人で食べた方が

あったかいよな、なんて思えてくる。

 

 

そんな折、一本の電話が役所から架かって来る。

「父親の遺骨を引き取りに来て欲しい」

 

幼い頃に生き別れた父親、山田は顔さえ覚えていない。

 

 

島田の一言

「いなかったことにしてはダメでしょう」

 

刺さるけど…

 

私は、息子たちのことを考えちゃったよ。

いつか、たぶん、息子たちのところにも

役所から、同じような電話が架かってくるんじゃないかな。

 

生き別れた”お父さん”がいずれ死んだら。

 

私は今でも

「ほっときゃいいよ」って思ってる。

 

だから、島田の

「いなかったことにしてはダメでしょう」は

揺らいじゃったな。

 

 

 

 

あと、気になったのは、

塩辛工場の社長が、山田に

一番最初に来た時に、「更生」って言葉を使ったんだよね。

ここで真面目に働いてたら、「更生」して…みたいな。

それ、他の従業員の前で言う?

他の従業員がいなくても、「更生」って言葉は

本人なら言われたくないわって思った。

 

その後も

「随分慣れてきたねぇ

 その調子でさぁ 一日一日真面目に仕事してれば

 また来月が来て、そのうち来年が来て

 あっという間に5年過ぎて、10年過ぎて…」って。

 

 

山田が「意味あるんですかねぇ」ってつぶやくと

 

 

「うん、ある、あるよ。

 でも、その意味ってのは、10年経験した人でないと

 わからないんだ、残念ながら。

 

 毎日コツコツとはよく言ったもんでさぁ

 その意味がわかるには、その年月が必要なんだよ」って。

 

 

 

小さな塩辛工場で、毎日毎日イカを適当な大きさに切って

ベルトコンベアーに流すだけの仕事。

 

 

 

私、先日息子が帰ってきたとき

「転職しよっかなー」って言うから

 

「どんな仕事に就くとしても

 自分が成長できる仕事

 ステップアップできる仕事じゃないとね」って

言ったんだ。

 

 

山田が働く塩辛工場って、私にはそんな仕事に思えなくて。

 

 

だから、

 一日一日真面目に仕事してれば

 また来月が来て、そのうち来年が来て

 あっという間に5年過ぎて、10年過ぎて…

 

 

10年過ぎたときに、

「ここまでよく頑張ってきたな、オレ」って

思えるようになってるんだろうか、って

 

 

「もっと他の道もあったんじゃなかったかな」って

思っても、方向転換するには難しい年齢。

 

 

ごめんなさい、社長の言葉には

素直にうなづけなかったわ。

 

 

それでも

ご飯を食べるのが一人から二人になり

いつの間にか、すき焼きを囲んでいる。

 


家族でなくても、一緒に食卓を囲める人がいる

風景は、あたたかいね。

 

 

「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」

の荻上直子監督らしい作品でした。