ペットが活躍する本や映像をご紹介する新シリーズ
第1回は、猫が活躍する小説をご紹介しましたので、今回は犬が活躍する小説をいきます。
ワンコ好きならたまらないその一冊は樋口明雄著「天空の犬」です。
あらすじをご紹介します。
あらすじなので、ネタバレになっています。ご注意ください。
まあミステリーではないので大丈夫かと思いますが。
主人公は南アルプス山岳救助隊(警察の一部署です)の新人隊員の星野夏美(女性です)と、相棒の救助犬、ボーダーコリーのメイ(やっぱり女の子です)。
この2人の絆が感動的な物語なんです。
厳しい訓練に耐え、遭難現場での苦労を乗り越え、成長していく夏美とメイ
一人前となり、遭難者を救助して活躍するようになった2人ですが、登山に来た有名政治家が命を狙われる事件に遭遇します(救助隊も警官ですから、山で起きた事件に対応するのも仕事なんです)
ここからが、犬が好きな人にとっては、感動的場面の連続なんです。
政治家をかばって暗殺者の銃の前に立ちはだかる夏美。
絶体絶命のその時、メイが暗殺者にとびかかります。
メイは救助犬ですが、警察犬としての基礎訓練も受けていて、それを覚えていたんです!
夏美を守るために必死に戦うメイ。
しかし、中型犬のメイでは暗殺者を倒すことができず、銃で撃たれてしまいます。
それでも、メイが暗殺者を食い止めてくれたおかげで、夏美は政治家を守って逃げることができました。
メイの事が心配で心が張り裂けそうになりながら、警察官としての職務を全うしようと歯を食いしばる夏美。
夜になり、真っ暗になった山中で何とか逃げ延びることができ、洞窟に逃げ込みます。
しかし政治家は弱っていて、このままでは朝までもちそうにありません。
夏美も負傷していて、もうそれ以上は歩けません。
またも絶体絶命の状況に陥った夏美ですが、真っ暗闇の中に光る目が近づいてくるのを見つけます。
メイが生きていたんです!
幸い軽傷だったメイは、夏美の匂いをたどって来てくれたんです。
固く抱き合う夏美とメイ。
しかし、そこで夏美は辛い決断をします。
メイに助けを求めに行くように指示を出さなければならなかったんです。
救助犬は、遭難者を探し、見つけたらパートナーの元に戻る訓練は受けていますが、パートナーを置いて助けを呼びに行くような訓練は受けていません。
それでも賢いメイは、夏美の言っていることを理解します。
やっと会えたのに、もう離れたくないのに。
メイの瞳が訴えています。
でも自分がいかなければ、パートナーが死んでしまう。
ついにメイは健気にも、走り出します。
この部分の描写は胸に迫るものがありました。
犬好きの人なら、誰もが涙すると思います。
その頃、夏美の同僚達(山岳救助隊員であり、警察官でもあります)は、暗殺者達を制圧し、真っ暗な山中で夏美達を捜索していました。
その時、メイの仲間の救助犬達が一斉に吠えだしました。
隊員達が犬が吠える方向を見ると、そこに優秀な救助犬が疾走してくる姿があったんです。
このシーンも実に感動的でした。
こうして、夏美とメイの活躍により、政治家の命は救われ、事件は解決しました。
ここまで、本当に感動するシーンの連続です。
また、隊員達が暗殺者達と戦うシーン、特に空手の高段者である夏美の同僚(やはり女性で、救助犬のハンドラーです)が、常に空手の大会で敗れていた相手(暗殺者も警察官なんです)と戦い、勝つシーンは、息を飲むほど迫力のあるアクション小説に仕上がっています。
アクションあり、美しい大自然の描写あり、犬との感動的なシーンありと、最高に読み応えのある、素晴らしい小説です。
ラストシーンで、夏美とメイは、初めて救助隊に赴任してきた時に出会った高齢の登山者に出会います。
その高齢の登山者は、最初に出会った時は、夏美達に「救助犬だろうが何だろうが、山に犬を連れてくるな!」と怒鳴りつけたんです。
しかし再会した時は「あんたらのことをテレビで見た。まあせいぜい頑張るんだな」と声をかけてくれました。
救助犬が山に必要な存在だということを認めてくれたんです。
地味でも胸にじーんと来るシーンでした。
そのおかげで、深い余韻が残る小説になっています。
ちょっと感情的に書き過ぎちゃいましたが、犬好きの人には絶対おすすめの1冊です。
タイトル:天空の犬
著者:樋口明雄
出版社:徳間文庫
※大人気の小説ですので、続編が短編集も含めて5冊出ています。