私は地域包括ケア病棟に所属しています。

治療が必要な状態で入院された方が、
ある程度治療が終わって安定されても、
すぐに退院できない場合があります。

入院前はなんとか歩けていたけれど、
入院中に歩けなくなってしまったり、
嚥下機能が落ちて、
食べてもむせてしまうようになったり…

こうなると元の住まいにすぐに帰れないので、
リハビリをもっと続けて機能の改善を待つ、
自宅ではなく施設を探すなど、
退院までに時間を要する方を受け入れるのが、
地域包括ケア病棟の役割です。

このような状態になるのは、
やはり高齢の方、
そして認知症を持っている方が多いです。
なので、認知症の方へのケアが
更に重要となります。
(急性期の病棟でももちろん必要ですが、
生命を助けることが先なので…)

いろんな方がいます。
同じことを何度も話す。
さっき食事を食べたのに、
食べてない!私を餓死させるのか!と怒る。
逆に全く食べてくれようとしない。
夕方になると家に帰ると言ってそわそわする。
便秘で怒りっぽくなる。
薬を飲もうとしない…などなど。

特に、違う病棟から入ってこられた直後は
要注意です。
それまでは、夜間も眠れてた、
ご飯もなんとか食べてたのに、
そのリズムが崩れてしまい、
お初にお目にかかりますの私達は
てんやわんやします。

何故、こんなことになるのか。
病棟が変わっただけで、
小康状態になった病気が悪くなるはずはない。
他に変わったものは、そう、環境です。

部屋が変わると、
見える景色や音が変わります。
そして、周りの人も変わります。
私達ももちろん環境の一部です。

この変化に、認知症の方の脳は
ついていけないのです。
だから、眠れなくなる、
食べられなくなる、
落ち着かなくなるのです。

元気な若い人からすれば、
それぐらいで…と思うことです。

でも、よく考えてみると、
若い人でも、すぐに変化に
適応できているのでしょうか。
引越しする、
学校に入学する、
就職や転職する、
誰かと一緒に住み始める、
子供が生まれる…などなど、
慣れるまでに時間がいるのでは?

加齢や認知症によって、
脳の機能のキャパが落ちます。
そうすると、周囲の変化についていけず、
不安や恐怖が増えるのです。
でも、分からない!怖い!と
自分の思いを言葉にする力も落ちるので、
違う形で表れると言われています。

だから、人も環境の一部で、
それが変わることのダメージは、
私達が思うよりも大きいことを
まずは知らないといけません。

私の体感覚からすると、
慣れてもらうのに
1週間ぐらいはかかるように思います。
お互いのことを知っていく期間ですね。

声の掛け方やトーン、
言葉数の適正さ、
笑顔で目を合わせる、
言葉と行動を同時にしない。
(血圧測りますね〜と言いながら
 布団をめくらない。
 まず血圧計を見てもらって、
 今から測りますよと伝えて、
 それが分かったことを確認してから
 布団をめくる)

こういう小さなことが、大きなケアなのです。

これを実践できるようになるまで、
私も時間がかかりました。
本当にそれが必要だと理解できたから、
行動につなげることができたと思います。

こういうケアを、
スタッフみんなでやらないと意味がない。
これをどうやって広げていくか、
私の大きな課題です。